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就活、絶対に楽しんでやる宣言。

"「みんなと同じ事はしたくない」という、みんなと同じセリフ。"
ご存知だろうか。お笑い芸人・だいたひかるさんの有名なネタである。

もう、ほんとうにその通り。大学生なんて「みんなと同じはイヤ!」で走り出しては、盛大に道に迷う天才なんじゃないかと思う。

かくいうわたしも、勿論その例外ではない。
在学中の過ごし方をはじめ、卒業後の進路、さらには自分の生き方と、もはや趣味と呼べるんではなかろうかと思うほど悩みに悩んで迷走し、そんなこんなで早3年。

「今しかできないことってなんやねん」という鉄板のお悩みに関しては、最近ようやく納得のいく結論を導き出せたものの、3回生秋の目下迫りくるお悩みといえば、そうSYUKATSU。

判で押したようなリクルートスーツに身を包み、ペタっとした黒色に染めた髪をぴっちりまとめることから始まる戦い。生きるために働くんだってのに、大半の人がもう半分死んだような顔をして、全然たのしそうじゃない。

そりゃあそうであろう。お仕着せの服装に、個性を挟む余地なんて一ミリもないような髪型で「自分を表現してください」なんて、土台無理な相談じゃあないかとわたしには思える。

しかし、もっともーっと不思議なのは「みんながそうしているから」という理由だけでなんの疑問も持たずに同じ行動をとっている学生たちだ。さっきまでの「みんなと同じはイヤ!」は一体どこにいったのだろう?

それは何も、服装に限ったことではない。

「就活に有利だから」という理由で、好きでもないのに行うボランティアやサークル活動。自分を偽ってまで良く見せようとしてしまうこと。
「嘘も方便」でおさまる程度なら構わないと思うけれど、果たしてその先には、本当に個性を消してまで手に入れたいものがあるのだろうかとつい考えてしまうのだ。


「……とわたしは思うんやけど、どうしたらいいんかなあ!」

上に書いたようなことを一気にまくしたてると、それを聞いていた友人はこう言った。

「就活は、恋人探しと一緒らしいで」

曰くそれは、彼が参加した内定者座談会にいた先輩が言っていたことなのだそう。

はじめだけ相手の好みに合わせて取りつくろっていたとしても、どうせすぐにボロが出るし、何より自分自身が疲れてしまうから長続きしない。
だからそんなことをするよりも、まずは自分のタイプや絶対に譲れない条件をはっきりさせて、「この人の前なら、ありのままの自分でいられるか?」を検証する。そのうえでマッチする相手を探せばいいのだという。

素の自分をアピールして、それを相手が好意的に受け止めてくれれば見事カップル成立。
つまりは、めでたく内定というわけだ。

その説明を聞いてわたしは、首がもげそうなほどに頷いた。
めっちゃいいやんそれ! みんなそんな風に考えればいいのになあ、と言ったあとで、いやしかしそんなに甘くもないのかと考え込んだ。

「いや、でもその先輩は全然しんどくなかったらしいで。就活のためにめっちゃがんばったこととか特になかった代わり、とにかく自己分析を徹底的にやったらしい」

自己分析とは、自分はどんな人がタイプなのか? 絶対に譲れない条件は何か? という部分の検証である。
そうやってひたすらマッチングを重視しながら就活を進めた結果、誰もがその名を知るような大手食品メーカーに内定をもらったそうだ。

「そうやってできたらいいよなあ。なんか、死にそうになりながらしんどいことをやって、その先で笑ってる自分が想像できない」

そうつぶやくと、打てば響くような速さで「いや、ほんまにそう!」と彼が身を乗り出した。

聞き上手や調和がいいとされる日本で、これでもかというほど自分語りが許される時間、それが面接なのだと思う。
がんばってきたこと、夢中になっていること好きなこと、そんな話していて楽しいことのアピールが求められるなんて、めったにある機会ではない。だったらそれを逆手に取って、いっそ楽しんでしまえばいいんじゃないか。

こんなこと言って、半年後の自分に呪われるかもねと笑いながら、でもそうやって話している時間は本当に楽しかった。

早くも受付の始まった出版社の入社志望書を一緒にながめ、一風変わった質問項目に、おもしろそうと心躍らせる。そうやって始まったって、いいんじゃないだろうか。


楽な方を選べばいいのではない。しかし、みんなと一緒だからという理由で、がむしゃらにしんどい方ばかりを選ぶのが正解とも限らないのではないか。

4年で卒業する大学の受験とはわけが違う、もしかしたら生涯勤めることになるかもしれない会社だからこそ、苦楽を共にするパートナーを選ぶような気持ちで向き合ってみるのがいいのかもしれない。


人生楽しんだもん勝ち、とは決して思わない。
そもそも勝ち負けがあるとは思えないし、楽しくないことから学んだり成長できたりすることの方が圧倒的に多いからだ。挫折や絶望あってこその人生だと思う。

しかし、就活は断然、楽しんだもん勝ちだろうとわたしは思う。就活も人生の一部だという視点はひとまず置いといて、渦中にいるときくらいはおもしろがってみてもいいんじゃないだろうか。

「死にそうになって当たり前」みたいな風潮に、日本に、呑まれてたまるか。


「わたしたちは、絶対に楽しんでやろうな」

そう固く気持ちを交わしたあの日を胸に、わたしは渦中に飛び込んでやる。


#エッセイ #就活 #大学生

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