見出し画像

課題の現場に身を置く旅。鹿児島県肝付(きもつき)〜破壊の学校1日目

これまでの価値観や行動様式を「破壊」するため、8/23〜8/24に鹿児島県肝付まで行ってきました。参加者は15名。北海道、岐阜、東京、神奈川、大阪、神戸、岡山、徳島、宮崎、鹿児島から様々な分野の人たちがここに集まりました。前日入りして『居心地のいい地域づくりみんなで学びあおう』にも参加したのでその様子はこちら

ちょっと先の未来を見に行こう!

肝付(きもつき)町との出会いは『CIVIC TECH FORUM(シビックテックフォーラム)2016』。このフォーラムはテクノロジーを活用した市民・社会課題の解決を目指す取り組みを話し合うもので、中でも「ローカルシビックテック実践」と題したセミナーに登壇した能勢佳子さんのお話に衝撃を受けました。能勢さんは肝付町役場の福祉課保健師であり、肝付町地域包括支援センター保健師兼主任介護支援専門員などの肩書きを持つスーパー価値観破壊系保健福祉士。そのときのプレゼンの資料(2016年のCTF 2016 No.6 ローカルシビックテック実践)をSlideShareで見つけました。

肝付町とのこれまでの取り組みはこちらのリンクを参照:

あしたのコミュニティラボ「世話してあげたくなるロボットが限界集落を救う!?──鹿児島県「共創のまち・肝付プロジェクト」

・電通報 「限界集落という「未来」から見える、シビックテックの底力 」

・Kaigoラボ 「あなたの「ため息」の中にこそ、次の優れたサービスがある」

奥田さんとは出会い編(下書き※)で。

なぜ、このタイミングでだったのか

私ごとですが、4月から子どもの小学校進学に伴い、1週間に20時間しか働かない宣言をしました。これまで通り、フルタイムで働きたいと思っていたので、どうしようかと去年の夏から悩み、焦り、慌てふためき、周りに相談したら、「今までの働き方を否定することはない。テレワークがあれば、なんとかなるんじゃない?」と、スタッフや周りの方々の理解もあり、体制を大きく変えて仕事を続けることにしました。

生活を変えたて、見えてきた気づきがありました。平日昼間に出歩くことが増え、よくよく周りを見ると、年配の人が非常に多い。徳島県の人口分布のグラフで他府県よりも5年早く超少子高齢化を迎えるという話はニュースなどでも見聞きしていましたが、そのことを急に実感し、得体の知れない恐怖を感じました。この急激な変化に私はついていけるんだろうか。と。

私が今、破壊すべきこと

「破壊の学校」に参加を決めたのは、私が無意識に諦めたり、知らないことを恐れていないか、恐るなら正しく恐れたい。ありのままをフラットに感じてみたい。

今回の目的は、このワークショップに参加する以外に、能勢さんのプレゼンに感動した理由を、現地へ行って体感することにありました。

肝付は広い土地に人が点在する町、山あり海あり、南北に車で120分、東西に車で90分。人口約1万5000人の高齢化率は40%と。中には100%の高齢化率の集落もあるとか。そんな限界集落の最先端・肝付町の暮らしは、私達がこれから体験する未来の生活かもしれない。

テクノロジーの社会実装の前に、社会そのものの幸せについて考える「破壊の学校」で、自分の目で見て、感じ、放置しておくと拡張するモヤモヤとした恐怖を、破壊しよう!

Society5.0の時代、技術によって、新しいサービスが次々と創出され、人々に幸せや豊かさをもたらしていくと言われています。しかしながら、大きく変化している今の時代の「幸せ」や「豊かさ」とは何かを今の時代に合わせて考えてみたことはありますか。
人類がこれまで経験したことのない急激な社会変化を前に、今の時代とこれから訪れる未来の「豊かさ」について語りあってみませんか。
集まる場所は限界集落を多く抱える町、鹿児島県肝付(きもつき)町です。沢山の社会課題を抱え、集落の限界を迎えつつも豊かに日々を過ごす人々に触れながら、社会と自分について考えてみましょう。
「テクノロジーの社会実装」という言葉が広がる今、実装の前に社会が求めるものは何なのかを追求する旅、課題の現場に身を置く旅をぜひご一緒に。
そこには、これまでの価値観や行動様式を「破壊」する何かがあるはずです。運営:株式会社たからのやま#破壊の学校


**1日目:

最後までここで暮らし続けると決めた人の集団。看取ると決めた人の決意。

Society 5.0時代の「人間」を考えるワークショップ**

肝付町視察、岸良(きしら)集落へ。

「暮らしの保健室」という名前の岸良集落の支え合い活動のサロンを訪問。集落のお年寄りは1週間に1度集まるそう。はじめは1週間に2度だったそうですが、「忙しいから行けない」と、1度に減らしたとのだとか。やることがたくさんある肝付の高齢者の方々は元気いっぱい。

高齢者の暮らしを互いに支える『支え愛隊』は、38グループ、400人が登録していて、「できることはできるだけ自分たちでやろう!」という取り組み。誰かを助けたり、何かのサポートを行った場合、その代償としてポイントが付与され、50ポイント貯まると5,000円分として利用できるそう。

サロンの網戸の修理もこのポイントで発注。限界集落でもキャッシュレス化が進んでいます。ため息を集めたことが価値を生む!

