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助成金制度作り~私たちは敵か?味方か?(17/100)

こんにちは~まえゆかです。
パラスポーツエバンジェリストを名乗っていたはずなのですが、最近の私が会社でやっている業務は野球です。
まさか自分がプロスポーツに携わるとは思っていませんでしたが…

もしご興味ある方、ちょっとだけ取材を受けて出ております(7分過ぎ)

前回のこと

さて、本題に戻しまして、前回は私が勤めていた「パラサポ」という団体の説明をさせていただきました。

勤め始めて最初の業務は、助成金の制度作り。
この時点で、仕組みは0。
決まっているのは「パラスポーツ団体の運営をサポートする助成金を作ること」ってことだけ!
そして9月から申請を受け付けるために8月中に説明会を開かなくてはならないということだけ!

私が入社したのは7月1日。
波乱万丈な気配ですね~笑

怒涛のアポ調整とヒアリングの下準備

まず着手しないといけないのが、助成金の出し先であるパラリンピック競技団体のニーズを把握すること。
これなくして制度を作ったところで、意味のあるものにはなりません。

助成対象となるすべての競技団体の現状を把握するため、全国どこでも行きます!! 
平日でも週末でもいつでも行きます!!! 
というスタンスで怒涛のアポ調整をスタートさせねばなりません。

その前にやらねばならなかったのが

おっと、忘れてました、その前にやらねばならなかったのが入札です。

競技団体支援は、当時私ともう一人の2名体制でやっていました。
しかし、ヒアリングから制度設計までを1カ月半ほどで、しかも2名でこなすのは無理なお話。
私自身、制度設計に長けているわけでもなく、助成金に関しての知見もありません。

パートナーとして一緒に走ってくださるコンサルティング会社の入札を急ピッチで実施。

2社お声掛けして、速攻で準備してもらってプレゼン聞いて、値段交渉して決定して、翌日からアポ調整で決まったところからすべてに同行していただくような感じのスケジュール感。

私自身、会社組織で働いたことがなかったのですが、短期間でサクサクと仕事を進め、人当たりもめちゃくちゃ良い方々で、ビジネスパーソンってすごいんだなぁ~と思いました。
後から振り返ってみると、めちゃくちゃ優秀なコンサルタントさんがご協力してくださっていたようですが、パラ関係で出会った方々は本当に精鋭ばかりでした。
短期間でしたが、100m走全力ダッシュを100本みたいな無理難題メニューを一緒にこなした仲間意識などが芽生えたような気がしてます(私だけかも)

助成金の対象になる団体

入札が決まればアポ調整! 助成金の支給対象は27団体。

準備するのは1カ月半。
というか、この時点でもはや1か月くらいしかない。
2人で分担しながらも、どう考えたって月20日じゃ回りきらない。
必然的に休日返上! 
ヒアリング内容を精査する時間も必要ですし、骨格を考える時間も必要。
追い追いもしかしたら書くかもですが、外部団体との調整もあったりで。

とにかく、早急に、ほぼ毎日どこかの競技団体のヒアリングを入れて、早く検討を開始せねばなりません。

メールやら電話やらでどんどんとアポ調整して、全国飛び回ってヒアリングを開始。

さて、ここで気になっている方もいるかもしれません。
27団体ってどうやって選ばれたの? って。

助成金って聞くと広く公募できるイメージもあると思いますが、今回の助成金は目的が明確ですので、対象団体はグッと狭められています。

シンプルに東京パラリンピックの競技団体かな~と思うかもしれませんが、対象として決められたのは以下の条件。

リオ・平昌・東京パラリンピックの正式競技になっている競技団体

組織が立ち上がったのが2015年で、その翌年にある2016年のリオ、2018年の平昌(冬季)、そして2020年の東京で正式競技になっている競技を統括する団体が対象です。

リオで、7人制サッカーと呼ばれていた脳性麻痺サッカーとセーリングが正式種目から外れますが、支援対象です

2016年時点では正式競技になっていなったパラバドミントンとテコンドーも東京パラリンピックで正式競技になることが決定していたので、こちらも助成対象です。

もちろん冬季競技団体も。
車いすカーリング、パラアイスホッケー(当時はアイススレッジホッケーでしたね)、そしてスキーのアルペン、クロカン、バイアスロン、スノーボード(これらは1つの団体が統括して運営)。

日本は競技ごとに団体が別れているところと、障害種×競技で団体が別になっているケースもあります。

そのため、知的障害の種目が開催される水泳・陸上・卓球は、知的障害と身体障害の団体のそれぞれが助成対象になります。

これを足し合わせると27競技団体になります。

本来、国内にはもっと多くのパラスポーツ団体があります。

全国障がい者スポーツ大会(健常者で言う国体です)の競技になっているものや、アジアパラリンピックで競技になっているもの、デフリンピックの競技やスペシャルオリンピックスなどなど・・・
パラスポーツ全般を盛り上げるには、これらの団体をサポートすることも大事なのですが、いくら100億円の予算があると言っても、無尽蔵にばらまくわけにもいきませんし、1団体あたり1000万円を超える金額の助成金を予定していたので、数も絞っていく必要があります。
様々なご意見はあるかなと思いますが、何事にも選択と集中は大事。

そのため、私はこの27競技団体のヒアリングの調整を行い、山口県とか、兵庫・奈良などに行ったり、関東圏内でも様々な事務所に訪問させていただいたり、事務所にお越しいただいたりしながらヒアリングを実施させていただきました。

敵か味方かって?!

