【良書】非マーケターが「マーケティングの仕事と年収のリアル」から得られるアレコレ。

私はマーケターではありません。今日(2019/5/18)まで、Webディレクターとして、2年ちょっと前からはエンジニアもキャリアに加えつつ、受託や客先常駐という形でWeb制作やシステム開発に携わってきました。
山口義宏さんの「マーケティングの仕事と年収のリアル」(2018/10/17・ダイヤモンド社)が「マーケター以外にも役立つ」という評判もあることは知っていました。やっと手に取りましたが、もっとすぐに読めばよかったかも…。
なぜそう思うのか、述べていきます。

そもそも、マーケティングが関わらない仕事は無い。

あらゆる仕事には、「モノやサービスの価値を、分かってくれる人に届ける」行為が必要です。
(当事者が意識しているかどうかは別として)これこそがマーケティングです。

例えばエンジニア。コードを書くことひとつとっても、保守性とスピードのバランスをどう取るか等、自分ひとり(あるいは自分たちの立場)の考えや価値観だけで完結しない場面は多々あります。
プログラミング自体は手段なので、どのように書くか考える際に「そもそもの目的」に沿っていないと、本末転倒になってしまいます。
マーケティングに関し基礎でも良いので理解しておくと、この「そもそも」を考える際の助けになると思います。

非マーケターにとってこんな本


非マーケターが本書を読む場合、内容を大別すると下記の3つになると思います。
【1】自分が所属してきた組織の特性・あるいは取引先やビジネスそのものについて、理解を深められる
【2】「マーケター」等の言葉を自分の職業に読み替えることで、キャリア設計のヒントを得られる
【3】どちらかといえば、読み物として楽しむ(例えば給与水準とか、具体的なものは本当にマーケター向き)

3以外について、それぞれ例を挙げてみます。

自分が所属してきた組織の特性・あるいは取引先やビジネスそのものについて、理解を深められる

まず、冒頭のほうに「マーケティングの業務プロセスと実行する部門や支援会社」という図があるので、自分のキャリアが主にどの分類のなかで培われてきたかを確認しましょう。
(私の場合は、国内・中小規模の「プロモーション施策の企画・実施」を行う支援会社でした)

本では主に、事業会社と支援会社といった分類(やさらに細かい分類)ごとに、それぞれの特徴やメリット・デメリットが解説されています。
(例えば、支援会社では、特定の狭い領域であっても早期に専門スキルが身に付く一方、マーケティング施策全体を俯瞰しづらい、など)

本当の全体の全体の中で、自分の仕事はどのように位置づけられているのだろう?と知れて、まるで世界地図のようです。また、お客様に提案する立場の方であれば、お客様が日々考えている事や課題、自分(や自分たちの会社)に何を求めているのかを知るためのヒントにもなります。競合について調べるときも、この本を読み返すきっかけになると思います。

「マーケター」等の言葉を自分の職業に読み替えることで、キャリア設計のヒントを得られる

「同じ専門領域の知識を深掘りし続ける」以外にも、時間投資すべき選択肢があります。それは「隣接領域の他の専門知識を身につける」ことと「ひとつ上のステージの専門知識を学ぶこと」です。

私がWebディレクターにエンジニアというキャリアをプラスしようと決めたた時の目的は、まさに「隣接領域の他の専門知識を身につける」ためでした。
自分の武器を作るために、システム周りの知識や経験を、実務レベルで欲しかったのです。そんな折、なりゆきですがチャンスがあったので、乗っかりました。

エンジニアになる前は、「勇気があって凄い」「デザインと開発、両方わかれば食いっぱぐれませんね!」といった応援や、「3年ぐらいはずっと、単純作業しかやれないかもしれないよ。万一そうなっても大丈夫?」という心配等、様々な反応を頂きました。

周りの方々の助けに恵まれたこともあり、結果的にはなんとかなりました。決してラクではなけれど、自分を大きく成長させてくれた、とてもエキサイティングな体験だったと思います。
(異なる専門性を組み合わせることは、足し算ではなく掛け算だと感じます。また、知識や経験だけでなく文化も吸収できたし、視野が爆発的に広がったことが一番良かったように思います)

このようなキャリアの「越境」に挑戦する人の助けとなるのが、第2章「6段階の成長ステージを俯瞰する」です。キャリアを6段階に分け、次の段階に進むために何をどう目指せばよいか、という道筋を教えてくれます。

たとえば「キャリアステージ1:マーケティング業務の見習い」へ向けたページ。

説明がキャッチーで簡単に読める本や、マンガ化された入門書から読んでも良いと思います。まずは、基本的な専門用語を覚えて理解しないと、業務がまともに始まらないため、聞いたことがないキーワードをなくすことを目指しましょう。

これ、私がエンジニアになった時に一番役立った勉強そのままなんです。なにせ、最初は下記のような状態でしたので。

「分からないことが分からない、という事しか分からない」
「知らない言葉をググって出てきたページの内容が、知らない言葉だらけ。日本語なのにまるで意味が分からない」
「そもそも、この記号なに?なんて読むの?(呼び方が分からなくてググれない)」

自走できる前の段階ってつらいんですよね。だから、ネットの断片的な情報や、難しい専門書を読んで挫折するよりも、ともかく敷居が低そうな本をたくさん読みまくる(チュートリアルがあれば触りまくる)ほうが、やる気も折れなくて済みます。
会社の方々にオススメの本を聞いたり、図書館から本をたくさん借りたりして(入門書レベルの本を無料で読み漁るのにぴったり。返却期限もあるからダラダラ読まなくなる)、ともかく数をこなしました。

がむしゃらにやってるうちに、いつの間にかエンジニアに対して「デザインの○○は、システム開発でいう所の××みたいな感じですよ」と説明できるようになっていました。また、業務ではエンジニアだけのチームにいますが、企画担当者さんやデザイナーさんらとの打ち合わせも、意思疎通がスムーズです。(なにせ通訳がいらない)

本でも、下記のような例が挙げられています。

「弁護士だと、友人から相続の問題を相談されることがあるけど、まず自分はそもそも相続分野の経験が少ない分野なので確かなアドバイスはできない。さらには、相続に詳しい弁護士も、相続対象の不動産鑑定に詳しいわけではないし
(略)
つまり、相談したい人からしたら、当然のようにひとりの専門家で解決できると思っている問題は、実際は複数の専門家の知見を統合しなければ、まともな判断はできないんですよ」

越境キャリア以外にも、キャリア設計の考え方について様々なアドバイスが本の随所に書かれていますが、この辺は本当にマーケター関係ないです。

この本のテーマをもっと掘り下げたい人に、一緒におすすめしたい本

「マーケティングの仕事と年収のリアル」を読んでいる最中、別の本が2つほど思い浮かびました。「転職の思考法」と「マーケティングとは「組織革命」である。」です。

転職の思考法」は、「人生で一度も転職しなかったとしても、キャリア設計のために役立つ本」です。

マーケティングとは「組織革命」である。」は、「優秀なマーケターがどんな良策を打ち立てても実行できるかどうかは別、という実情に立ち向かうための、組織論の本」です。組織内でのマーケ活動…つまり、やりたいことの価値を分かってくれる人に届けるために活動するときのお供にどうぞ。

まとめ

利害関係のない(しかもキャリア設計にめちゃくちゃ詳しい)第三者が、フラットな立場でたくさん相談に乗ってくれる本です。あと、組織の話や人材育成を切り口にした話もあり、学べる内容の幅が多いです(時々、ドキッとすることも書いてあります)。


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