無関心にならないこと

年始の投稿には少し重い内容だが、年末にFacebookで友人限定投稿したところ、いいねがとても多くつき、友人からのコメントを読んで、年末にいろいろと考えた。そして、新しい年を迎え、「無関心にならないこと」を念頭に置いて今年を過ごそうと思ったので、友人向けの記事に加筆・修正を加えて、noteに掲載する。

ノーベル平和賞を受賞した人権活動家ナディア・ムラドさんの『THE LAST GIRL―イスラム国に囚われた少女の物語』を年末に読み終えた。

この本では、イスラム国に囚われ、性奴隷にされ、逃げ出し、ドイツに行くまでを書いている。

いつも本はサクっと数時間で読むのだけれど、この本は、学生時代のルームメートを思い出し、なかなか読み進めなかった。読み終わるまでに、1か月近くかかってしまった。


(Photo by Radek Homola on Unsplash)

学生時代のルームメートは国を追われ、父親とは、国を出る際の混乱で生き別れた。難民となり、わずか4歳のときに難民キャンプで男たちにレイプされた。アメリカにたどりつくまで、彼女とその家族たちは、本当に大変な思いをしながらもなんとか生き延びた。

彼女と一緒に暮らし始める前に、お姉さんが通訳となり、お母さんと話した。

彼女たち(お母さんもお姉さんたちも国から脱出しアメリカにつくまでに性暴力を受けている)は一家で死のうと悩んだこともあったそうだ。しかし、彼女たちが死んだとて、誰も何とも思わないだろう。国を追われたことを悩んで自死を選べば、国を奪った人たちに追放したのは間違っていなかったことだと思わせるだろう。レイプされたことを苦悩して死ぬことを選んだとしたら、それはレイプした男たちを正当化する。だから、生き抜いて、自分たちの人生を自分たちの手で切り開いていかなければならない。国を奪われても、尊厳を踏みにじられても、顔をあげて生き抜くことが、彼女たちができるもっとも尊い生き方なのだといった。

この本の中で出てくる内容に酷似していて、読みながら、その時のお母さんのくぐもった声や目を赤くして泣きながら英語に通訳してくれたお姉さんを思い出して、全然読み進められなくなった。

ルームメートは、トラウマがひどく、寝ているときに激しくうなされたり、外に出られなくなるときもあるので、セラピー等に通ってはいるが、周囲の理解とサポートが必要で、それをわかったうえでルームメートになってほしいと言われた。

当時は、そもそも難民の人たちがどのような生活を送ってきたのかすら知らなく、彼女と暮らすことがどんなことになるのかもよくわからないまま、学校が私を相手として選んだったらできるだろうと思って、「OK」と気軽に引き受けた。しかし、ルームメートとの暮らしは思いのほか大変だった。

突然泣き出すのは日常茶飯事だったが、夜中に暴れて叫び続けることもよくあり、混乱した彼女を落ち着かせるのに苦労した。当時寮長をしていたこともあり、寮に暮らす学生から「夜中の叫び声がうるさい」というクレームが多発し、その対応をめぐり、寮をどうコントロールするのか悩む日々が続いた。

人は知ることでしか、人に寄り添うことができないと当時の私は思った。私自身が、彼女やその家族が辿った壮絶な人生がよくわからなかったし、なぜ同年代の彼女が違う国に生まれたというだけでそんな目に遭うのかもわからなかったのだ。

だから、寮で彼女の話を聞く会というのを開催した。歴史や地政学の勉強会も開催した。彼女の通うセラピーに寮のメンバーで行った。

これを機に、難民を受け入れるというのは、どういうことなのかということも寮の中で話題となった。そして、難民を受け入れる以外に、アメリカとしてできることは何か、夕食をカフェテリアで食べながら議論になった。性暴力からマイノリティを守るには、それと戦うにはという話もよくした。

当時、ルワンダの虐殺がニュースに出ていたこともあり、たまたま私たちはラッキーにもアメリカにいただけであって、It could be usという話にもなった。

世界平和のために我々ができることは何かということに関してはいつも結論は出なかったけれど、自分の中にある良心を殺さず、周囲にいる人を見殺しにしないで、自分ができることを考えてちょっぴりでいいからやろうという話になった。

私は、東日本大震災の後、宮城の3人の子供たちを一時期家につれてきて面倒みていたことがあるが、見ず知らずの彼らと出会ったバス停に彼らを置き去りにせずうちに連れて帰ったのも、思い返せば、このルームメートとのことがあったからだろう。朝日新聞に子供を3人預かったことが掲載されて、「無責任なボランティア」だとバッシングを受け、mixiやfacebookのタイムラインは荒れた。私はmixiを退会し、facebookは友人限定利用にした。

ムラドさんの『THE LAST GIRL―イスラム国に囚われた少女の物語』を読みながら思い出したルームメートのことから、改めて思う。

自分の身に起きていることではないから、関わったらマイナスになるかもしれないから、何もしない。これが一番まずいことだ。

無関心にならない。そして、自分ができることをやり続ける。

これを大事にして、今年も生きていきたい。

そう思う1年の始まりであった。

Top Image Photo by pixpoetry on Unsplash

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秋山ゆかり

”国際系” note まとめ

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