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2015年 夏 ハイキュー日記2

大切なことは全てハイキュー!!が教えてくれた 第2回
天才ではない私たちへ


”自分の力はこんなものではない”と信じて 只管まっすぐに道を進んで行くことは”自分は天才とは違うから”と嘆き諦めることより 辛く苦しい道であるかもしれないけどー(指導者から及川徹への台詞/『ハイキュー!!』第17巻)

 8月の頭に最新刊、17巻が発売になりました。幽遊白書が18巻で完結したことを思うと、まだまだ楽しませてくれる気合い十分の古舘先生に頭が上がりません。特に今回の巻は、インハイ予選でも戦った青葉城西高校との因縁の試合、県予選の準決勝、どちらか勝つのか、ということで、ジャンプ掲載時から「(どちらかが負けるなら)もう……もう読みたくない……先を……知りたくない……」と引き裂かれる思いで読んでいたところなので、思い入れもひとしおです。
 こんなことって、ありますか? バトル漫画であれば敵は絶対悪(戸愚呂弟、仙水を除く)なので、「主人公、勝って!」としか思わないんですけど、スポーツものだとそうはいかない、いや、『ハイキュー!!』に関しては、全然そう思えない。主人公のチームにも勝ってほしいけど、そうすると相手高校は負けるじゃないですか……。あの子たちの負ける姿、見たくない! 誰の負ける姿も見たくない! そう思える素晴らしいスポーツ漫画、それが『ハイキュー!!』です。

 どんな選手のこともしっかり描いているから、私たち読者はそうやって愛をもって読むことができるのですが、特に愛すべき他校の人物、青葉城西高校のキャプテン、及川徹さん(3年生/セッター)について今回は書きたいと思います。
 及川さんは登場時、サーブもすごい最強セッター、甘いマスクで女子にもモテる王子様、という触れ込みで、一見すると「あるある」キャラだったのですが、古舘先生がそこでとどまるわけがなく、その後、どんどん人間としての魅力がみえてきて、敵だったはずなのに、及川さんと青葉城西に負けないでほしくて泣くくらい、愛すべき存在になっていきました。烏野高校(主人公の高校)セッターの影山くんの中学の先輩だった及川さんは、「優等ではあるが天才ではない選手」として描かれます。前回も書きましたが、影山くんはセッターとして天才です。強豪校になかなか勝てない中学時代、そんな天才後輩が現れたときの、ぞっとする気持ち、もやもやした不安、焦り(そういうの、どんな人にもちょっとは覚えがあるかと思います)。及川さんはそれをきっちり感じて、苦しんで、でも、幼馴染みの岩泉くんの名台詞「バレーは6人で強い方が強いんだろうが!」で目を覚ますのです。1人天才がいたって勝てない。6人で強くなるために、アタッカーの力を最大限発揮させるセッターに、そしてチームメイトの能力を最も引き出すキャプテンになります。努力して努力して。でも、17巻でもまだ、進化しようともがくんですよ! 17巻で、この上記の台詞を及川さんに聞かせる古舘先生は天才ですよ! 古舘先生は、本当に高校生に対する愛情が素晴らしい。高校生は、成長していくんですよ。そこに、その場に、その瞬間に、とどまらない生き物なのですよ。だから、すでにキャラ立ちまくりの『最強セッター・ 及川さん』に、上記の台詞です。「及川さんは県内最強のセッター。強い」っていうところにとどまらずに、その先を描く古舘先生……。この台詞があるシーンだけで、及川さんが、たゆまぬ努力でこれからも進化しようとしていくこと、これまでもそうしてきたこと、でもいつだって悩んだりもしてること、がわかります。展開上、青葉城西は負けるのでは……という予感が強まっていたときだっただけに、一層くるしくなりました。その苦しさこそが、ハイキューを読む醍醐味、そして喜びです。物語のための敗北者はそこにはいなくて、誰もが勝つために最後まで諦めなくて。だからどの試合も大切で、ハラハラして、ドキドキして、いとおしいんです。

 ちなみに、この、上に載せた台詞の前に

「自分より優れた何かを持っている人間は 生まれた時点で自分とは違い それを覆すことなど どんな努力・工夫・仲間を持ってしても不可能だと嘆くのは 全ての正しい努力を尽くしてからで遅くない」

という言葉があります。どの職業にもいえることですが、特に俳優にはバチーッとくるものだと思います。というか、私にはバチーッときてバチーッときて、この言葉を受け止めて努力し続ける及川さんがまぶしくていとおしすぎて、単行本を読みなおしながら涙がぼろぼろ出てきました。辛く苦しいことはわかってて、"自分はこんなものじゃない”って信じて進むことって、とっても勇気がいるじゃないですか。天才は天才だもんね、いいね、って拗ねる方が簡単じゃないですか。でも、及川さんは楽な道を選ばないんですよ、「飛雄(影山くん)は天才だね、俺は違うんだよね」って言いながら「でもうちのチームは負けないよ!」って全力で戦うんですよ、まじでかっこよすぎるんですよ! 正直に告白すると、「自分はこんなもんじゃない」って思うことがださくってみっともないから、自分の力を悟ったふりして生きる方がよくない? みたいなことを思ってた時期がある私は、ほんとうに、恥ずかしくてたまらなかったです。及川徹18歳に教わる、人生の大切なこ と……。

 これからは、ハイキュー愛読者の名に恥じぬよう、自分は正しい努力をしつくしたのか? という問いを常に己に投げ続けていきたい、及川さんみたいに生きていきたい、と強く思いました。夏です。

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*追記*2019/3/22
本当にハイキューは面白いなあ……。いい台詞がたくさんだ。何より『高校生の部活動』をきっちり描き続けてるところがいいんですよねえ〜!
そしてやはり「物語のための敗北者」がいないところが好きです。大事な漫画。小学生になった姪っこが最近ハマってる(アニメから)ようなので嬉しいです。

日記が好きなので書き続けているわけですが、読んで、面白がっていただけたら、それほど嬉しいことはありません。いつもありがとうございます。