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【映画】「A GHOST STORY」死後の世界についての、ひとつの美しい答え

死後の世界があったいいなと思っている。死んだら全部終わりなんて耐えられない。輪廻転生もしたくない。この経験と記憶を持ったままものを見たいし、なにかを考え続けたい。忘れたくない。ずっと私でいたい。じゃあ天国があればいいのか、幽霊になりたいのか。あまり望みすぎると叶わない気がするので、その辺りはぼんやりしたままだ。

日々そんなことを考えている私にとって、この映画はひとつの信じてもいいと思える答えを見せてくれた。突然の事故で死んでしまった男が幽霊になって、妻が待つ自宅に戻ってくる。ぴったりとそばにいて、彼女を見守る。でも幽霊は見えない、触れない、話せない。世界が自分がいないまま進行していく虚しさ。悲しみ、怒り。でも、だからこそ分かる決定的なこと。それらを超えて気づくことがある。

何せ主人公である幽霊が話せないので、本当に静かな映画だった。彼の主観で進むストーリーは全然説明されないけれど、どの流れも不思議なほどすんなり理解できて「あぁ、いい映画に出会ったな」と思った。

中盤以降に思ってもみない展開があったけれど、観る側の戸惑いも飲み込むように淡々と進んでいくストーリーは、何が起こっても変わらず心地よかった。もはや人の意思がおよぶ世界を超えて、ただずっとそこにあった大きな法則と事実を眺めている感じ。世界は本当にこうなのかも、と自然に思えてくる。

幽霊になっていろんなものを見て、怒って絶望してどうしようもなくなった彼の心が、一瞬で救われるラストがとても良かった。永遠に続くかと思われた旅のゴールは、ずっと前からすぐそばにあった。運命や生きる幸せなんてそれで十分。あぁきっと、人生が本当にこんな風なら最高に美しいなと思った。何にも似ていない、忘れられない1本に出会った。

©︎2017 Scared Sheetless, LLC.

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