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行き場を失った愛情は、どこへいくのだろう。映画『君が君で君だ』

好きで、好きで、大好きすぎて、
どうにかなりそう。

既に付き合ってるカップル同士であれば、
のろけ話はどうぞご自由に。という感じだが、これが片思いとなれば、話は別だ。
特に、男子の片思いの場合は。

映画『君が君で君だ』の試写会に行ってきた。

まずは、あらすじを読んでほしい。


大好きな女の子の好きな男になりきり、自分の名前すら捨て去った10年間。
彼女のあとをつけて、こっそり写真を撮る。彼女と同じ時間に同じ食べものを食べる。向かい合うアパートの一室に身を潜め、決して、彼女にその存在をバレることもなく暮らしてきた。
しかし、そんなある日、彼女への借金の取り立てが突如彼らの前に現れ、3人の歯車が狂い出し、物語は大いなる騒動へと発展していく——(公式HPより引用)

「??」と思った方は、感覚が正常なのでご安心を。あらすじから既に、危険臭がプンプンしている。

好きな人のために、それぞれ尾崎豊、ブラピ、坂本龍馬になりきった3人。
彼らは、その強すぎる愛情から、
きっと共感したらヤバいやつだと思われるであろう犯罪スレスレ(というか、もはや犯罪?)な行動を連発する。

・無線機や双眼鏡で、彼女の行動を常に覗く
・彼女と同じ時間に彼女と同じものを食べる
・彼女から借りたハンカチを、10年間崇め続ける

明らかに女性の観客が引いている中、学生時代あまりモテてこなかった、
いわゆる非リア男子にとっては、「ここまでじゃないけど、なんか分かるわ~」と共感するシーンが多くあるんじゃないか、と思っていた。

少なくとも、ボクには、高校時代に思い当たるふしがあった。

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高校時代、ボクらのヒロインは、間違いなくマキちゃんだった。

マキちゃんは、特別目立つ子ではないが不思議な魅力があり、
パッツンの前髪も、時折見せる寂しそうな顔も、思春期真っ只中のボクらの心を掴んで離さなかった。

友達でも知り合いでもないのに、
マキちゃんが好きってだけで仲良くなった男子が5人くらいいた。

好きだったけど想いを伝えられなかった人、勇気を振り絞って告白してフラれた人、1度は付き合ったものの別れてしまった人。
そんなヤツらが、放課後ファミレスに集まって、「やっぱり可愛いよな~」ってバカみたいに盛り上がる。

ドリンクバーで、まずいオリジナルドリンクを作って、「マキちゃんの為なら!」と、訳のわからない忠誠心で飲み干したり、

彼女がサブカル好きだと聞きつければ、みんなで地下にあるライブハウスに行き、インディーズバンドのライブを観たり、

新しい彼氏の顔を拝みに、みんなで変装して夏祭りに行くこともあった。

今考えると、黒歴史以外の何ものでもないが、当時は「好きな人が好きなものは、無条件で好きになる」という、どうしようもなく単純な思考回路で生きていた。

ボクたちは、「マキちゃん」で繋がる
この小さく閉じたコミュニティが、ずっと続けばいいのにと思っていた。
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と、つい自分語りをしてしまう程、痛々しい思い出に浸っていられたのも映画の前半まで。中盤からは、もう共感とかいう域を超えて、言葉にできない様々な感情が襲ってきた。

YOUと向井理演じる借金取りが3人の前に現れてから、物語はジェットコースターのように急激に走り出す。

無慈悲に現実を突きつけるYOUたちと、
まだ自分たちが守っている「国」で心地よい夢を見ていたい3人。

彼女が好きで好きでたまらないんだけど、
自分のやってることが、正しいのかどうかなんて分からない。
そんな行き場を失った愛は、むきだしの感情になって、観ている観客の心を何度も揺さぶる。

それは異常だけど、決して歪んだ愛なんかじゃなくて、真っ直ぐすぎて制御不可能な愛に見えた。

ここまで人を好きになったことはあるのだろうか、そして「愛する」とはなんなのか、作品を見て自分の心に問い掛けてほしい。

愛情を超えた先にあるものとは。
映画『君が君で君だ』7月7日七夕に公開です。

【オフィシャルサイト】

【予告編】


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