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「問いのデザイン」による課題のリフレーミング

地域や組織のイノベーションプロジェクトにおける「問いのデザイン」の全体像を大きく2つのレベルに分けると、(1)プロジェクトデザイン段階における課題に対するまなざしのリフレーミング、(2)プロジェクトを推進する個別の「ワークショップ」のデザインにおける問いの制約と構成のデザイン、のレベルに大きく分けられます。

このうちプロジェクト設計時の「課題のリフレーミング」の段階で失敗してしまうと、その後どんなにワークショップデザインに知恵を絞っても、成果はあがりません。

しかしながら、複雑な課題を解決するためのプロジェクトデザインは、その考え方や影響する変数自体がとても複雑で、「この手順で設計すればうまくいく」というノウハウが定式化しにくい領域です。

ただし、ある程度のパターン化はすることができるのではないかと考えています。

たとえば、商品開発のプロジェクトにおいて、アイデアを生み出すために「課題に対するまなざしをリフレーミングする」と言っても、感覚的には「A.当事者の近視眼的な視座を遠くに拡げる」パターンと、「B.強固な固定観念をずらして揺さぶる」パターンがあるように思います。課題によっては、その合わせ技、というパターンもありえます。

たとえば、よく事例として紹介している2009年に実施したKDDI研究所に対するケータイサービスデザインのワークショップを例に紹介しましょう。

このときは、KDDI研究所のエンジニアの方々が、自身が専門としている「技術」に縛られてしまい、生活者起点の発想ができなくなっている(A.近視眼)という課題と、「ケータイ=(情報や人間との)通信の手段である」という暗黙の前提(B.固定観念)の複合的な課題状況でした。

解説をわかりやすくするために、やや乱暴に、初期段階の当事者のまなざしを以下のように規定しましょう。

技術や目先のアイデアに近視眼的になっていることを踏まえると、「A.当事者の近視眼的な視座を遠くに拡げる」パターンで、リフレーミングを試みることが必要です。場合によっては、「そもそも"ケータイ"とは?」と、端末やサービスの存在意義から問い直すような視点も有効です。

プロジェクトデザイン次第では、この「遠くに広げた問い」を題材に、円座になってじっくりと対話型のワークショップをするのも、有効にワークする可能性があります。しかしながら、2009年のこの事例では、1回のワークショップである程度の創発的なアイデアを生成したかったため、もう少しインパクトのある仕掛けが必要でした。

そこで、「ケータイ=(情報や人間との)通信の手段である」という暗黙の前提に対して、「B.強固な固定観念をずらして揺さぶる」パターンでリフレーミングを試みました。

このときは創発における「矛盾」の効果に着目していた時期ということもあって、ストレートに固定観念を相反させ、「つながらないケータイとは?(=通信を遮断することで価値が生まれるサービスとは?)」という形で課題を再設定して、ワークショップの設計に落とし込みました。

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以上のように、既有のまなざしはどのようなものであり、それをどのようにリフレーミングする必要があるかによって、プロジェクトデザインレベルの問いのデザインの在り方は変わります。

領域を商品開発に絞らずに、もう少しブレイクダウンすると、思いつくだけでも約10パターンくらい具体的なパターンが整理できそうなのですが、それはまた別の機会に紹介したいと思います。

ツイッターでも情報発信をしています。


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安斎勇樹

株式会社ミミクリデザインCEO/東京大学大学院情報学環特任助教/学習を起点とした組織イノベーション論/創造性を引き出すワークショップデザイン・ファシリテーション論/著書『協創の場のデザイン』『ワークショップデザイン論』ほか http://mimicrydesign.co.jp/

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