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ことばのおはなし

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言葉にまつわるあれこれなこと。
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「わかる」ことは正義ではない

「わかる」ことは正義ではない

言葉を受け取ることは、時として、言葉を発することの何倍もの気力と体力を要する。

だから、手紙や本を読んだり、展示に足を運んだり、時に人と会って話したりすることすらも、それ相応の覚悟を持って臨むようにしている。
気力と体力がないときは、向き合うのを先延ばしにすることさえある。

それゆえ、ツイッターで知った最果タヒ展に出向くのも、本当は少し躊躇していた。
今の自分できちんと受け取ることができるのか

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二人展「道半ばの東京」終了しました!💐

二人展「道半ばの東京」終了しました!💐

昨日、二人展「道半ばの東京」が無事終了いたしました。
会場へ足を運んでくださった皆さん、贈りものやメッセージを送ってくださった皆さん、ほんとうにありがとうございました。

陳腐な表現になってしまいますが、ほんとうに夢みたいな二日間でした。

大好きな人ばかりに囲まれて過ごしていたから、終了後のがらんとしたギャラリーがあんまり寂しくて、片付けの最中はほとんど泣き出しそうでした。
素敵な花束とたくさん

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わたしの恋人は聞き上手

わたしの恋人は聞き上手

数多ある恋人の長所のひとつに、聞き上手なところがある。

起承転結はおろか、オチすらないようなくだらない話から、まっさきに報告したくなるようなうれしい出来事、人間関係の愚痴、将来の不安、仕事の相談までなんでもござれ。
どんな温度感のどんな話であろうとも、時に愛すべきいい加減さで、また時には泣きたくなるくらいの真剣さで向き合ってくれる。そんな彼のことが、恋人である以前に、人間としてとても好きだ。

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リアルはSNSをはるかに凌駕する

リアルはSNSをはるかに凌駕する

生まれてはじめて、ライブバーというところに足を踏み入れた。
ちいさなバーカウンターの横にはこじんまりとしたステージ、その正面にはコの字型にベンチが並んだ木のテーブルが置いてある。
緊張のあまり、いっそ消えてしまいたいような気持ちで髪の毛や洋服をいじりながら、そわそわと視線を泳がせた。はじめての場所は苦手だ。

知っている人や知らない人たちが、アコースティックギターを携えて次々と唄う。
すごかっ

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言葉はだれかに届けるために

言葉はだれかに届けるために

とってもとっても嬉しいできごとがあったので、ここに書き記す。
先日、この記事で紹介した漫画『ダルちゃん』の作者、はるな檸檬先生のサイン色紙をいただけることになりました。

3日前のバイト終わりのこと。
なにげなく開いた新着メールを読んだわたしは、驚きとよろこびのあまり、数分間その場を動くことができなかった。

それは、『ダルちゃん』の担当編集の方からのメールだった。
なんでも先月、ツイッター上

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小説『火花』と漫画『かくかくしかじか』に射抜かれた話。

小説『火花』と漫画『かくかくしかじか』に射抜かれた話。

はじめはあれっという程度だった違和感が、だんだんだんだん大きくなって、書けない日々が続いている。

わたしは、文章を書くのがこわくなった。
他の誰か以上にたぶん、自分自身を納得させられないことがこわいのだと思う。

こんなこと、もう言い古されてるし。
わたしより上手に書いてる人がたくさんいるし。
というかなんの役にも立たないし、そもそもわたしの私生活の話なんていったい誰が聞きたいねん。

これまで

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前進、なのかもしれない。

前進、なのかもしれない。

去年の春頃に買ったスカートを、とても久しぶりに履いた。
真っ赤な色にひとめぼれして、しゃらしゃらした生地感も気に入っていて、去年ほんとにたくさん履いていたものだ。

それなのに、鏡に映る姿を見て、わたしは呆然としてしまった。

似合わないのである。
なんか、へん。なにを合わせてもしっくりこないのだ。
道ゆく人がぎょっとするようなものではないけれど、自分の中での圧倒的違和感がどうしても拭えない。

