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イスキア島を散策していたら、海の天然温泉と噴気孔を見つける

イスキア島は温泉リゾートとして有名で、今回はガラガラだった島も観光シーズンは多くの客で賑わうそうだ。特に、ドイツからの観光客がとりわけ多いそうで、今回の旅でも英語は通じなくともドイツ語が通じるという場面に何度か遭遇した。それだけ、現地の人はドイツ人旅行者とのやりとりに慣れているのだろう。

そんなイスキア島に誰でも無料では入れる海の天然温泉が一つだけあると聞いた時、心が躍った。その無料開放されている唯一の天然温泉が「Baia di Sorgeto Ischia」。イスキア港から最寄りのバス停までは、バスで3、40分ほど。そのあとに長い坂道と、これまた長い階段を下って海まで降りれば、そこは温泉だ。よっぽど天候の悪い日でなければ、既に温泉を楽しむ人で賑わっているはずだ。

Baia di Sorgeto Ischia、階段の上から撮影した海の温泉を楽しむ人々

「Baia di Sorgeto Ischia」は無料開放されている天然温泉だけあって、脱衣所も何もない。ただ適当な場所で服を脱いで、水着か下着になって入るだけだ。また、場所によって水温差も激しい。温泉としての適度な水の温度がある場所は、その時の潮汐や風の状態で変わっていくので、最適な入浴スポットを自分で探さなければならない。

今回、私たちは観光オフシーズンに訪れたため、入浴中の人は15人前後だった。しかし、肌寒い日に訪れたこともあって、一度適度な水の温度の場所を見つけたら長時間離れなくなる人も多くて、最初は自分の場所を確保するのに少々難儀した。しかも、常連さんらしき年配のイタリア人男性たちが楽しそうにおしゃべりしたり、歌ったりしている中をそっと「お邪魔します」とばかりに入っていくときの緊張感。ここに何か暗黙のルールがあったらどうしようと気を揉みながらも、なんとか自分のスペースを見つけた。

こうしてゆっくりと海の温泉に浸かってみると、なんと気持ちの良いことだろう。コロナ禍で2年以上も日本に帰国していないこともあって、温泉の気持ち良さと共に望郷の念にかられて、切ない感動が湧き上がってくる。
そして、目の前に広がる果てしない大きさの海の片隅で、火山の熱のおかげでこうやって人間達が温かみを享受できていることを思うと、自然の力に圧倒される。
ただただ押し寄せてくる感動の中、ゆっくりと流れてくる波がもたらしてくれる温かい水の中に私は身を委ねた。


私たちは結局、「Baia di Sorgeto Ischia」に二日連続で通うことになった。日中に街や山を散策して身体をたくさん動かし、夕方に疲れた脚を温泉で癒し、そのあと町のバールで冷たいアペロで一杯やるというコースにハマってしまったのだ。さすがに二日連続で通ったあとは、イスキア島の他の場所も見たいから温泉は我慢しようということになったのだけど。

だけど、なんとまた見つけてしまったのだ。海の温泉を。それが表題にある、散策中にたまたま見つけてしまった温泉と噴気孔だ。

その日は、「Baia di Sorgeto Ischia」から少しだけ離れたサンタンジェロという町までバスで行き、そこから有名なビーチ「Spiaggia dei Maronti」に向かって歩いていた。途中に突如現れたのが「Fumarole」という看板だ。調べるまで知らなかったこの単語、「噴気孔」という意味らしい。何があるのか気になって、看板の矢印が指す方向に向かってみる。

Le fumarole dei Maronti

少し歩くと、そこは砂浜があり隅に並んでいた大きな岩から、煙がもくもくと上がっている。看板には「とても熱い場所があるから、触るな注意!」というようなことが書かれてある。

恐る恐る近づきながら比較的煙の少ない岩を触ると、温かい。その岩は4、50度ぐらいだったと思う。手のひら全体で触ると、冷えた手がゆっくりとじんわり温かくなっていく。砂浜からも煙が出ている。砂を触ると、ここもまた温かい。思わず、砂の上に座り込んで、冷えた腰を温めた。とても気持ちが良い。

煙が吹き出す岩

さらに近くには、温泉が海に流れ出る場所もあった。誰もいないものの、ここにもまた海の天然温泉があったのだ。私はとにかくその湯に触れてみたくて、早速靴下を脱ぎ、ズボンをまくりあげて、足首あたりまでをお湯につけてみた。やはりここも場所によって水温差が激しいものの、適度な水温の場所に足をつけると素晴らしい足湯体験になった。

Le fumarole dei Maronti

きっと観光オフシーズンだから人で賑わっていないのだろうけど、まるで自分がこの温泉スポットを発見したかのような気分になって、楽しくなった。実際、私が見たイスキア島の観光マップでは、この場所のことはどこにも触れられていなかったのだ。足湯と砂風呂がそこまで人を感動させるとは思われていないからだろうか。
でも、私は「Baia di Sorgeto Ischia」で海の温泉に浸かったとき以上に、楽しい気分になっていた。

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