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ワークショップデザインの枠組みモデルと手順モデル

ワークショップをデザインするためのモデルやフレームワークは、さまざまな実践者が提案しており、参考になるものが多数あります。

ワークショップデザインの定義の解説記事でも紹介した通り、ワークショップデザインの本質は「経験のプロセスデザイン」であるため、活動を時系列に配置するためのガイドになっているものが多いです。

ちょっと変わったものだと、上田信行先生が提唱している「イタリアンミールモデル」なども、ワークショップの活動の時系列を、イタリア料理のフルコースに喩えて設計するプロセスモデルですね。僕が大学院修士課程だった約10年前、このモデルは周辺で流行っていたように思います。懐かしい!

ワークショップデザインにおいて「デザインモデル」が使用されることは、森玲奈さんの2008年の研究によっても詳細に明らかにされています。

「全体性のたまご」によるデザインモデル

そんななか、ちょっと違った切り口でデザインを捉え直すさせてくれるのが、慶應義塾大学の井庭崇教授による「全体性のたまご」をモチーフにしたデザインモデルです。詳細は論文『「全体性のたまご」によるデザイン技法-全体から分化させるワークショップとプレゼンテーションのつくりかた』をご覧ください。

イタリアンミールモデルをはじめとする時系列モデルの難点は、パーツとパーツの間に接合ががなくなり、プログラムとしての「全体性」が消失されてしまうリスクがある点です。初心者のデザインにありがちですが、「どこかで見たようなワーク」の数々がコピペのように並べられていて、全体としての実践のエッセンスがよくわからなくなってしまうパターンですね。パワーポイント形式の資料作りにこだわっていたら、全体を通してなにが言いたいプレゼンなのかよくわかなくなってきた..みたいな現象に近いです。

ここで紹介されている「全体性のたまご」のモデルも、最終的には活動の時系列をデザインするのですが、そこにいたるまでに「全体性」を意識しながら設計できる点で、面白いやり方だと思いました。論文の本文で、背景にある思想とともに手順が解説がされているので、是非読んでみてください。

ミミクリデザインが運営する「WORKSHOP DESIGN ACADEMIA(WDA)」の動画コンテンツでも、この方法については安斎なりの解説・考察をしています。よければご覧ください。

枠組みモデルと手順モデル

このようなワークショップデザインのモデルを活用したり作成したりする際には、そのモデルが何をモデル化したものなのかを認識することが重要です。このあたりは授業設計の研究のほうが随分進んでいて、たとえば稲垣ほか(2006)ではデザインする対象の人工物の構造を示した「枠組みモデル」と、デザインの作業プロセスを定式化した「手順モデル」に区別して整理しています。

イタリアンミールモデルや、[導入][知る活動][創る活動][まとめ]のような時系列モデルは、どちらかというと、ワークショップのプログラムの構造を示した「枠組みモデル」です。必ずしもデザインする際に前菜である「アンティパスト」から考えたり、[導入]から考えるわけではありません。(むしろ順番的には、まずメインから考えるのが一般的です)

他方で「全体性のたまご」のモデルは、どちらかというとワークショップデザインの作業の手順と考え方を示した「手順モデル」になっています。たまごを描きながらデザインすることで、全体性を失われないように意識しながらデザイン作業を進めることができる点がこのモデルの利点であり、最終的にできあがったワークショップの構造がたまご状であること、実はそんなに意味はありません。いわゆる"デザイン思考"なども「手順モデル」ですね。

今回の記事では、デザインモデルを参照する際には、活用するモデルが「枠組み」を示しているのか「手順」を示しているのかをきちんと区別しましょう、というメッセージに留めておきますが、また機会をみつけてミミクリデザインが考えるワークショップデザインの枠組みと手順も再定義してみたいと思います。



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株式会社ミミクリデザインCEO/東京大学大学院情報学環特任助教/学習を起点とした組織イノベーション論/創造性を引き出すワークショップデザイン・ファシリテーション論/著書『協創の場のデザイン』『ワークショップデザイン論』ほか http://mimicrydesign.co.jp/
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