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意を決して初献血に行ったらできなかった話

ずっと献血に行きたいと思っていて、
意を決して行ったら、受付けてもらえなかった。このために夜の予定より随分早い時間に出てきて、仕方ないのでカフェで時間潰しながらこれを書いてる。


父が生前、がん治療をしている頃、
多分抗がん剤治療中のこと、
4,5回輸血を受けている。
輸血を受けると身体に力が湧いてきて元気になる、まさにドーピングみたいだと言っていた。
不足しているとよく献血を呼びかけられてるO型の血液。
誰かが提供してくれた貴重な血。
これはいつか私が返そうと心に誓っていた。


今年こそ、今年こそと思ってるうちに
先延ばしになって、
それを今度こそ実現しようと思い、
少し緊張しながら献血ルームの扉を開いた。

まず受付の方が体温計を手首にかざす。
36.1℃の表示。
ご予約ですか?と尋ねるその方に
恐る恐る、初めてなんですが…と伝える。

「最初にいくつか確認する事がありますからこちらへどうぞ」と
受付の先の問診カードを記入するようなブースへ案内される。
該当するものはありませんか?
そこには献血を受けるに当たっての最低条件が記載されている。
自病はないかとか、妊娠の可能性はないかとか、半年以内に海外への渡航歴はあるかとかその他様々。
ネットで見てたから、該当がないのは分かっているが、一応上から一つ一つ読み直し、
「該当していません」と答える。

それではと、
献血には大きく2種類あり、
成分採血と通常の全血採血、
初めての方には全血採血をお勧めしてますが、
体重は50kg以上ありますか?

きたよ、これ。私が献血をためらってた最大の理由。体重が微妙に足りない問題。
「あー、えっと足りないかもしれません」
「ギリギリですか?」
「そ、そうですね…」

着衣、土足のまま背後に置いてある体重計に乗せられる。
「あー、今で50kgだから、お洋服とか除くとちょっと足りないでしょうね」
やっぱり…だめなのかー
「ほんとは半量の200ml献血もあるんですが、
医療機関の需要が少ないので受付けてないんです」
そうなのか、知らなかった。
もちろん体重要件のことは知ってたし、
200mlならいけそうだてことも調べてた。
まさかまさかの反応。
でも、成分献血なら…

「成分献血だと一度血液を採取した中から、回復の遅い赤血球だけを戻すので、90分くらいかかりますが…」
「時間なら問題ないです!」
今日一ハキハキと即答したと思う。
だってこのために予定の時間より3時間も早く出てきたのだから。
「成分献血が受けられそうか、先に看護師に診てもらいましょうね。」と採血室へ案内される。

奥に採血中の人々がちらほら座ってるのが見える。普段から採血とか注射と大の苦手な私。ちょっと首の辺りがゾワっとする。
私の問診をしてくれるのはベテランっぽい看護師さん。
「はい、両腕肘くらいまで出してねー。」
よく採血の時に腕に巻かれるゴムバンドのようなものを両の二の腕に巻きつけられる。

私の肘の裏の血管を叩いたり擦ったりしながら
見つめる看護師さん。不安が募る。
健診の採血の時だって、苦労されるくらい見えにくい私の血管。


「ホントにちょうどいい身長体重なんだけどなー。んー。
献血の針は通常の採血の針より太いんです。
成分献血はその針を1時間以上刺しっぱなしにしないといけない。だから、初めての方には全血をお願いしてるんですよね。
(太い…その言葉にビビりマックスな私)
今日は気温も高いし条件的には良いんですよ。
だけどね、成分献血は採血中一定の速さでずっと血が循環してくれないとダメなんです。」

この辺りで、事態を悟る。
ただでさえ刺しにくい上に、
刺した後もあの採血のための微量の注射器を満たす血すらちょろちょろとしか出てこない私の血管。どこも悪くないし、大病したことも無く、健康体そのものなんだけど。

「もうちょっと太れって言うわけにもいかないし。だけど、これだと成分献血受け付けるのは怖いな。お気持ちは本当にありがたいんだけど」

終わった。何たる無念。
まさか体重が足りないことをこんなに無念に思う日がくるとは。

「今度、太ってる時に来ます」
「正月太りとかね!だけど、このために太らないでね!」
受付に戻ると受付の方も申し訳なさそうに
「お気持ちありがとうございます。よかったら奥に温かい飲み物もありますから何杯か飲んで帰ってくださいね」
その言葉に甘え、緊張で渇いた喉を水で潤す。

献血すらできない大きな無力感と共に、献血ルームを後にしました。
いつかきっとリベンジしたいと思うけど、
もしも私の代わりに献血にチャレンジしてくれる人が居たらなと思い、書いてみました。
とても優しく親切な方ばかりだったから、
勇気を出して献血ルームの扉をくぐってみてください。

父に血を分けてくださったどこかの誰かに心から感謝しております。

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