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オナガザル注意

 マレーシアで見かけたサル注意の標識。似たものは日本にもあるが、日本の猿は尻尾が短く身体も大きめなので、標識のイラストはかなり格好が違う。尻尾が長い標識が日本にあるのであればペットが逃げた外来種を示しているか、イメージ先行の誤った認識だろう。
 マレーシアにいるタイプの猿はほかにカンボジアやインドでも見かけた。バリにもいたと思う。もしかすると正確な種類は違うのかもしれないが、ぱっと見では同じに見える。小柄で華奢、胴体と同じくらい長い尻尾の先を丸め、観光客の持っている食べ物や捨てたゴミを狙っている。

 クアラルンプールにバトゥ洞窟というヒンドゥー教の洞窟寺院がある。市内中心部から割と近く、タクシーで15分ほどだっただろうか。金色に輝く巨大な神像の傍らに長い長い階段があり、上っていく信徒の中には裸足の人もいる。その階段でもサルが待ち構えている。
 洞窟は天井が高く、奥の方は天井に大きな穴が空いていて吹き抜けのようになっており、かなり明るい。見上げるとかなりの高さだ。
 いちばん奥の社で祈りを捧げる人々の様子を暫く見ていた。靴を履いてきたひともここでは靴を脱ぐ。膝を折り頭を下げる信徒に、僧侶が額に赤い粉で印を授けていた。
 小石か何かが時どき硬い音を立てて転がっているのが聞こえる。壁が崩れやすいのだろうか、この寺院は長くここにありそうたが、崩れやすいからこそ拓くことのできた場所かもしれない。
 それにしたって地震大国の人間としては構造や強度に不安を感じた。見上げる曇り空は真っ白で眩しく、くらくらする。
 カツン、カラン…ゴツッ。
 目を凝らすと壁の凹凸やか細い樹にとりついているサルの姿が見えた。再び聞こえてきた音と、転がり落ちるこぶしより少し大きな塊。洞窟が崩れているのではなく、猿が食べていたココナッツを投げ捨てているのだった。

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