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第十五話 一緒に

 とある夜。寝ている湊音を眺める李仁。見つめる先は湊音の指。

『サイズを図るには今しかない……』
 指のサイズ。そうである、李仁は湊音へのプロポーズを考えたのだ。

 彼自身、ゲイである自分が誰かにプロポーズするということは思ってもいなかっただろう。どちらかといえば待ってる方であった。

『指輪でプロポーズってありきたりすぎるわよね』
 いろんなことは交際していた男性にしてもらった方だと李仁は思うがプロポーズや結婚までは進んだことがなくステレオタイプな方法しか思い浮かばないようである。

 そーっと湊音の手を取り、薬指に布メジャーを巻きつける。そしてサイズをスマホにメモをする。

「んんんっ……何してるの、李仁!」
「ああああっ、その!」
 李仁は布メジャーを慌てて湊音の指から引き抜く。

「何この紐? メジャー?」
「そ、そのー。ミナくんのあれの太さを知りたくて」
 とっさに嘘をつく。でも確かにその太さも知りなかったわけで……。

「なんだよ、こんな夜に。てかコンドームXLだからそれくらいだよ?」
「でも知りたいなって。測っていい?」
「いいよ、って……勃ってきたんだけど」
「やだぁ、じゃあお口で測っていい?」
と李仁は湊音のアレを口に含む。
「最初からそうしなかったんじゃないの? もう夜遅いから寝ようよ」
 と湊音が言っても李仁は口に含み、ねぶる。

「李仁ぉおおおっ、もぉおおおお」
「んーっ、んっんっ」
「ああああっ!」
 湊音は李仁の頭を掴んで動かす。そしてイく寸前に口から外して李仁の顔にかけた。

 湊音の精液まみれになる李仁……。
「ミナくんっ……」
「どう? サイズわかった?」
「おっきい」
「わかるだろ? じゃあ次、李仁のサイズ測るね」
「ミナくんほどじゃないわよぉ」
「わかってる」
「ひどーいっ!」

 2人は結局深夜までいちゃついた。


◆◆◆

 李仁は測ったサイズをもとに宝石店に行く。だがどのお店も最初は快く迎えてくれるが相手のサイズを書く際に明らかに男性サイズであることに気づいた店員が少し顔色を変える。
 そして名前の刻印ができると言われ、湊音の名前を書くと尋ねられた。

「あの、失礼ですがお相手の方は……」
「その……男です」

 苦い顔をする店員。

「あの、シンプルなデザインで……ペアリングがあればと」
「ですよねぇ……もう一つは女性のデザインですからね」
 男性用は本当にシンプルで、女性用はとても華美なものが多い。

 李仁はシンプルな指輪が気に入ったがペアリングでは両方ともシンプルなものがなかった。

『やっぱりオーダーメイドかしら。どうしてもペアとなると女性用もサイズがないし、デザインも派手だし』
 李仁の顔が曇る。すると店員の女性がこう提案した。

「メンズのものを組み合わせてお出しすることもできますよ。これならとてもシンプルでいいかと」

 李仁が気に入ったメンズ用の指輪二本を同じケースに入れてくれたのだ。

「この間は女性同士でお求めに来られた方もいるんですよ。その時はレディース用二つお出ししたのですがお二人ともシンプルなものが良いと……」
 と店員は微笑む。そのようなことはイレギュラーであるがそう対応していた過去があったのだ。

「実は今のところ私の経験では男性の方が男性とのペアを一人でお求めに来られたのはお客さまが初めてでして。このお店は女性が好むようなデザインが多いですし、なかなか男性一人で入ってくるのが恥ずかしいかもしれません」
「私は平気なんだけどなぁ……」
「ありがとうございます、でも最近は多様性とか言われていますし、いろいろ考えさせられます……」
 実は李仁、何も気にせずふと足を止めたお店であって、店員の言うようなことには気づかなかった。

『たしかに女の子はこういうところで指輪を買ってもらったら嬉しいわよねぇ』
 と李仁は店内を見渡す。

「こういう対応してくれるのは嬉しい。他のところだとやんわり断られたの」
 と数軒回ってからたどり着いた店でもあるのだ。

「お相手の方、喜んでらえたら嬉しいです」
「そうね、まさかもらえるなんてってびっくりしそう」
「サイズ変更もできますから、サイズもこっそり計られたんじゃないですか?」
「……わかった? そうなの、寝てる時にメジャー巻きつけて」
「まぁっ! バレませんでした?」
「測ってから目が覚めちゃって……バレるところだったわー」

 と店員との会話が弾む。李仁はこの店で指輪を作ることを決め、数週間後に出来上がった指輪見て気持ちが高まったのである。

「うまくいきます! ご報告お待ちしてますね」
「ありがとう。また彼と来ます」

『……あとは渡すだけ!』

 湊音と李仁はお揃いの半ズボンとTシャツ姿でベッドの上でいちゃつきながら旅行雑誌を見ている。
 二人は同棲を始めてからなんだかんだでうまくいっている。
実は今度の夏休みに二人で北海道旅行に行くことになったのだ。

「ねぇ、あと少しだね。楽しみ」
「わたしもよ、福利厚生でいいホテル取れたし」
「ねぇ、コンドームいくつ持ってく? 四泊するから」
「もぉ、ミナくんったらぁー。旅行行くんだからぁ、疲れてできなくなるかも」
「いい夜景を見てそれ見ながらムラムラしちゃうかもよ」
「いやーん、襲われること決定?」
 二人は脚を絡ませキスをする。
「違うーっ、李仁に襲われそう」
「うん、襲っちゃいそう。ミナくん可愛いから……」
 と李仁は湊音に覆いかぶさる。だが李仁の頭の中ではプロポーズをいつしようかとぐるぐる巡らせる。

