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キナリ杯を読んで

キナリ杯の存在をさっき知った。受賞作を読んで、めちゃめちゃ笑ったし、感動したし、心が潤った。

私も応募したいと思って、数年前の話を残したいと思う。奈美さんに届いたらうれしい!

●レッドクリフを見て出陣した話●

今から12年前。日曜日に友達と「レッドクリフ」の映画を観た。
人気映画で夜の上映時間になり、終わったのは23時を過ぎていた。友達と別れ、
いやー、かっこよかった、三国志面白かった!と一人で電車で映画の余韻に浸っていた。
明日も仕事だし、駅から家までタクシーで帰ろうとした。

いつもの出口が夜間で閉鎖され、引き戻し地下から地上へ移動し、エスカレーターに乗った。
うろうろしてたので、周りには誰もいなかった。

いやー、金城武かっこいいなーと思っていたら、背後に気配を感じた。
あれ、誰もいないよね?と振り返ると、
おっさんがエスカレーターの一段下にいた。存在感なくてまじで気付かなかった。
視線は合わなかったけど、めちゃめちゃ挙動不審だった。ジャケットあたりをしきりに触っている。

え、痴漢しようとしていたのか?なんだ?
とにかくこいつあやしいぞ。

レッドクリフを見ていた私はなぜか強気だった。
「何しているんですか?」とストレートに聞いた。

おっさんはゴニョゴニョいいながら、エスカレーターを登り始めた。
あやしい。あいつはなにかを隠している。

もう私の中で、旗が上がってしまった。
出陣だ!

エスカレーターをあがると改札があり、さらにエスカレーターがあり地上にでる。
逃すまい。決して逃すまい。

改札には夜間のため駅員さんはいない。
やつは走って地上にあがるエスカレーターに向かった。

ほお、逃げるのか。待つのじゃ。

元陸上部の私は走った!当時私は花柄のグリーンのワンピを着ていた。ストッキングに黒のパンプス。走れぬ。

エスカレーターの下に着くと、やつは右側を猛ダッシュ。
これは他の民の力を借りるしかない。

エスカレーターの下から叫んだ。

「その黒いジャケットの男を捕まえてください!!」

何人かの民が振り返る。やつは駆け上がる。
もう少しで地上につく瞬間。
勇気ある民がやつを捕まえてくれた。
褒美を与えねば。

すぐに近くの交番に行き、不審者がいると説明。
正直触られていた感覚はないのだけれど、そういえばスカートが引っ張られた気がしたので盗撮犯じゃないかと言った。

おまわりさんが無線で
「えー、こちら●●よくあるエスカレーターの盗撮のようですー」

現場に戻ると、勇気ある民が犯人をはがいじめにしてくれており、その周りに20人ほどの野次馬が。
パトカーも3台ほどきていた。

とりあえず勇気ある民にお礼を言う。
おまわりさんに胸ポケットを見てくれというと、デジカメを没収。
とりあえず署で話を聞こうということになり、人生初のパトカーへ。

犯人と勇気ある民も証言人ということで別のパトカーで移動。

そのころになるとちょっと冷静になり、レッドクリフから警察24時モードになってきた。
小さい頃から見てきた警察24時。すでに0時を回っていたが、アドレナリン全開だった。

署につくと、調書が始まった。
パソコンを持った若い警察官に
私の名前や住所、今日何をしていたことなどを聞かれ、黙々と打ち込んでていた。

その頃実家暮らしだったため、両親に連絡すると警察24時が大好きな両親。すぐに来た。
そして勇気ある民の調書が終わり、私の父から褒美というかタクシー代が渡された。
父から聞いた話ではラガーマンで、何度かこういうことに出くわしていて調書も慣れていたらしい!

1時間ほど経つと、外から「すみませんでしたー!!!!」という雄叫びが聞こえた。
どうやら犯人が自白したらしい。馬鹿め。

すると眼光鋭い刑事さんが部屋にやってきて、何度か質問をした。最後にやっちまってくださいと言うと、任せとけといった表情で犯人のいる部屋に戻った。惚れてしまう。

どのような状況で撮影したのかを知りたかったらしく、署の階段に行き、私が階段に立ち、おまわりさんが一段下に立ち、デジカメをスカートの下に差し込む瞬間を、別のおまわりさんが撮影というなぞの撮影会が始まった。
おまわりさんって大変。

もう午前3時を過ぎて、疲れも出てきて帰りたくなってきたが、駅があいたら現場検証があると言われて、始発まで署にいることに。

お腹も空いてきて、よくテレビで見るカツ丼、あれってもらえるんですか?と聞くと、
あ、実費でしたら出前出来ますよと言われた。
え、テレビのは刑事さんのおごりなのか!

外も明るくなり、ぼーっとしていると、
おまわりさんが3枚ほど写真を持ってきた。
あの、これはですね、あなたが撮られた写真になります。ご確認くださいと言われて見ると、
ピンクのパンツに、ベージュのストッキングをはいた大きなお尻が映っていた。
最初は下から撮り、最後はワンピースをめくって撮っていた。
おい、お前ずいぶん大胆なことしてたんだな!

おまわりさんから、
調書にその写真を貼りますと言われ、えーっと思ったが、一筆、これは私が撮られた写真です。と書いた。
そして、犯人が厳しく罰せられてほしいともお願いした。

始発の時間になり、おまわりさんと現場となった駅のエスカレーターへ。
たぶんここらへんで、スカートを引っ張られました。パチリ。

ではあとはお任せくださいと言われ、朝6時過ぎに帰宅した。
両親はすでに先に帰っていた。

あと1時間で出社かと思ったが、
なぜか達成感でいっぱいだった。
レッドクリフを見ていなかったら、
犯人に何も言わず家に帰っていたと思う。
影響力ってすごい。めっちゃ疲れた。

最後に署を出るとき、犯人逮捕にご協力ありがとうございます。ただ、反撃される場合もありますのですぐに110番してくださいとアドバイスをもらった。
そうだ、私には守ってくれる兵隊はいないのだから無理しちゃいけない。と強く思った。
でも力をくれてありがとう、レッドクリフ!

#キナリ杯





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