人前で泣けない
実は、人前で泣けない人間です。
完全にひとりなら普通に泣けるんですが。
ひとりじゃないときは、何かブレーキがかかってる風で、頭がぼわっと痛くなる感じになります。
小さい頃、泣く場面で涙を堪えると、親が泣かなくて偉いって褒めてくれました。
それがいけなかったんでしょうか。
素直に泣ける人を見ると、とても羨ましい。
とてもお世話になった恩師の訃報を受け、まだ頭の中が痺れたような感覚のまま、新幹線で東京に向かいました。
前日まで元気だった恩師はまだ五十代で早すぎる死でした。
その死が受け入れられず、夢の中にいるようで、頭はずっと痺れたような感覚です。
この痺れたようなぼわっと痛い感じは、泣くと治るような気もしました。でも新幹線の中はそこそこ混んでいて、マスクをしても目は隠せないし、こういうシチュエーションで泣けるタイプではありません。
東京は何処へ行っても人が多いです。斎場はもちろん、移動中も人ばかり、トイレの個室でさえ外に人の気配を感じてしまう。泣ける所がないのです。
泣けないことは、冷たいことなのかしら。
泣けなくても、悲しいのに。すごく。
頭はずっと痺れたように鈍く痛いし、胸も苦しいし、息は吸えないし、食欲も全然ないし、全身状態は史上最悪で、そのくらい悲しいのです。
この感じは、以前友人が亡くなったときと似ています。
あの時も泣けませんでした。
ずっと泣けずにいたのに、10日くらい経ってからのことでした。ひとりで家事をしてた時に、不意にそれはやってきました。友人との思い出が後から後から襲ってきて、自然に涙が溢れてきて、その時初めて泣いたのでした。
普通に洗濯物を干している時だから、油断してたのかもしれません。
何なんですかね。自分でも不思議です。
今の悲しみも、また数日後、油断してる時に一気にやってくるのかもしれません。
そしてそのパターンこそ、私が深く悲しんでいる証拠であったりするのです。
さようなら、先生。
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