競技団体の皆様も、ニュースでパラサポの存在は知っていたのでしょう。
支援をすると発表されていたので、ヒアリングの打診をすると快く受け入れてくださる団体がほとんど。

私自身も、競技団体の困り事を解消するために助成金を出すんだと思って業務にあたっているので、「いいことをしている」と思い込んでいましたが、とある団体のヒアリングの開口一番にこんなことを言われたのです…

「私たちはまだ、皆さんが敵なのか、味方なのか、図りかねています」

って、て、て、敵~~~~~?!?!

救世主とまでは言われないだろうと思いましたが(まだ何も実績もないんでね)まさか「敵」という言葉が出てくるとは…?!

予想だにしていない言葉に同様。。。

理由はシンプル

でも、決して悪意があったわけではなく。
お話をさせていただいてわかったのがこの2つ。

①負担がより増えるんじゃないかということ
②カニバってしまうのではないかということ

競技団体の状況をヒアリングしていくと、確かに「敵か、味方か」って見極めたくなる気持ちもわかるかも・・・という気持ちにだんだんなるくらいに、納得できる言葉でした。

もうちょっと詳しく説明していきます。

①負担がより増えるんじゃないかということ(手続き面)

当時、競技団体が活用していた助成金(補助金かも?)は、強化費として合宿や遠征時に使用できる国から支給されるものと、大会開催などに活用できるTOTOのくじの収益などを活用した助成金です。
いずれも、公的な団体から拠出されるお金のため、精算の手続きはとても煩雑だとどの団体からも声が上がります。

この当時、空合宿をやってしまった団体があったようで、より精算のための手続きも面倒になっていた時期でして…

空合宿とは…
合宿を実施するとして航空券などを手配し、領収書を発行しただけで実際にはその後キャンセルしてお金だけを別のものに使ったりしてしまうこととかのことを言います。

飛行機を使った場合、空港で保安検査場を通過する時に出る感熱紙のペラペラした紙があると思うのですが、それの提出がマストになるんです。
あれって、飛行機乗って、着陸したらまず捨てちゃうじゃないですか?!
でも、あれがないとダメなんです。
領収書だけだと、乗ってなくても発行できちゃうので。
なくしちゃった場合は、航空会社が発行する「搭乗証明書」の発行が必要です。

宿泊も、領収書のみはNGで「宿泊証明書」を添付する必要があります。
また、手書きの領収書もほぼNG。

もちろん、国からのお金を使っているので、不正利用はいけません。
でも、ほとんどの団体が不正利用なんてしないんです。
悪いこと考えた1人のために、普段ちゃんとやってる人たちの業務が増えちゃうという現実…

この当時、法人格を持っている団体はごくわずか。
ほとんどの団体が任意団体として活動して、事務作業をサポートしているメンバーはいても、その多くがボランティアです。

強化費は1団体当たり数百万円から、多いところだと数千万円が年間で支給されます。
その一件、一件、すべてにおいて往復の搭乗証明書や宿泊証明書が必要ですし、領収書のいらない電車やバスの交通費も、すべての案件で乗換案内などの経路図の提出がマストとなります。

1回の合宿で20名くらいの選手とスタッフがいたら、航空券の領収書・往復搭乗券・宿泊証明書・近距離移動の経路図…これだけで5枚×20名分。
全部所定の様式に入力しながら、糊付けしてPDFも取って提出です。

ボランティアじゃ、やってらんないと思う。笑

私たちの作る助成金で、支援が受けられるのは嬉しいけれど、申請方法や精算方法が面倒だと、有難迷惑にもなりかねない…

事務処理をする人がいない、負担であるという声は本当に多くの団体から上がった声で、多くの助成金は事業に使えても事務局員の人件費には使用できない状況であることもこの時理解しました。
仕組みを作る上で、私たちは民間助成金なので、大いに参考にしたポイントでした。

もう一つの懸念

もう一つ、「負担が増える」という点で、競技団体が懸念していたことがあります。

それが「お金」のこと。

助成金がもらえるのにお金の負担ってどうゆうこと?? って思いますよね。

そのことも書こうと思ったら既に4,000字をオーバー。
続きはまた次回としようかなと…

個人的な感覚で1回は3,000字程度の方が読みやすいかな~と思うので。。
次回は、この続きの、ヒアリングでわかったお金面の不安について書いていこうと思います。

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