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ルポ・空港とモラトリアム(その2)

松山空港で私が(私を?)待っていた飛行機は、欠便が決まった。ぶっ壊れたんじゃない?よくわからない。
ケチらずに昼の便を取っていれば、朝早く起きることも途方にくれることも必要なかった。
22の夏は今しかなくて、この8月を半日無駄にしてしまったことが何故だか無性に惜しくなって、運の悪さに辟易していた。そして、買ったばかりのウェッジソールでキャリーケースを移動させていたら、盛大にすっ転んだ。

痣ができてしまうだろう。22歳の、今しかないこの夏の身体に。そんなことを思いながら、添加物だらけのご飯を買って岡山から新幹線に乗っていたのだ。

誰からもラインの通知が来ないことに、無性にイライラして、ツイッターを開けば自己啓発的なツイートがモンスター並みにリツイートを増やして私の目に飛び込んできて、うるせえな、と思う。

じわっと、涙が出た時にふと思い出したのは去年の夏のことだった。
平成最後の夏、と口酸っぱく世間の人々が言ってた。
そんな感慨に浸る間もないくらい、わたしは燻ってたんだ。

才能も取り柄ない。
かといってせっかく出てきた東京を捨てて、今では滑稽に見えるほど寂しくなった故郷に埋もれるのは惜しい。
お金にならない学問をいつまで続けるんだろう?
胸を張って、親戚に話せるようなことをしているだろうか私は?
恋人との関係も終わりに近かった。
何もかもが上手くいってるかのような友人達をインスタで垣間見ながら、
唯一志した場所にも行けないんじゃないかという不安が昼夜を問わず頭に焼き付いて離れなかった。

誰にも相談できなくて、何度も泣いて、自分の心の拠り所だったのは過去にもらった宝物みたいな言葉たちだけだった。

今、東京に帰る私は、そんな21歳の自分よりも成長してる。
それが、すごく些細でも。
何のためでもなくて、自分に自信をつけるために東京にいたっていいのだ、そう思ってる。

転んだ擦り傷は、残ってしまうだろうけど。
去年のどうしようもない、宙ぶらりんな21歳の女の子を心の中で振り返って、大丈夫だと頷くのだ。

#空港
#新幹線
#岡山駅
#モラトリアム
#note
#あの夏に乾杯


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yuu.murakami

文系M1/興味のあることはフェミ、英語教育、お笑いと。/西日本出身のお笑いフリーク。

りょこうき

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