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単純で定番なストーリーが好き

こんにちは、平井 @yuji87 です。

仕事帰りに本を読むこと以外、何も受け付けない日はたぶん相当疲れているのだと思う。

現実逃避の手段として、無意識に本を読み、本の世界に身を投じる。

お気に入りの登場人物が出てきて感情移入しながら読み進められるときは楽しさも3倍増す。ボクにとって感情移入しやすいジャンルは『恋愛』

主人公のどちらかが深刻な病気で、いつか別れのときが訪れるという定番なストーリー。そんな単純なストーリーが好きだ。

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医者から余命宣告を受けたことを彼女に告げた。2人は病院を抜け出し残りの人生2人だけの思い出をつくろうと旅に出る。

一緒にご飯を食べて、一緒に行きたかったところへ行き、1日の終わりに同じ夢を見る。そんな日々を過ごしているのだけれど、徐々に彼の体調が悪化し最終的に意識を失い病院に戻らざるを得ない状況になる。冬の終わりのころだった。

病院に戻ると彼女が彼の両親にビンタされ、『もう、うちの息子には会わないで』と告げられる。別れ際に彼女は一冊のノートを彼の母親に渡そうとするが、払いのけられ、ノートが床にバサッと落ちた。

彼女は走り去りノートだけがその場に残される。彼の父親がノートをそっと拾い上げ、なかを確認した。無言でページをめくる父親の顔が徐々に崩れていく。

『こいつ、めちゃくちゃ幸せな顔してるよ。体調が悪くなってから、こんな表情することなかったじゃないか。あのコのこと、本当に好きなんだな。』

母親もノートを手に取る。

『キノコの形した家、この子がまだ小さい頃私たちも3人で良く遊びに行ったわね。同じように窓から顔を出して写真も撮ったよね。』

ノートに貼られた写真の下には、こんな言葉も一緒に書かれていた。

"いつか子どもと一緒にここで絶対写真を撮る!! それまで絶対生きてやるから!!"


翌日、両親は2人一緒に彼女のもとへあらわれた。ノートは母親が両手で抱きかかえるように持っていた。

『昨日は本当にごめんなさい。このノートには私たちの知らない息子の姿がたくさん、どれも本当に幸せな顔をしていました。となりにあなたが居てくれたおかげです。本当にありがとうございます。あなたにひどいことをしてこんなこと言える立場じゃないのだけれど、これからも息子のとなりに居てあげてくれませんか?』

彼女は頬に涙を伝せながら、もちろんですと答えた。

『彼はずっとお父さんとお母さんと過ごした思い出を私に話しながら、将来子どもができたらどこへ行って何して遊ぶだとか、女の子が生まれたら絶対に嫁には出さないとか、そんな話ばかりしていました。お医者さんに告げられた余命では実現することのない未来です。でも彼と話をしていると、なんだか本当にそんな未来が訪れるような気持ちになるんです。』


「もう少し窓の方に寄ってみて。そうその辺! あっ!今、めっちゃ良い写真撮れた!!」

桜が咲いたころ、病室から2人の笑い声が聞こえてきた。

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こんな単純なストーリーが好きだ。

#日記 #恋愛 #小説 #単純 #定番

写真や旅のことだけじゃなく、今ボクが気になっていることをnoteに書いています!読んでいただきありがとうございます!