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一人でできるもん

一人で平然と電車に乗れるようになったのは、果たしていつからだっただろうか。

中学、高校と自転車通学だったわたしは、滅多に電車に乗る機会がなかった。
休みの日遊びにでかけるにしても、大抵誰かと連れ立っていたので、一人きりでということはまずなかったのである。

だから、ごくたまに一人で電車に乗ることになると、ものすごーくどきどきしていた。

いま、わたし、一人ですけれど。と思う。

わたしの胸くらいまでしか背丈のない小学生が、大きなランドセルをしょって一人すっくと立っているというのに、まあかっこわるいことこのうえない。

しかし、どこか誇らしいような、そんな気持ちが拭えない。
一人で電車に乗って、一人で目的地に向かってる! 一人で、できる! という、なんとも幼いこの気持ち。

ほんとうになんとも思わずそれができるようになったのは、大学生になってからではないかと思う。
いや、ちょっと嘘。だって今日だって、家を出てバスを使い阪急電車に乗り込んで、十三駅でスムーズに乗り換えできた自分を、どこか誇らしく思ってしまってるんだもの。

絶望的な方向音痴であることも相まって、ちゃんと間違わずに移動できると、どうしようもなくやっぱり嬉しい。

同じく超方向音痴だという江國香織さんの言葉を借りると、
『できた、という原始的なよろこび』。
まったく、それに尽きるのだ。
情けないようなおめでたいような。

そんなこんなで、無事神戸に着けました。
今日は友だちとあそびます。


#エッセイ

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