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嘘偽りなく言いますと、「言葉なんてもうまっぴらだ!」と思ってしまうことはよくあります。

嘘偽りなく言いますと、「言葉なんてもうまっぴらだ!」と思ってしまうことはよくあります。

無気力さでいうたらわたしの右に出るもんおらんのちゃうか、と思わず考えてしまう程度には、結構な大波のなかにいた。

現実を見たくない。文章書きたくない。
家から出たくない。誰とも会いたくない。

素敵な言葉に心を動かされることなんて、まっぴらごめんだとすら思っていた。
というかやや現在進行形で、今もそう思ってしまうから大変だ。

言葉で心を動かしたいとか書きたいとか、散々言ってきたくせに死ぬほど矛盾

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わたしがエッセイを書く理由

わたしがエッセイを書く理由

「なんでエッセイなの?」
「そもそも、エッセイってなに?」

エッセイを書いていることを話すと、このような反応をされることが非常に多い。

「エッセイスト」ってそれ単体で成り立つ職業ではまずあり得ないと、わたしは思っている。

俳優や歌手などの有名人や文筆家、起業や闘病などインパクトのある経験をした人、はたまたぶっ飛んだ私生活を送っている、あるいは並外れた文才を持ち合わせた人。エッセイストとして名

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変形しそうなくらいすき

変形しそうなくらいすき

「変形しそう」と思うほど、誰かを好きになったことはありますか?

すきですきで変形しそう
帰り道いつもよりていねいに歩きぬ
/ 雪舟えま

まるで、とりはだが立つような衝撃だった。

好きすぎて苦しいとか陳腐なことならぽんぽん言えど「変形しそう」だなんて、わたしには思いつきもしなかった。
しかし、激しくわかるのです。

目に見えないからだの中身のどこかは絶対、もう大変に変形してると思うの

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そして生活はつづく

そして生活はつづく

重い体を引きずるようにして起き上がり、ふと鏡をのぞくとぎょっとするほど顔が土気色だった。

不健康という言葉をそのまんま具現化したような色。

たっぷり寝たにもかかわらず、目の下には落ちくぼんだような影ができ、頬はげっそりとこけている。
と言いたいところなのだが、たった一日や二日の食欲不振でそれが叶うことはなく、相変わらずの丸顔がじいっとこちらを見つめているばかりであった。

エアコンにやられたの

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輝ける気がする

わたしはほんとに書くことが好きだー、と
泣きそうなくらいに強く思いながら生きている。

始めてみました。はじめまして。

物心ついた頃から文章を書くのがすごく好きな人間です。

というか、自分の中に渦巻く言葉を外に出してやらなくちゃしんどくなってしまうので
その手段として書いていると言った方が正しいかもしれないな。

書くのはずーっと好きで、でもいったい何を書きたいんやろうって考え続けていて、最近

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ものすごく暗くて、ありえないほど重い

食器洗いをしていると、うっかり手が滑って器を落としてしまった。

音を立ててシンクに落ちたそれを慌てて確認するも割れていなかったのでほっとして、
次の器を手に取ると、ふちのところが欠けていた。

自慢じゃないが、この部屋で暮らし始めてから2年以上、わたしは一度も食器を壊したことがなかった。

それなのに。

シンクに落ちたそのちっぽけなかけらを拾い上げることが、わたしにはどうしてもでき

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"泣いてしまうなんて勿体ない" aikoの名バラード10選

"泣いてしまうなんて勿体ない" aikoの名バラード10選

わたしは、熱烈なaikoファンである。
正直、ファンという言葉はあまり使いたくない。だって、そんなもんじゃない。

「aikoジャンキー」とはよく言ったものだと思うが、まさにその通りなのである。
彼女にはものすごい中毒性がある。いったんハマったら最後、きっともうあなたも抜け出せない。

「aikoはええ曲しかない……」それはもう大前提として、中でもわたしが、「何回聴いても泣いてまうからうっかり外で

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