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大坂なおみのナイキ契約から読み解く、ブランド・マーケティングの見えざる力学

米国時間4月5日に大坂なおみ選手が、アディダスとのウェア契約を更新せず、新たにナイキと契約するとの発表がなされた。

昨年のUSオープン優勝後注目度が日に日に増している大坂選手だが、昨年同大会後に各報道機関が、今後同選手がアディダスとの契約を年間約10億円程度で更新するのではと報じた。元々大坂選手は長期間アディダスとウェア契約をしており、同契約が切れる2018年末以降も確かにそれほどの契約金であれば更新されるだろうというのが大方の見方だった。


それが驚く事や驚く事、昨日急遽ナイキ社とのウェア契約が発表された。

これは何故なのか?その背景に何があったのか、今回はスポーツマーケティングの観点で、以下項目を中心に分析したい。

1. 大坂なおみのスポンサー契約現状:

大坂選手は、これまで各スポンサー分野において、以下の各社とスポンサード契約を締結していた。
①アディダス(アパレル(ウェア))
②ヨネックス (ラケット)
③日産
④日清
⑤全日空(ANA)
⑥資生堂
⑦WOWOW

各社とのスポンサー契約金額詳細は明らかになっていないが、米国フォーブスや、ブルームバーグ推測によると、それらの合計は年間USD15Mil (約17億円)程度とされていた。

そして、先般報道されていたアディダスの2019年以降の契約更新額がUSD8-9Mil (約10億円)程度と言われていた為、アパレル契約が大坂選手のスポンサード契約に占める割合は相当大きいことがわかる。その為に、アパレル契約のスポンサード契約の「金額的な意味合い」が極めて大きいのが分かるかと思う。

そして更に頭に入れなくてはならないのは、大坂選手のマネージメントをIMGアカデミーという米国でも有数のやり手マネージメント会社(エージェント会社)が担っている事だ。彼らは勿論大坂選手の事を思ったマネージメントをするが、それと同時に利益の最大化も当然考えている。
IMGは所属選手に最高級のスポンサー契約を持ち込み、それら金額を上手に活用し、プロモーション・露出を増加させると共に、その契約で選手のプレイ環境を更に良くすることで各所属選手の価値を最大化させていく事をしている。

上記に鑑みると、大阪選手のアパレル分野における契約先はやはり、「契約金額が最高な所と締結する」という流れが組まれていたと言わざるを得ない。

2. ナイキの現状:

ナイキの近年のスポンサー契約先を見ていると、様々な特徴が見えてくる。
それを大きくまとめると、①セレブより「アスリート」ブランドである事の強調、そして②特に「女性」アスリートのマーケ・スポンサードを注力するという流れがあった。

それは元々大人気だったYeezyシリーズの共同開発者であったカニエ・ウェストとの契約を更改しなかったり(アディダスにより良い条件で引き抜かれる)、トップNFL選手ながら政治的な理由から選手生命を絶たれつつあるコリン・カパニック選手を広告等に活用したり、近年増えている契約女性アスリートを使ったプロモーションの多さ等からも明らかである。

<女性アスリートを活用したナイキ社プロモーション>

そして、つい先日行われた19年2Qの決算報告会では、ナイキのCEOが「2019年は女性アスリートの年」である事を公言し、今後より女性アスリートのプロモーションに注力していく方針が発表された。

更に、ナイキの女性アスリート部門では、長年どのスポーツ選手よりもテニス界に君臨するセリーナ・ウィリアムス、マリア・シャラポワ選手が注目度・実力・人気度が高いと言え、同社にとって「女子テニス」の礎を固める事は極めて重要なタスクだった。

セリーナとシャラポワが衰退傾向にある今となっては、その新星を見つける事が命題となっていた。

3.アディダスの状況

では、アディダスはどういう状況にあったかというと、確かに大坂選手は極めて大事な選手であり、同社アスリートポートフォリオの中でも極めて重要なポジションを今後担うことになり得る選手であった。

しかし、アディダスは近年ナイキとは違い「アスリート」に集中せず、よりソーシャルインパクトのある有名人(例:Yeezy, Pharrel)を活用する事で成功を収めて来たとも言え、ナイキ程一人のアスリートに大金を払える会社ポジションに無かったとも言える。

そして、ここら辺は推測するに過ぎないが、あまりに高額な契約金をナイキが大坂選手に提示した事で、アディダスとしてはその契約金額では同社として勝算無いと判断したのか、大坂選手との契約は断念。

その一方、アディダスはナイキが大坂選手とのスポンサー契約を発表する傍らでそれと同等、いやそれ以上のインパクトとなる可能性のある、大物歌手であるビヨンセとのスポンサー(コラボ)契約をナイキの大坂選手との契約発表と同日である米国時間4月5日に発表。契約金額や、同内容の詳細は明らかになっていないが、これはアディダスの方針に沿ったもので、よりライフウェアラインに注力していく事を明確に示した動きとも読める。

結論:

今回の大坂選手のナイキ社との契約は、単純にナイキの方が大きな金額を提示できたという事もその契約背景にあるのは勿論の事だが、その裏ではアディダスとナイキ夫々の会社方針が密接に絡んでいた事も理解していただきたい。

時折何故このスポーツ選手がこれ程膨大な金額でスポンサー契約を締結できたの!?と疑問に思う時もあるかと思うが、その裏では今回説明したような企業側のコーポレート戦略が密接に絡んでいる可能性有り、純粋なPL的な経済性評価以外の戦略が含まれている可能性がある事を理解できると、欧米で頻発する大型スポンサー契約の要因等が分かってくるのではないだろうか。

尚、アパレル・シューズ業界では、マーケ金額が総セールス金額の10%程度になる事を見越して通常スポンサー契約を行っている。
よって、このロジックに当てはめ、仮に大坂選手が年間10億円程度の契約をナイキと締結しているとすると、彼女関連のアパレル・シューズの市場価値は年間100億円(!!)程度と類推されるからなおさら驚きである!

PS: 今年米国プロバスケリーグ(NBA)にドラフト一位で指名されることが有望視される超スーパールーキーであるザイオン・ウィリアムス選手は、これまでの常識を大きく覆し、新人ながら複数年契約で総額USD100Mil (110億円)以上になるのではされている。。。。。



家徳
スポヲタ株式会社
https://sportajapan.com/
Email: contact@sportajapan.com


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