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「美人になりたい」と言うけれど、美人の具体的なイメージが私にはない。

「美人になりたい!」

女の子のほとんどが口にしたり、思っていたりする言葉だろう。いや、男の子だって思うかもしれない。それほどまでに美人とは人を惹きつけるものだからだ。

美人になりたい、はそのまま容姿の優れた人になりたい、に変換できる。

美人になりたい。美人になりたい。

私は、メイクをしながら、服を選びながら、毛穴が開いていることに悩みながら、にきびを邪魔に思いながら、そう言う。

美人になりたい。美人になりたい。美人になりたい。

ねえ、それでさ、どうなりたいの? 私は自分に問うてみる。

だから、美人になりたいって言ってんじゃん。そう言い返しながらまた美人になりたいと続ける。でも、私には決定的なものが欠けていた。

だけどそもそも美人って何なんだ。

美人になりたいと連呼していれば美人になれるのなら、ここで文章を書かずに声を枯らして叫んでおくところだ。しかし、現実は美人になりたいだけじゃ美人にはなれない。

入学試験に合格するために受験勉強が必要なように、美人になるために何らかの努力が必要だ。メイクとか、美容整形とか、ファッションの改善とか。

美人になるとはどういうことだろうか。

石原さとみになること? 吉瀬美智子になること?

まず、美人とはどういう状態であるのか定義しなければならない。容姿が優れていること? うん、それはそうなんだけど、まだ曖昧だ。

だって、石原さとみと吉瀬美智子は美人だけど、それぞれ違う顔をしているでしょう? 業種は同じでも彼女達は違う仕事をしている。当たり前だ、違う人間なのだから。つまり石原さとみか吉瀬美智子になることが美人ってわけじゃない。それは他人の顔を手に入れるだけだ。

ブスでないこと? そもそもブスって何だろう。私のことをブスって言う人もいれば、本気で「綺麗ね」って言う人もいる。見えているのは同じものだけど、人は違う受け取り方をするらしい。ブスも美人も実は定義なんてあやふやなんじゃないか。

でも私は美人になりたいと言う。美人になりたいと思う。

美人になること、それはつまり、自分で自分の容姿に満足することじゃないだろうか。十人が十人振り向く容姿の持ち主でも本人が自分の容姿に不満を持っていれば、それは美人ではないし、逆に言えば、誰にも振り向いてもらえなくても、私が美人と思えば美人なのだ。

そして、私は私の顔に満足していない。なので、不美人である。

先生! 理想の顔の具体的なイメージがありません!

美人とは自分の容姿に自分で満足している状態と定義した。(社会学とかジェンダーとかそういう学問をやると違う答えが出るかもしれないけどとりあえずここはそれで)

私は私の顔に不満がある。不満がある箇所はわかる。でも、それをどう直したいかがまったくわからないのだ。これでは、美容整形をしようにも困ってしまう。

食べ物で例えるならば、トマトとピーマンが嫌いなことはわかっていても、何が食べたいのかはわからないという状態だ。レストランに行って、

「トマトとピーマンが嫌いです。何が食べたいかはわかりません」

なんて言ったらさぞ困惑されることだろう。

「トマトとピーマンが嫌いで、梅干しと豆腐と豚肉が食べたいです」

と言える状態でレストランに行く必要がある。

理想の顔の具体的なイメージが浮かばない。老いたくないとかそういうことは思うけれど、では自分の顔をどうしたいのか、と言われると、出てくるのは「○○じゃないこと」という避けたいものの指定だけだ。アルビノでモデルをしている人を何人かネットで拝見しているけれど、綺麗だと思うのとそうなりたいのとは違う。

何故か私は人の顔を言葉で表現する語彙が少ない。石原さとみと吉瀬美智子は違う顔をしていると知っているのに、その顔の違いを表現できない。えっと、石原さとみは可愛くて、吉瀬美智子は大人のお姉さんで、えっと、えtっと、なんてことになってしまう。

物書きでありながらこの体たらく。泣けてくる。私は弱視なので、余計に人の顔の違いがわからないのかもしれない。でも、これはない。

美人になりたいの。

でもやっぱり美人になりたい。毎朝顔を見て、不満のある箇所を見て、そこを必死に化粧や表情で隠したりしたくない。そんなことのいらない顔になりたい。

不満のある箇所は別に髪の色や瞳の色でもなくて、私はアルビノ以外の部分のどこかに不満を持っている。そしてそれをどうにか隠そうとして大概失敗している。

それを終わらせるためにはどうすればいいかなんてわからない。そもそもその不満のある箇所も含めて自分のことをまるっと愛せたらそれが一番コスパがいいのかもしれない。それはそうなんだけど、そうできないから、私は言うのだ。

美人になりたい、と。

執筆のための資料代にさせていただきます。