参加したおばあちゃんの一人の手押し車(手作り!)。衝撃的な見た目のこの石は重し。重しを載せることで、手押し車が安定し、転ばない。
これもため息からの価値創造!②

撮影:本田正浩

岸良集落の高齢者の方が本当に明るく、元気。

私達に”ちょいなちょいな”の歌を歌ってくれて、最後の決めポーズは「ゆびきりげんまん」。小指と小指を繋いで全員で輪になり、「また会おう」と指切りをする。

連れ合いを亡くし、子どもが鹿児島市内で住もうよというのを断り、一人で住んでいる方も多く、この肝付でやることがある、役割があると、ここで住み続けることを選択した高齢者の方々。この「ゆびきりげんまん」は、互いを思いやりながら、最後までここでの暮らしを続けたいという自分自身への宣言なのだと感じました。私はこういう交流がとても苦手で、歳を重ね、自分が高齢者になったとき、この中に入って、ちょいなちょいなと歌い、みんなと笑えるだろうか。ふと、不安がよぎります。

そうした集落に暮らす人の思いに寄り添い、地域を看取るという能勢さん。

介護職の人数も減っているこの地域で、自主的な活動の支え合い活動のサロンは、肝付町内に51あり、約900人超が登録。おもいおもいの集まり方、内容、場所で、自由に繋がり楽しく過ごすそうです。集まったみんなでお料理を作って配食するサロンがあったり、廃校になった学校に子どもの声を戻したいと27mの巻き寿司(プールより長い!)を作ったり。どの活動も共通するのは笑顔が溢れているところ。

同世代、同地域に暮らす人たちが共同体となって今の生活を支え合い、みんなが集まるちょっと楽しい、ちょっとがんばる特別な日があることが活力になり、未来を向いて生きることができる。「高齢者の一人暮らしは可愛そう」と思いがちですが、ある調査によると一人暮らしの方が同居より満足度が高いらしい。一般的にいいと思われていることが、いいとは限らない。誰だって自由に、心豊かに暮らしたい。そう願って自分たちにとって心地よいライフスタイルを創り出した岸良地区。帰りのバスが出発するまで元気に手を振ってくれました。岸良地区の皆さん、ありがとうございます!

撮影:本田正浩

ペッパーの実証実験をした地域のサロンには立ち寄ることは叶わなかったですが、イグリ(すもも)のゼリーいただきました。バスの中でそのサロンのエピソードを聞きました。ペッパーがうまく動作しなかった瞬間。動かなくてしょぼんとしたペッパーに介助が必要なお年寄りが近づき、頬を撫で、頭をさすりながら、頑張れ頑張れと声をかけたと。

人の役に立ったり、応援したり、力を貸すことで、自分に返ってくる。自分も元気になるんだな。そんな連鎖が自然にできる場所、肝付。

会場を『内之浦さかど結いの家』へ移し、セッションの開始。の前に、サロンの皆さんに差し入れてくださったおやつタイム。すもものゼリーとフクレという蒸しパンをいただく。体に染みるってこのことか、と。なんて美味しいんだろう。すもものゼリーは果実入り。コンフィチュールのように濃厚なすももの実が中に入ってることに気づかないほど濃い赤色のゼリー。フクレは懐かしい気持ちにさせるしっとりとした口どけと黒糖のコクが体に染み渡ります。写真を見ただけで思い出せるあの香りや味わい。もう懐かしい。帰りたいよ肝付。豊かさとはここにある。

いよいよ本番です。視察とオヤツでもう胸がいっぱいになってしまいましたが、これからが破壊本番です。

セッション「あ」「在り方」を探る:自分の在り方、社会の在り方

愛と英知と希望を伝える奥田さんのセッションがスタート。私はずっと怖かった失敗を失敗と言える奥田さん(参照:奥田さんとの出会い編)受け取り上手になること。失敗したならばどうする、じゃあ次何をする?

初めましてな人たちと人間臭く繋がることができるのも、名刺交換しないで真っ裸な自分でぶつかるような、そんな不安と怖さとそれを越えても大丈夫だという周りの参加者の懐の深さにダイブ。自己紹介では名刺交換NGで自分の肩書なしに、自分を一言で表したり、好きなこと、苦手なことで自己紹介をします。初めての経験にドギマギです。帰りの飛行機でこうやったら良かったのかもと、後からもう一回やらせてください!て思います。モヤモヤ。

セッション「い」「いきがい」を見い出す:今日と未来の差分ナイトセッション

奥田さんと能勢さんのセッションが始まる前に、夕食タイム。地域の複数サロンの皆さんのコラボ弁当が届きます。
このお弁当箱さえ、ここには売っていません。買うために決めることがたくさんある。大きさは?深さは?何のメニューにするのか?一体、複数拠点で離れている人たちとコラボ弁当プロジェクトをどうやって進めてるのか、合意形成はどうだったのか。参加者からも質問がどんどん進みます。
相談や連絡は能勢さんの同僚の富満さんがLINEグループでサポートしながら、各サロンのラインを使える人がサロンメンバーの意見をまとめながら相談をしたそうです。

肝付コラボ弁当の中身は、お煮しめにピーナツ豆腐、ガネ(さつまいもの天ぷら)、蒲鉾に、さつま揚げ。フルーツのゼリーにちらし寿司。2日前から水を汲み、食材を取りに行ってきたと。顔も名前も所属も知らないはじめて会う私たちのために、こんなにも時間をかけて、手間を惜しまず丁寧に丁寧に作ってくださったのが分かります。


濃すぎるワクワクとモヤモヤとグラグラの破壊の学校。

1日目が終了。

グラグラして、クラクラしたまま2日目へ。全員でモヤモヤ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?