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よしなしごとたち

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日々感じたことを好きなようにずるずると綴っています。
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#秋

網戸越しに秋

網戸越しに秋

4週間以上も好きな人にふれられていない指先が、熱を持ってじんじんと痺れるような感じがする。

最近の頭のなかはいつも鉛をつめこまれたかのようにぎゅうぎゅうで、それはからっぽに比べたら喜ばしい状態ではあるのだけれど、ずっと続くとなかなかにしんどくて、だから半ば強制的に、一時的にからっぽにしたい。
すなわちそれは、好きな人とふれあいたいということ。わたしのなかには、人肌のぬくもりでしか埋められないもの

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秋一番が吹いた朝

秋一番が吹いた朝

今朝、家から一歩出た瞬間に「ウワーーー!」という気持ちになったのは、決してわたしだけじゃないはずだ。

空気が秋をまとっていた。
何食わぬ顔で。まるで、昨日までもずっとそうでしたよみたいな自然さをもってして。

季節の移り変わりかたというのは本当に、その瞬間まですっかり忘れているものだから、いちいちびっくりしてしまう。
夏には秋の乾いた風を忘れ、次の季節を迎える覚悟を決めぬまま秋は過ぎ、冬

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カラフルじゃなくっても

カラフルじゃなくっても

朝、目が覚めると肌寒くって、今のいままで冬の朝を忘れていたことを思い出した。
いつのまにか秋の中にいて、もうすぐ21度目の冬が来る。

毎朝飲んでいたつめたいカフェオレの代わりに、あたたかいコーヒーを淹れる。(インスタントなんやけどね)
こうして季節が移ろってゆくのだということが手に取るようにわかるのは、一人暮らしをしているせいかもしれない。

実家では、母の手によって夏布団が羽毛布団に変わり、

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思い出すのは

思い出すのは

昼間の暑さが嘘みたいに涼しい風が香る中を、すり抜けるようにして歩いた。
夜ごと秋が深まってゆく。

思い出す、というよりもっと自発的なもの。
考えるより先によみがえるから、その都度はっとさせられてしまう。この季節は特に。

断片的な記憶や景色、空気や温度や手ざわりなんか。うまく表現出来ないけど。

それは決まって高校時代のことだ。
高校3年間の秋と冬。

久しぶりに袖を通した合服の感触とか
河川敷

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