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【良書】佐宗邦威著「直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN」

なんてことない思いつきを価値のあるアウトプットに昇華させるための"ビジョン思考"と、それに慣れ親しむためのワークを紹介している本(2019/3/7・ダイヤモンド社)です。

本の構成

・はじめに 「単なる妄想」と「価値あるアイデア」のあいだ
・序章 「直感と論理」をめぐる世界の地図
・第1章 最も人間らしく考える
・第2章 すべては「妄想」からはじまる
・第3章 世界を複雑なまま「知覚」せよ
・第4章 凡庸さを克服する「組替」の技法
・第5章 「表現」しなきゃ思考じゃない!
・終章 「妄想」から世界を変える

ビジョン思考とは何か

この本では、ビジョン思考を説明するために他の思考も含めて4象限で紹介し、それらを架空の世界に例えてイラスト化しています。イラストは何度も見返したくなるので、電子書籍より紙のほうが読みやすいかもしれません。公式サイト(https://www.vision-driven.me/)にカラー版があったので、スクリーンショットとしてご紹介します。

この4象限は、タテ軸が”創造⇔効率”、ヨコ軸が”Vision⇔Issue”です。(それぞれのセグメントをビジュアル化したのが、イラスト上半分の"目に見える地上世界"の部分、「カイゼンの農地」「戦略の荒野」「デザインの平原」「人生芸術の山脈」です)

このイラストに描かれた内容が、分かれば分かるほど「まさに」という感じで面白い反面、初見で分からなくても大丈夫なように思います。(「荒野に放り込まれたら、なんだか生き抜くのが大変そう」とか、それっぽい雰囲気だけ掴めれば充分)

自分なりに整理してみました↓

・人生芸術の山脈(本書で扱う「ビジョン思考」) "Vision"×"創造"
・デザインの平原(いわゆる「デザイン思考」) "Issue"×"創造"
・戦略の荒野(勝利や利益のために論理を駆使) "Vision"×"効率"
・カイゼンの農地(PDCAによる効率化) "Issue"×"効率"
"Issue"の動機:問題解決
"Vision"の動機:理想の追求(結果的に、問題が解決されたその先を見据えている)
"効率":時間あたりの成果など、コスパの良し悪しで評価。
"創造":意味が重要で、時間と成果は比例しない。

"創造"は、コスパの良し悪しの延長線上では評価できません。最初からいきなり「それって何の役に立つの?」と問いたい気持ちを一旦忘れる必要があります。不慣れだと戸惑うかもしれないけれど…ビジョン思考は「理想を追求していたら、結果的に、問題が解決されたその先を見据えている」という側面も持っている、というのもポイントです。

例えば、今では当たり前のように普及しているスマートフォン。本格的に普及する前にそれに近しい製品群(PDA)がありましたが、「そんなのあったっけ?」という人も多いのでは。(私はユーザーでしたが、当時なんとなくマイナーな感はありました。。)

この「新しい価値」が広く受け入れられる前の「何の役に立つの?」な状態は、マーケティングでいうところの、「キャズムを超える前」に似てるような感じがします。

知覚力――情報を咀嚼し、意味づける力

本書の中で特に、『知覚力』についての話が印象的でした。

ヤフーCSO(最高戦略責任者)で脳神経科学者でもある安宅和人氏は、知覚について次のように語っている。
「『知覚』とは非常に簡単に言えば対象の意味を理解することである。
(略)
人間は価値(意味)を理解していることしか知覚できない。知覚できる範囲はその人の理解力そのものだ」

言い換えたら、どんなにインプットの質や量が良くても、咀嚼の仕方や良し悪しによっては…というわけです。

インプットやアウトプットと違い直接目に見えるものでもないので、色々考えさせられますし、少しドキっとします。

その他所感

比較しながら解説してもらう形式ゆえに、ビジョン思考以外の3つの思考への理解も深まって分かりやすかったです。(あの人はビジョン思考の人だなとか、これはカイゼンの農地そのものだなとか…本で紹介されているものだけでなく、自分が知っているものや人がどこに当てはまるのか考えながら読むと、より理解が深まるのではと思います)
また、現実世界の4つのエリアは、どれも必要と言うか、適材適所なんだと思います。

あと、うつくしの森の「あれは本当のデザインではない」に笑ってしまいました。あるある。言いたくなる時もある。でも、行き過ぎると排他的になってしまうし微妙。

(あと、佐宗さんのご出身のソニーに関連して。ソニーが「Sony Startup Acceleration Program」というWebサイトで起業家向けにいろんなコンテンツを提供しています。具体例を見るのにちょうど良いです)


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