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【読書記録】インテグラル理論(1周目)

この読書録は、おそらくこれからこの本を見舞うだろう『あらゆる理論や実践を、既存の社会的な枠組みの中で成功するために消費していく風潮』や『安直に、発達することは一概に良しとする見方』に対して、


そう焦らずに、ゆっくり腰を据えて、目の前の出来事と向き合ってみませんか?
その中で、この本で語られることは、どんな風に活かしていけるでしょうねぇ

というスタンスで書き進めていくものです。

一度読み終えてみて、何か自分の中に大きな変容が起こったように感じ、こんな前書きから始めてみました。

それだけ、ただ一度読んだだけでは理解が難しく、かつ日々の生活の実践の中で思い返すことの大事さを感じたのだと思います。

さて、ここからはこの『インテグラル理論』を読み進める中で気づいたこと等を綴っていこうと思います。

先日、発行された『インテグラル理論』は、2002年にトランスビュー社から発行された『万物の理論』を復刊したものです。2冊はいずれもケン・ウィルバー氏の『A Theory of Everything』を日本語訳したもののため、今回は2冊を並べながら訳の違いにも目を向けながら楽しむことにしました。


特に印象に残っているものは、人の意識の発達と、世界の見方についてのフレームワークとなる四象限(私:I、私たち:We、それ:It、それら:Its)についての記述です。

人の意識の発達については、スパイラル・ダイナミクス(一巻き毎に色が変わるソフトクリーム🍦のように描かれる)に特に惹かれ、各段階毎に表現される意識状態や発達課題等の記述は、まさにティール組織の発達段階の大元に当たるのだと感じられました。

また、世界の見方についての四象限については、ホラクラシーあるいはランゲージ・オブ・スペーシズの源流でもあるのだな、ということを再確認できたように思います。



読み進めていく中で気づくことは、3つ。

1、様々な学術領域で発見されてきた世界の見方、物事の捉え方に対する用語が頻出するという事実。

2、ウィルバー氏はそれら様々な世界の見方、物事の捉え方を多少なりと自身なりの定義を設定しなおした上で、自身の理論に組み込み、活用しなおしているという構成。

3、以上を以って、ウィルバー氏は、
人、組織、社会…
物体、身体、心、魂、スピリット…
自己、文化、自然…
それらすべてを説明しうる統合的(インテグラルな)理論を作り上げ、世に投げかけてみようとしたのではなかろうか、という疑問。

この3つです。


インテグラル理論の帯には、『「ティール組織」のベースにもなった未来型パラダイムの入門書』とあります。


多少なりとも、この「ティール組織」の探求をしてきた自分にとっても、あまりにも多様な領域の用語が活用されていて、網羅しきるのも大変です。
中には、世間一般でなんとなく活用されている用語が意外な意味で使われている場面も目にすることがあるかもしれません。


科学史家トーマス・クーンが提唱した『パラダイム

生物学者フォン・ベルタランフィらが打ち出した『一般システム理論

同じく生物学者であり、進化論者であるリチャード・ドーキンスの提案した『ミーム(模倣子:本書では「段階」とも)

科学ジャーナリストのアーサー・ケストラーが発案した『ホロン(亜全体:ある位相の全体であり、また別の位相において部分でもある構成要素)


その他、物理学、心理学、哲学、宗教における知見諸々。等等。


およそ、一読しただけですべての記述について理解することは難しいように思われます。


監訳者、訳者のお二人ともが何度も読み直してみることや、一度に理解しなくても良いと言及していたり、読書会等の場を通して学び合うことを推奨する本を、僕自身は他に見たことがありません。

「では、この難解な本はどうして読まなければいけないのでしょう?」
「いいえ、別に読まなくても良いかもしれません。」

「この本を読めば、ビジネスやその他の専門領域でも直ちに役立てることができるのでしょうか?」
「おそらく、できません。」

「でも、ティール組織の理解には役立ちますよね?」
「そもそも、ティール組織は企業や団体運営における唯一の正解の形ではありません。」


この読書録を書き進めれば書き進めるほど、この『インテグラル理論』という本が今年のこのタイミングで出版されたことに、どんな意味が込められているのか気になるところです。
(仮説はあっても、それもまた一つの考え方)


ただ、この本を読むことがわかりやすい、目に見えやすい成功に直結することはありませんが、もし今後1年、3年、5年、10年と読み継がれていけば、じわじわ効いてくるような、そんな本ではなかろうか、と感じます。

少なくとも、この本を読んだ人は、社会全体や、もしくは周囲の人、組織、そして自分自身について見える景色が変わる、ということは考えられます。


あいにく自分の表現に限界はあるのですが、この難解で、この本の知識だけでは直ちに何かに役立つこともおそらく無く、しかしティール組織という組織運営のあり方に影響を与えたこのフレームワークは、何か今の自分たちにとって切実なモノを訴えかけているのではないか、と思われるのです。


まだまだ読み込みは浅く、何度も読み返し、読み返すたびに周辺の知識も広がっていくのでしょうが…とても興味深い本に巡り会うことができました。

本を世に出すということの意義深さを、初めて実感させてくださった 日本能率協会マネジメントセンター柏原 里美さんと、大胆かつ読み進めやすい訳で再びウィルバー氏の言葉を届けてくださった門林奨さんと監訳の加藤洋平さんに感謝を。

また、7〜8月くらいで アクティブ・ブック・ダイアローグ - Active Book Dialogue- もしてみたいなぁ。やはり、自分一人だけで深めるのではなく、関心のある人たちと言葉をかわしてみたいと思うのです。



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