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「遊び」の分類と組み合わせ

遊びとは何か?という根源的な問いの探求と、遊びをカテゴライズしようという分類の試みは切り離せず、古くからさまざまな理論家たちが議論を重ねてきました。

分類の視点やラベルはさまざまで、たとえばピアジェは発達の観点から「感覚・運動的な遊び」「機能的遊び」「象徴的遊び」「社会的・ルール遊び」といった具合に分類していますし、他にもビューラーは心理的な側面から「感覚・機能遊び」「虚構遊び」「構成遊び」「受容遊び」と分類していたりと、どうやら"遊び"のなかには異なる性質を持った活動群が内包されていることは間違いなさそうですが、その「分け方」については、まだ合意された完璧な整理はなされておらず、多様な考え方があります。

カイヨワの遊びの4類型

他にもさまざまな分類方法がありますが、ミミクリデザインでは、ロジェ・カイヨワの分類をいまでも中心的に参照しています。

カイヨワは、上記の2軸のマトリクスで遊びを分類し、遊びを「アゴン」「アレア」「ミミクリ」「イリンクス」の4パターンに類型化をしました。

アゴン(Agon):競争を伴う遊び ex:サッカー、チェスなど
アレア(Alea):運や賭けを伴う遊び ex:じゃんけん、サイコロ、賭け、など
ミミクリ(Mimicry):真似・模倣を伴う遊び ex:ごっこ、空想、仮装、演劇など
イリンクス(Ilinx):目眩やスリルを伴う遊び ex:ブランコ、スキ、サーカスなど

現代の遊びには、この分類で説明がつかないものも多く、軸やカテゴリのアップデートの必要性も感じますが、それでもなお、現代でも十分に説明力のあるシンプルな分類だと感じています。何を隠そう、社名の「ミミクリ」は、カイヨワの類型に由来しています。

カイヨワが指摘している通り、既存の遊びはこの4つの「どれか」に排他的に分けられるわけではなく、結びついていたり、別のレイヤーで共存していたりする場合があります。たとえば「仮装大賞」のような取り組みは、「ミミクリ」遊びでありながら、スコアを競い合う「アゴン」的な要素も含まれる、といった具合にです。

実際にワークショップや学習環境をデザインするときに「遊び」を発明するときも、この「遊びの要素を組み合わせる」という感覚は大いに役立ちます。

遊びの要素を組み合わせて遊びを再発明する

これについて、ゲームデザイナーでセガの『Sonic The Hedgehog』の生みの親である安原広和さんの以下の講演記事が参考になります。

本講演では、遊びの要素の組み合わせが持っているパワーについて、滑り台を事例に説明されていてとてもわかりやすいので、以下に引用します。

たとえば、以下を比較すると左のすべり台よりかは、右のすべり台の方が多少魅力的にみえます。これは、すべり台という遊具に「ゾウの鼻の上を滑る」というミミクリ的な見立ての要素が入っていることで、説明がされています。

ここからさらに「イリンクス(めまい)」の要素を入れてよりスリリングなすべり台に進化させ、さらに「アレア(偶然)」の要素で「いつ水が飛んでくるかわからない面白さ」を加え、最後に「アゴン(競争)」の要素を入れることで子どもたちが競い合えるダイナミックなすべり台が完成しています。

安原さんは、この遊びの4要素の観点からパラメータを変えていく考え方をゲームデザインの基本的な考え方として説明されています。

ワークショップデザインは基本的に「ミミクリ」的な見立て遊びが原型となることが多いですが、ワークショップにおいてもそこに他の要素を加えることで遊びの面白さを拡張することは原理的に可能なはずです。ゲームとはまた違った組み合わせのパターンがあるはずなので、また別の機会にワークショップの視点からまとめてみたいと思います。


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