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出口戦略の重要性

最近、ビーチクリーン活動が拡大してきました。海洋ごみに関心を持つ方が増え、回収量を増やせることはとても重要なことですが、急速に拡大しているビーチクリーンの流れに個人的には危機感を抱いています。今回は私の危機感とそれを解決する一提案を書いていきます。

目次

  1. ビーチクリーン活動

  2. 行政の負担

  3. 処分場

  4. 出口戦略の重要性

  5. まとめ

1. ビーチクリーン活動

海洋プラごみは世界で1億5000万トン存在していて、新たに年間800万トン以上の海洋プラごみが流出しています。流出量>回収量というのが現状なので、このまま行くと2050年までには魚の重量よりもごみの重量の方が多くなるという予測が出ています。
そんな中、回収量を誰でも増やすことができるビーチクリーン活動は海洋ごみ問題に対してとても有効です。
気軽なビーチクリーン活動は、参加者が無理の無い範囲でできる活動として日本全国で増えています。
ビーチクリーン活動には普通の海岸清掃だけではなく、地域独特の色や工夫が入っている場合があるので、是非、様々なアプローチをチェックしてみてください。

2. 行政の負担

回収量が多くなって、海洋ごみが減って、ビーチクリーンは良いことしかないと思うかもしれません。
海洋ごみが溜まっている海岸が綺麗になって、満足するかもしれませんが、その後の運搬・処理の一連の流れがどうなっているかを考えてみます。
ビーチクリーンは海岸に溜まった海洋ごみを袋に入れて終わりではありません。その袋を運んで、処理しなくてはいけません。
この時点で海ごみは陸ごみ扱いになるため、適切な処理をするためには、行政の協力と理解が必要になってきます。
一度、行政側の視点に立って考えてみると、普段の業務がある中で新しく海洋ごみに関わる業務をする余裕がないことも理解しなくてはいけません。
行政側とよく話し合って、各関係者に無理な負担が無い形で、継続してビーチクリーンができる仕組み作りを一緒に考えることが重要だと思っています。


3. 処分場

回収した海洋ごみがどのように処理されるのかも多くの方に知っていただきたいと思います。
多くの場合は自治体の処分場に行きます。処理方法は自治体により様々で焼却による中間処理をしたり、直接埋め立て場にいくこともあります。この処分場のキャパシティは無制限ではありません。
環境省のデータによると日本の最終処分場の残余年数は約21.4年です(引用:環境省一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和元年度)について)。
日本は処分場を新たに作れるような土地がほとんどないため、この残余年数をなるべく引き伸ばすような流れになっています。
その土地で発生した陸ごみは、その土地を管轄している自治体が処理を行わなくていけないため、責任が曖昧な海洋ごみをわざわざ回収して、自分たちの処分場を圧迫したくないという事情が、行政がこの問題に積極的に取り組みたくない一つの要因になっています。


4. 出口戦略の重要性

ここで提案したいのが出口戦略を整えることです。出口戦略とは回収した海洋ごみの処分場に搬入する割合を減らすことを意味します。具体的には、回収した海洋ごみ全体の中でリサイクル・アップサイクルの割合を増やすことです。
しかしここに一番の問題があります。なぜ今まで回収した海洋ごみのリサイクル・アップサイクル量が増えなかったか。理由は大きく分けて5つあります。

  1.  技術的な問題:海洋ごみは陸ごみと違って海水と汚染物質が付着します。海水の塩分が中間処理・リサイクル系の多くの機械を壊します。また、プラスチックには海中のDDTやPCBといった汚染物質が付着するため、これを取り除かない限り、通常のプラ素材のように使うことができません。そしてこれらを100%取り除くことは、大規模設備があっても難しいそうです。リサイクル・アップサイクルできるプラとして代表的なのは、PP(ポリプロピレン)やPE(ポリエチレン)が挙げられます。簡単な処理として重曹洗いと天日干しができれば、口に入れるもの以外なら使うことができると思っています。

  2. 量的な問題:クリアンの活動として出口戦略を整えるために、高松や大阪のリサイクル業者の方とお会いした際、回収した海ごみを素材としての買取を実現するにはどんな障害があるかを話し合ったことがあります。大きな問題としては、分別と量の担保です。例えば、各地区のビーチクリーン活動をやっている団体・個人がこれらを分別回収できたとして、一回で回収できる量はたかが知れており、量が足りません。ミニマムの単位としては2トン以上で損益分岐点を越えるためには、一回で業者まで運べる量は多いに越したことはありません。量を確保するためには、ビーチクリーン団体・個人と連携強化し、それぞれが分別回収ルールの理解と教育実施、保管・運搬の管理まで行うことができれば、この問題はクリアすると思っています。

  3. コスト的な問題:大きな問題としてコストがあります。これらを実行するには回収・分別・保管・運搬・管理コストが発生します。一度見積もりを出した時に大幅な赤字にしかならなかったのと量の確保の約束ができなかったため、現状のクリアンの財政面・連携面で見送ったことがあります。しかし、持続的な回収活動にするためには必要な社会の仕組みだと考えており、なんとかイニシャルコストの赤字補填ができ、将来的に黒字化できる新しいビジネスモデルを私は常日頃悩み、考えています。

  4. 最終出口問題:リサイクル・アップサイクル量を増やすことは、物質質量的に考えるとごみが減っているわけではなく、処分場に行き着くまでのスパンを長くしたりライフサイクルを延ばすことになります。これはとても重要だと考えていますが、この問題を解決する上では、これでもまだ足りないと思っています。できれば海洋ごみ由来の魅力的な商品を開発して、外国へ販売することが理想だと思っています。国全体として、外国へ商品販売し、外貨を取れる事業にすることで、財政的に活動基盤を強化することができます。また、人口・廃棄物量に対して土地が余っている国が最終処分を受け持つということができれば、日本の処分場を圧迫することなく、持続的に回収量を増やすことができます。バーゼル条約の縛りを打破するには、商品化が鍵を握っていると思っています。

  5. 役者不足問題:この海洋ごみ問題を解決するためには、より分野の垣根を超えた多くの方々に参画していただく必要があります。特に出口戦略・販売戦略の連携体制を整えることが優先順位高いと思っています。ここが整って、ビーチクリーン活動は"成り金"になると思っています。誰でもできるビーチクリーン活動は、今は"歩"の活動の集合体かもしれません。しかし、環境が整えばこれほど強力な一手はなく、"歩"ではなく"金"の集合体として強力なムーブメントを作り、海洋ごみ問題解決という大義名分の下、アンサンブルに王手一直線で進んでいきたいと思っています。


5. まとめ

最後まで読んでいただきありがとうございました。
海洋ごみ問題解決へのアプローチ方法は色々とあっていいと思います。
あくまで一提案として読んでいただけたら幸いです。ただ、その中で私たちが目指している協働や分野の垣根を越えた大きな共同体がこの記事で少しでも伝わったのであれば嬉しいです。

私たちはまだまだ未熟なスタートアップNPOです。
足りないものだらけですが、本当にこの問題を解決したいという熱い気持ちがあります。
この記事を読んでいただいた方の中で目指すべき方向が同じで、私たちにジョインしたいという気持ちを持った方が現れたらとても嬉しく思います。

https://cleanoceanensemble.com

参画方法にはオンライン・オフライン・マンスリーサポーターと様々な関わり方があるので、自分に合ったやり方を見つけ、一緒に海洋ごみゼロの社会を実現しましょう!



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