見出し画像

"ワークショップスピリット"として、何を伝えるか?という問い

ミミクリデザインのファシリテーター育成の大型プログラム「Workshop Spirit -“ワークショップの魂”を探る」のDAY3が終了しました。次世代を担うワークショップ実践者が自身の"ワークショップスピリット"を研ぎ澄ますための半年間の学習プログラムと銘打っており、ワークショップの先駆者である中野民夫先生、人材開発・組織開発を専門とする中原淳先生、そして安斎の3名が講師を担当しています。スケジュールは以下。

【DAY1】キックオフワークショップ
【DAY2】ワークショップのスピリットを体感する(中野民夫)
【DAY3】創造性からワークショップのスピリットを探る(安斎勇樹)
【DAY4】組織開発からワークショップのスピリットを探る(中原淳)
【DAY5】ワークショップのスピリットと自分
【DAY6】ワークショップスピリットの開花-実践報告会

5月19日に実施されたDAY2の中野民夫さんのプログラムが凄まじく、まさに民夫さんのファシリテーターとしての核にあるスピリットに触れさせていただく経験で、久しぶりに実践者としても研究者としても揺さぶられました。

この企画構想が立ち上がった当初から「DAY3(自分のパート)では何を話そう?」と考えていたのですが、DAY2の中野民夫さんの覚悟の実践を受けて、次に自分がこのバトンを引き継ぐのか..!とプレッシャーを感じながら、1ヶ月間準備をしていました。

講師陣の中では自分は"ペーペー"なので、ある意味「気楽にやろう」と割り切っていたものの、2008年頃から10年以上ワークショップの研究と実践だけにそれ以外を投げ打って没頭し続けてきた自信と誇りのようなものも、当然あります。それを、DAY3として与えられた「6時間」程度の時間を使って、"ワークショップスピリット"としてどのように伝えるか?この問いと向き合うことが、ワークショップに関わる者として、内省が促されまくる素晴らしい学習機会でした。

上記の問いに安斎が出した結論は、「この約10年のあいだに安斎が経験したこと、出会った師たち、実践したこと、研究したこと、その結果いま捉えているワークショップの核となる思想はどこにあるのか、そのすべてをぶつけるしかない!」と、"全部乗せ"以外に方法が思いつきませんでした笑。

前半では、幼少期の"ワークショップの目覚め"笑、(あまり認めたくないが無視できない)父親の影響から始まり、大学生の頃に始めた中学生向けの連続ワークショップの実践で見えた景色、自分が最も影響を受けた師匠である山内祐平先生との出会い、大学院への進学、先輩である森玲奈さんが導いてくれた"ワークショップの世界"の拡がり、実践のエキスパートである上田信行先生、中西紹一さんとの出会い、岡田猛先生から教わった現場を精緻に捉える眼、水越伸先生の実践思想から受けた影響、中原淳先生からの無茶振りで鍛えられた実践感覚などなど..ここには書ききれないほどの、恵まれた出会いによって自分の実践論が構成されていることを省察しつつ、これまでのライフストーリーを共有させていただきました。

途中では、安斎のキャリアの折り返し地点のアウトプットにあたる書籍『ワークショップデザイン論』(2013)を徹底的に批判するディスカッションなども挟んだのですが、これまた心地よい時間でした。(中野民夫さんからも裏話的本音フィードバックをいただけたのは大きな収穫でした!)

後半は、ワークショップにおける創造性を、場に参加する「個人」そして場で構成される「グループ」そして参加者が日常で依拠する「活動システム」の3層のレベルの「変化」として捉え直しながら、ピアジェ、デューイ、ヴィゴツキー、エンゲストローム、ベイトソンなどの学習理論を援用しながら整理し、安斎が大切にしてきたワークショップの本質的特徴について言語化を試みました。これは博士論文でも出来なかったことで、今回のために暗黙知と理論を往復し、脳に汗をかきながら言葉をつむぎました。(簡単に要約できない&したくないので、別の機会にちゃんとまとめます)

こんなディープな一人語りに需要はあるのだろうか..と心配だったのですが、思いのほかご好評いただけて、一安心しています。終わったときの感想はとにかく以下に尽きました笑。

まだプログラム自体は全6回のうち3回目が終わったにすぎませんが、講師として登壇する機会がいただけたことは、ワークショップ人生の約10年の節目として、とても素晴らしい内省の機会でした。

他方で、すでに内容を振り返ると「もっとこうすればよかったかも」「こういう要素も含めればよかった」と、次なる内省が始まっています。きっと、1年後に登壇するとしたら、また違った内容になると思います。

「自分の"ワークショップスピリット"を伝えるとしたら、何を伝えたいか?6時間をどのように使うか?」

という問いは、今後この企画がなかったとしても、ファシリテーターとしてまた折を見て考え続けたい、内省を深めてくれる問いだと思いました。

以下、参考記事です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?