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組織の諸問題(戦略・チーム・個人)にアプローチする組織開発プロジェクトの設計

株式会社テクムズの求心力向上を目的とした新たなコーポレートアイデンティティ構築プロジェクト実績・事例ページに公開しました。

製造業や小売業向けに、人工知能(AI)を活用したソリューションを提供しているベンチャー企業、株式会社テクムズから依頼を受け、ワークショップを活用したコーポレートアイデンティティ(CI)の構築を行いました。組織の視点と個人の視点を往復することで、一人ひとりにとって納得感のあるCIが生成されました。※本プロジェクトは、株式会社テクムズからCI構築のコーディネートを委託された株式会社アイデンティティからの依頼で実施しました。

これはミミクリデザインの得意パターンで、組織の関係者たちを集めてワークショップを実施し、経営トップの意向を踏まえながらも多角的な視点から対話を重ね、組織のビジョンを半ボトムアップに生成していきました。またアウトプットを出すことだけに主眼をおかずに、そのプロセスにおいて、さまざまなワーク設計とファシリテーションの工夫によって、組織課題や業務を「自分ごと」として捉えられるように主体性と内発的動機を育み、またチームの深い対話を促すことで、組織の求心力を高める組織開発のプロジェクトとして推し進めることができました。

組織の諸問題の階層:戦略・チーム・個人

中村(2015)によれば、組織における諸問題は(1)戦略的な諸問題、(2)技術構造的な諸問題、(3)人材マネジメントの諸問題、(4)ヒューマンプロセスの諸問題、の4つに分類できるといいます。このうちワークショップ・ファシリテーションを専門とするミミクリデザインが得意とするのは(1)と(4)、つまり組織のソフト面の問題に対する定性的なアプローチです。

このうちヒューマンプロセスの問題には「チームのコミュニケーション」の問題と「個人のモチベーション」の問題が混在していることを考慮して階層的に整理すると、組織におけるソフト面の諸問題は、以下のように整理が可能です。

この各層のそれぞれが高度に両立・相互作用している状態が良い組織の状態であるとしたときに、これはある意味チェックリスト的にも機能します。どこに問題が起きているかによって、問題の解釈と処方箋が変わってくるからです。

A. 理念構築型のプロジェクト

上述したテクムズの事例は、個人の内発的動機を喚起させ、組織課題や業務を自分ごと化していきながら、組織の理念を半ボトムアップ的に構築した事例といえます。

このパターンのプロジェクトは、組織サイズにもよりますが、完全にボトムアップでやるのではなくトップのビジョンを方針として踏まえたり、たたき台にしながらも、完全にトップダウンにもせず、メンバーの対話によって理念を生成していくプロセスを丁寧に設計することが重要です。私たちミミクリデザインのスローガンである「創造性の土壌を耕す」という言葉も、複数回のワークショップによって半ボトムアップに構築しました。

B. 理念浸透型のプロジェクト

他方で、理念やビジョンなど、組織の戦略レベルははっきりしているが、それが内部に浸透しておらず、チームの中で戦略や理念に関わるコミュニケーションが生まれていなかったり、個人の業務のモチベーションや納得感にうまく結びついていない場合は、理念についてチームで対話的に解釈する機会を作り、個人の業務や役割レベルに落とし込み、納得感を醸成するアプローチが必要です。いわゆる理念浸透型のプロジェクトです。

ミミクリデザインでお手伝いさせていただいた資生堂の理念浸透のプロジェクトは、まさにこのアプローチにあたります。

理念浸透は単発のワークショップのみだけで支援することは難しく、日常業務におけるコミュニケーションや観察学習、業務リフレクションなどによっても起こりますから、中長期的に浸透させていくための業務上の仕組みを作ったり、ワークショップを繰り返し実施したりするなど、粘り強くやっていく必要があります。

C. チームの対話支援 / ファシリテーター育成

AやBのように「理念」を直接的に経由しなくても、組織のヒューマンプロセスの問題(チーム、個人の問題)にアプローチすることは可能です。例えばチームコミュニケーションが不活発で、チーム内や部署間、あるいは階層間の関係性が良好ではない場合は、いくつか対処の仕方があります。

たとえば何らかの定性調査やサーベイによって問題を可視化して、それについて対話するホールシステム・アプローチ型(ワールドカフェ、OSTなど)のワークショップの機会を作ることで、問題の解釈を深めながら未来に向けた施策を練っていく方法です。組織開発の王道的なパターンですね。

他にも、ミミクリデザインが得意とするもうひとつのパターンは、組織内ファシリテーターを育成することによって、内側からコミュニケーションを活性化していくことも効果的です。たとえば弊社で実施した社会福祉法人みねやま福祉会の組織開発プロジェクトでは、組織の中間管理職をファシリテーターとして育成しながら、管理職層と現場のコラボレーションを促進し、組織の信頼関係を醸成していきました。

D. 個人のリフレクション支援 / 動機付け

個人の内発的動機や業務に対する納得度に直接的にアプローチすることも可能です。

もっともライトなやり方は、キャリア研修のような建てつけで、個人のキャリアリフレクション(内省)を支援することで、業務や役割に対する意味付けや納得度を引き出す支援をすることです。トレノケートと共同開発した50歳以上のシニア向けのキャリアプランワークショップ「2冊目の本を作る」は、その代表的な事例です。

また、ミミクリデザインでは個人の内なる「衝動」を何よりも大切にしていますが、企業組織においては個々人の衝動に「蓋」がされてしまっている場合も少なくありません。ワークショップの問いと遊びのデザインの力で日常を揺さぶり、個人の衝動を引き出すファシリテーションをすることも有効です。

組織開発に限らず、商品開発プロジェクトのキックオフフェーズなどでチームメンバーひとりひとりの「衝動」を耕すアプローチをしておくと、効果的にプロジェクトを進めることができます。

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以上のように、組織のソフト面の諸問題を戦略・チーム・個人と階層的にとらえることで、組織開発のプロセス設計やファシリテーションの方法は変わってきます。また、中村(2015)の分類でいうところの(2)技術構造的な諸問題、(3)人材マネジメントの諸問題とあわせて、仕組みもセットで構築していくことも必要です。

組織開発の方法論については、現在ミミクリデザインでも研究と議論を現在進行形で進めているとことですので、近い将来にもう少し体系化した論を公開し、研究会なども開催していくつもりです。

今後のアナウンスを希望される方は、ミミクリデザインのウェブサイトから「無料入門書(pdf)」をダウンロードいただくと、今後の最新情報やイベント開催情報などがメルマガで配信されますので、ぜひご登録ください。

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