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オリーブの枝を差し出されたら......

*このコンテンツは無料です。(タイトル写真は、ウィキペディアからです。撮影者:Hans Bernhard)

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人間関係がうまくいっているときには仕事でつらいことがあっても日常生活で幸せを感じることができますし、人間関係の悩みがあるときには他のすべてのことがうまくいっていても暗い気持ちから抜けだせません。人間関係は、幸福を左右する最も重要な要因といえるかもしれません。

これほど重要なものなのに、良い人間関係を維持するのは難しいものです。それまでとても良い関係だったのに、ちょっとしたことで仲違いしたり、関係がぎくしゃくしてしまうことがあります。

多くの場合は、ものの見方の違い、意見の違いが原因です。

でも、人はひとりひとり違います。生まれ育った環境が考え方に影響を与えますし、受けた教育や、仕事での体験が異なれば、視点も異なって当然です。読む本や付き合う人によっても考え方が変わります。また、どんなに身近にいても、考え方が100%同じ人はいません。というか、自分自身の考え方も毎日変化しています。25歳のときの私と50歳の私が真剣に討論したら喧嘩になるかもしれません。

それなのに、なぜか私たちは相手に「自分と同じ考え方をする」ことを求めてしまいます。そして、相手が自分と同じ視点を持たないことに過剰に失望し、「もうあの人とは付き合いたくない」と見捨ててしまうことさえあるのです。

私が残念に思うのは、そのほんの僅かな違いにこだわって、それまで築き上げた信頼関係を保つ努力しない人が多いことです。ちょっとした一言について、「私のことをこう思っているにちがいない」と誤解したり、「あの人はこの程度の人だったのだな」と決めつけたりしたままで、黙って人間関係をカットしてしまうのです。「私はこういう体験からこう思うようになった」とか「ここの部分を分かってもらえなかったのが残念だった」と伝えて話しあえば、同感できなくても「なるほど、そういう視点もあったのか」と理解しあえ、そのまま良い関係を継続できたかもしれないのです。なのに、それを一方的にあっさりとゴミ箱に捨てられてしまうのは、本当に悲しいことです。

もっと残念なのは、その関係を修復しようとする努力に応えてくれないことです。

英語に"offer an olive branch"(オリーブの枝を差し出す)という表現があります。意見の相違などで人間関係が険悪になっているときに、一方が「仲直りしましょう」と態度や言葉でアプローチすることです。オリーブは、ギリシャ神話の時代から始まり、キリスト教でも「平和のシンボル」になっています。

「私はこのような体験からこう考えたのです。私の言い方に刺があったとしたら、申し訳ありません」と一人が呼びかけたときに、呼びかけられたほうが「私はあなたの言葉をこのように受け止めて腹を立てていましたが、そういう意味ではなかったのですね。誤解がクリアになって良かったです。これからもよろしく」と返すことができたら、救うことができる人間関係は、きっともっとたくさんあると思うのです。

もちろん、「この人間関係を救いたい」という気持ちは両サイドに必要なのですが。

*自費出版した『どうせなら、楽しく生きよう』が、飛鳥新社から紙媒体として発売されました。

読みやすいように章を入れ替え、新しい章も加わっていますので、電子書籍をお読みいただいた方にも楽しんでいただけると思います。


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