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非合法ウォーターメロン

『なんか見たことあるスイカがいる……』
 イツを見つけたのは1月の終わりごろ、買い物ついでにたまに寄るアミューズメント施設でのことだった。何台かのクレーンゲーム筐体が並び幾多の景品が陳列される中、大きいアームが付いたタイプの、大きいサイズの景品が投入されるキャッチャーにソイツが収められていたのだ。
 実況プレイがきっかけで大ブレイクしたあのゲームの丸いやつ、どこからみても『あの』スイカ。ついにぬいぐるみになったのか、などとその時は思いつつ、立ち止まり眺めること数秒。もともとが丸いだけのキャラだけに余計な飾りがなくほぼ完全な球形、湾曲した3本アームになんともうまくフィットしそうな形状ではないか……。

 付いた時には100円玉は投入口に吸い込まれ、プレイ時間1分の真剣勝負が始まった。形がシンプルなら下手な小細工は無用、狙うはど真ん中。だいたいのキャッチャーのだいたいのアームは止めた位置のちょっぴり手前に降りてくることを考慮し、1~2センチを目安に少し奥を意識しながらアームの位置を慎重にソイツに合わせる。レバー操作が終わったら今度はボタンを押下、機種によっては途中で止められる場合があるのでこれも必要不必要を判断しつつタイミングも計らねばならない――。
 数十秒の思案ののちに降下したアームはものの見事にスイカをとらえ、上昇・移動のさなかにこぼれることもなく取り出し口に落っことされた。1プレイでのゲットはさていつ以来だろう、この時に限っては設定にも好かれたに違いなかった。しかし。

 りあえず持ち帰って眺めてみる。そういう造形だからと言ってしまえば身もフタもないが、やっぱりカワイイ。と、ここであることに気付く。

『タグがやけに簡素だな……?』

 ライズのぬいぐるみといえば普通は輪っか状に縫い付けられた布タグに台紙が取り付けられ、そこに販売元の会社名や著作権表記があるはずなのだ。だがこのスイカは小指の半分くらいの長さの布タグに『MADE IN CHINA』との表記がされているだけ……。

 ……これはもしや、アカンやつなのでは?

 と思って急ぎXのスイカゲーム公式アカウントをチェックしてみる。すると2023年12月の時点でこんなアナウンスが。

 やってしまった。知らなかったこととはいえ非正規に販売されたものを掴んでしまったのである。同人イラストの無断使用などは見ただけでも概ね察しが付くが、どこから見てもホンモノにしか見えないぬいぐるみには警戒心が薄らいでしまっていた。ぬいぐるみだけでなく、他にも無断で作られたグッズが販売されているようなので、あのスイカやフルーツを見かけたときには公式のものかどうか十分確認した方が良さそうだ……。

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