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「約束のネバーランド」をライフハックとして提案したい

情緒が乱れている人は、とにかく「約束のネバーランド」を見た方が良い。

前回の記事を読んでいただければお察しいただけると思うが、わたしは数日間、わりと大変な情緒を患っていた。
どの程度だったかというと、退勤ラッシュの山手線に揺られながら、コートを抱きかかえてしくしく涙を流すくらいである。

会社にいても必要最低限の会話や愛想笑いすらしたくなく、友達と過ごしたい気持ちはあるけれども会ったら会ったでストレスを感じそう、かといって一人になればとめどなく気が滅入ってしまう。
原因こそ明らかだったがどうすることもできず、ほとんど絶望しきっていた。

めそめそしながらうちに帰ってテレビをつける。
この鬱々とした気持ちをなんとか紛らわせたい。しかし、少し前にハマっていた恋愛群像劇なんてとてもじゃないが見る気になれず、かといって映画を消化する体力もない。とにかく何も考えなくて済むものを流したいと、アマゾンプライムからおすすめされたアニメ「約束のネバーランド」になんとなく目を留めた。

ところで、わたしは元来、アニメというものがあまり得意ではない。
わざとらしく「ハッ!」と音を立てて息を飲む様や、もったいをつけたような笑顔の作り方といったキャラクターの仕草にぞわぞわしてしまうから、というのがその理由で、ジブリやちびまる子ちゃんなんかを除けば、これまで積極的に見ようとしたことはなかった。

だから、本当に出来心だったのだ。しかしこれが、思いがけない転換点となったのである。

ご存じの方も多いかと思うが、このアニメの原作は、現在少年ジャンプにて連載中の漫画だ。
ちなみにわたしは、以前1~2巻あたりまでコミックスを読んだことがあったので、おおまかなストーリーは覚えていた。

以下、簡単なあらすじを紹介します。

物語の主人公 
・エマ(抜きんでた身体能力を持つ)
・ノーマン(知略に優れる)
・レイ(リアリストで博識)
舞台は、孤児院・グレイス=フィールド(GF)ハウス。
ここでは、いつか里親の元に送り出されると信じる孤児たちが、院のシスターである「ママ」のもと、楽しく幸せに暮らしていた。
しかし、ハウスの真の姿は「人間飼育場」。孤児たちは、6~12歳までの間に「出荷」、すなわち死という運命を辿ることを定められていたのである。
ある日、図らずも「出荷」を目撃したことにより、エマとノーマンはハウスの真実を知ってしまう。
そこで二人はレイを仲間に引き入れ、ハウスからの脱獄計画をスタートさせた。

全12話のうち、たしか2話ぶんくらいにあたるのが上記の内容だが、物語の本番はここから始まる。

何を書いてもネタバレになってしまいそうなので詳細は避けたいが、この後、さらに誰かを仲間に引き入れたり、しかし仲間の中にママのスパイがいることが発覚したり、敵が増えたり脱獄計画が頓挫したり、ママとの心理戦が繰り広げられたり誰かの「出荷」が決まったりと、それはもう目まぐるしく物語は進んでいく。

一瞬たりとも心が休まる暇などない。比喩でもなんでもなく、わたしは常時、手にものすごい汗を握っていた。

うそやん。
あなたが??
あらまあ……。
えっ、頭よすぎるやろう。

一話終わるごとに、必ずと言っていいほどそれらの言葉が口を突いて出た(一人)。
オープニングを早送りする時間すらもどかしかった。続きが気になって気になって居ても立っても居られなくて、仕事のあるド平日であったにも関わらず、全12話を2日間で見終えたのだった。

そうして気がつけば、鬱々とした気持ちは跡形もなく消え去っていた。

これまで、現実離れしたファンタジーに心躍らせることができる時期は、もうとっくに過ぎ去ってしまったのだと思っていた。
それなのに、この没入感ときたら、いったい全体なんなんだ。久しく味わっていなかった感情に戸惑うくらいの興奮をおぼえ、わたしはその熱を複数名に対して一方的に送り付けさえしたのだ。

本作における手の込んだ世界観と、一瞬たりとも飽きさせない展開の速さ、そして圧倒的なストーリー力は、小学生のとき夢中になっていた「ハリー・ポッター」や「ダレン・シャン」シリーズを思い起こさせた。単なる娯楽の域をはるかに超え、心を捉えて離さないエンターテインメントだといっても過言ではない。

思い返せば、どんな小説を読んでも映画を見ても、共感こそすれ、これほどの高揚感をおぼえることは最近めっきりなくなっていた。「共感」というのは、あくまでも現実の自分ありきでの感情に過ぎないからだ。

しかしこうして、現実世界を完全に離れて物語の世界に入り込むことの愉悦たるや。本当に何物にも代えがたい幸福であると、改めて実感させられたのだった。

今さらファンタジーなんて……と思う人にこそ見てほしい。普段、生っぽくどろどろした恋愛作品ばかりを貪っているわたしが言うのだから、これ以上の説得力はないだろう。

忙しない日々や頑固な雑念から遠く離れた、心躍る時間を約束したい。
そして、来年の1月から始まる第二期は、ぜひ一緒に応援上映をいたしましょう。


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