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大毎地下劇場

私はなんといまだにシネコンで映画を観たことがないのです。映画ファンといいながらねえ。
息子たちをシネコンまで送迎することはよくあるんですが、自分は入ったことありません。
一番近いシネコンまで車で1時間近くかかります。
そこで息子たちが映画を観てる間に、イオンやらヨーカドーやらで食料品の買い出しをします。
なんと私の住んでる地区には、イオンもヨーカドーもないんですよ(!)。
だから結構私も楽しみにしてたりします。でかいショッピングセンター巡り。

とまあ、今はこんなふうに映画館から遠ざかってしまった私ですが、中学・高校・大学と、映画館には足繁く通っていました。
でも学生にとって映画料金ってバカになりません。
だから名画座は学生映画ファンにとってパラダイスでした。

大阪に生まれ育った私にとって、名画座と言えば「大毎地下劇場」。
西梅田の堂島地下センターのいっちばん南(だったと思う…最近記憶力に自信なし)のつきあたりに
「←大毎地下劇場はこちら」
という小さな表示があって、その表示通りに左へ曲がるともうパラダイスよ(笑)。
初めて行くと、わかりにくい場所でしたね。
薄暗いロビーの入口からは、いろんな名画たちのパンフレットやポスターが見えていました。

最初に大毎地下に行ったのは、中学2年生の時です。
夏休みにビートルズ映画の4本立てをやってたので、友達と2人で行ってきました。
すごい人でしたよ。座れないので立ち見。
「ビートルズがやってくるヤア!ヤア!ヤア!(A Hard Day's Night)」
「HELP!4人はアイドル」
「イエローサブマリン」
「レット・イット・ビー」

ビートルズファンの私はすごく楽しかったですけど、友達はファンではなかったので、4本を立ち見するのはかなり苦行だったようです。
「レット・イット・ビー」になると、途中で何度も出ようとして私の方を見たけど、私が没頭して観ていたので出そびれてしまったらしいです(笑)。
この年以降、大毎地下は毎年夏休みになるとこれをやってたような気がしますが。

これをきっかけに、大毎へは何度も行くようになりました。
わたしの実家は地下鉄四つ橋線沿線だったので、乗換えなしに行けるという便利さもうれしかったです。
ビートルズの次に行ったのは、確か
「スティング」
「華麗なるギャツビー」
の2本立てでした。
ちょうどロバート・レッドフォードが大ブレイクしている時でしたね。

私はレッドフォードのファンではなかったのですが、ファンの友達に誘われて行くことに。
これがまた、ビートルズ以上の大混雑!
人波に押されて通路に座り込むことになったのですが、一旦座るともう動けない!
そのくらいぎっしりの人だったんです。
しかしこの日、私は映画ファンとして最悪の事態に遭遇したのでした。
普段なら上映中は場内に入ったりしないのですが、あまりの混雑に「席を確保しなくちゃ」とでも思ったのでしょうか。状況はもう覚えてません。
上映中にもかかわらず、扉を開けて入ったのです。
…その時、「スティング」のラストシーンでした。
「スティング」のラストなんていきなり観てどーする!
おかげで次の上映で「スティング」を観ても面白さ半減でした。

高校生になり、大学生になっても、大毎地下へはよく行きました。
入口で「大毎地下ニュース」という通信ももらいましたね。
次の上映作品の紹介なんかが載ってました。
確か「友の会」みたいなのもあったような…うーん、はっきりとは覚えてません。
いろんな名画を低料金で観ることができて、ほんとうに有難い映画館でした。

大毎で映画を観た帰りに、堂島地下センターの「インディアン」というカレー専門店でカレーを食べるのが定番コースでした。
ここはカウンターだけのお店で、メニューもカレーとハヤシライスくらい。
当時500円だったと思います。
座るとすぐにカレーが出てきて、さっさと食べてさっさと出る、実に回転のいいお店でした。
ここのカレーは辛くて有名らしいのですが、私は全然辛いと思わなかったなあ。
若かったんだね。
今では甘口カレーでも食べられないくらい老化しました。
カレーは胃もたれしちゃうのよ(哀)。

そして今。
大毎地下だけでなく、ミナミの戎橋劇場もなくなりました。
インディアンのあった堂島地下センターは、おしゃれでピカピカのショッピングモールに変わりました。
私は映画館に行くこともなくなり、子供をシネコンに送迎してます。
今は満席だと入れてくれないんで、立ち見なんかなくなりました。
事前にネットで予約して、当日ケータイを機械にかざすだけでOK。
みんな座って観ることができます。
便利だなあ。

でも今でも、大毎地下が恋しくてたまらない時があります。
不便だし、立ち見で疲れたりしたのにね。



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