「富良野のラベンダー畑楽しみだなー」
と湊音がそういうと、李仁は
『ラベンダー畑の前でプロポーズもいいかも』
 と思いついたのだ。富良野は4日目。夜は福利厚生でホテルの最上階。プロポーズして夜は……と思いを巡らすとニヤニヤが止まらないのか顔に出ている。

「李仁、何ニヤニヤしてるの?」
「べ、別に……」
「たくさんおいしいもの食べて、いい景色も見ようね」
「うん」
 二人はキスをした。



◆◆◆
 旅行当日。様々な観光地に訪れ写真をたくさん撮り、料理も食べ、夜は案の定疲れて爆睡。
二人で旅行するのは初めてであり、なかなか休みが取れない二人は久しぶりのリラックスタイムを好きな人と過ごせるのが幸せである。

「李仁とたくさんこれから旅行行きたい。日本だけじゃなくて世界中!」
「私も。ミナくんとの旅行楽しいですもん」
「僕も!」
 旅行中はなぜか湊音は堂々と李仁と手を繋ぐ。

「恥ずかしくないの?」
「……なんか恥ずかしくないみたい。だって好きな人と手を繋いで旅行するの、幸せ」
「じゃあ帰っても手を繋いで歩こう」
「うーん、それは無いな」
「ええーっ!」

 そうこうしている中、実は湊音は考えていた。李仁が旅行前から落ち着きがないことに気づいてはいた。

 旅行も3日目の夜。この日も疲れきって李仁は寝てしまった。明日、レンタカーを借りて富良野まだ行くため、体力温存したいとのことであった。彼の寝顔を見ながら湊音は
起きて夜景を見ていた。

『なんとなくなんか明日……プロポーズされそう、なんちゃって……』
と淡い期待を抱いていた。

◆◆◆


 そして次の日の朝、レンタカーを借りて二人は富良野に向かった。移動距離が長いがその間にいろいろ会話をしたり、途中でお店に立ち寄ったり。
 この時間も貴重である。二人で過ごす時間、楽しむ時間、二人は幸せそのものであった。

「ラベンダー畑、楽しみ。母さんがラベンダーの匂い好きだからお土産買って送ってあげようかな」
「そうなの。石鹸とかドライフラワーとか香水とか色々買ってあげましょ」
 李仁の頭の中はプロポーズのことも考えつつも無事に辿り着けるのかドキドキしている。

 湊音はどこでプロポーズされるかなとドキドキ。二人とも落ち着かない。

 そしてラベンダー畑についたのだが……。

「ねぇ、ミナくん……」
「うん、李仁……」
 目の前は想像していた紫の景色は無かった。そして隅の方でラベンダーを、刈っている人たちがいた。

 なんとラベンダーの収穫の時期であったのだ。二人はなかなか休みが取れず夏休みの終わりの時期にしか取れなかったのだ。
「ラベンダー刈るところってなかなか見られないから貴重だよね、李仁……」
「そ、そうよねぇ」 
 いつもポジティブな李仁がポカーンとしている。

「そういえば奥にひまわり畑あるって雑誌に書いてあった!」
「ほ、ほんと? じゃあ行きましょう!」
と二人はひまわり畑に向かう。

が、ひまわりは全て枯れて元気がなかった。

「……そうよね、時期が時期だしね」
「うん、元気のないひまわりもなかなか見れないしね」
 普段ネガティヴなことを言う湊音がなんだか今日はポジティブである。

 李仁は頭をかいてもじもじする。ここには他に誰もいない。二人はなんとも言えない雰囲気になった。

 だが李仁は湊音を見つめて話を始めた。少し照れ臭そうである。

「私ってさ、カッコつけようとするとどうもうまくいかないみたい」
「えっ?」
「あのさ……」
 もじもじする李仁。湊音は察した。彼がしたいことはわかったのだ。

『……李仁……』
湊音は彼を見上げる。

「ミナくん、こんな私だけど……それに、色々これから乗り越えなきゃいけない壁はあるけどさ……」
 少したどだとしく、顔を赤らめながらもいつもよりも真剣な眼差しの李仁。湊音はこみ上げる気持ちを抑えながら見つめる。

「私と、これからも共に生きていきましょう。結婚してください」
 李仁の手には指輪のケースが。そしてひらき、そこには指輪が二つ。

 湊音は糸が切れたかのように、気持ちが破裂して涙溢れ出た。
「李仁ぉっ……」
「恥ずかしいっ」
 李仁も涙が溢れた。反応がとても気にっていたのだ。
「私も、李仁とならこれからもずっと一緒にいられる! これからもよろしくね」
「うん……もちろんよ。ミナくん」

 二人は抱きあった。李仁のプロポーズは大成功であった。



◆◆◆
「あんっ、あんっ!」
「ミナくんっ、可愛いっ……」
 二人はその三日も我慢していたこととプロポーズの嬉しさのあまりに激しく混じり合った。
 ホテルのベッドもいつもよりもスプリングが良い。李仁は激しく湊音の中に入る。そしていつも以上に腰を振る。その度に湊音は大きな声で喘ぐ。

「李仁ぉ、なんかいつもよりも激しいっ」
「ミナくんっ、なんかね、すごくすごく気持ちよかった」
「変態っ」
「最高よ、ミナくん」
 二人はこのあと何度も結ばれた。そして二人の左薬指には指輪がある。

『李仁、僕は指のサイズ計られていたの知ってたんだよ。サイズぴったり』
 と指輪を見ながらニヤニヤとする湊音であった。

 そして二人はパートナーシップ協定を結んだ。だがこれからもまだ先は色々とあるが一先ずホッとした二人であった。

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