記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

【ドラマ分析】Netflixドラマ『御手洗家、炎上する』エピソード1

軽い気持ちで鑑賞したものの、エピソード1が秀逸!
テレビドラマに比べてCMが入らなく、物語に没入しやすいのもあるが……
サクサクと場面が切り替わり、視聴者を飽きさせることもない。

調べたところ、エピソード1は55分でシーン(柱が変わるごとにカウント)は約80本。構成を紐解いてみることにした。

※ この記事を書いた時点では、エピソード5まで鑑賞済み


物語について

“三幕構成”に則って使えそうな部分を抜き出してみた。
※全て私の感覚で割り振ったので、ご容赦ください。

■オープニングイメージ(0:00)

火事現場。炎に燃え上がる御手洗家。
主人公・御手洗杏子とその両親の御手洗治、御手洗皐月の姿。
皐月、土下座をして「ごめんなさい」と言う。

■セットアップ(1:30〜)

火事発生から13年後の村田家。
夢から目を醒ます杏子と杏子の妹・村田柚子の寝顔。
冒頭の火事現場で、4人の家族写真が映し出されるため柚子=杏子の妹だと分かる。
★火事発生後、両親は離婚したため杏子と柚子は母・皐月の姓「村田」に変わる。

洗面台で自己紹介の練習をする杏子。
★鏡に向かって「はじめまして。マザーズサービスから家事代行に伺いました。山内しずかです」という杏子。その後「山内しずかです」と3回復唱するため、この名前は偽名だとわかる。

2:30
杏子にとって、この物語の最大の敵・御手洗真希子(元:渡真希子)が登場。

3:40
御手洗家に家事代行として訪問する杏子、真希子と出逢う。
真希子、杏子にさまざまなルールを伝える。
・今日の仕事次第で契約を決める
・2階には上がらないでほしい
・当たり前だが、家の物を取ったら容赦しない
★真希子の白いマフラーにシミがある事に気付く杏子。シミを見つけた真希子だが、特に杏子に何も言わずにそのまま置いておく。

6:52
N。火事が原因で杏子の両親は離婚。
父と再婚したのが、母のママ友でシングルマザーだった真希子だと説明。
真希子には2人の息子・希一と真二がいる。  

10:00
御手洗家。早速掃除を始める杏子。テーブル下に母・皐月が昔持っていたバレッタを見つける杏子。杏子、そのバレッタをこっそり盗む。
★先ほど真希子に「家の物を盗んだら〜」と忠告されていたため、視聴者としては早くもそのルールを破る杏子に惹きつけられる。心配になる。

10:20
御手洗家の2階に人影。
バレッタを盗む杏子を上から見ている。

10:40
みたらい病院、会議室。
看護師長の市原さんに杏子の履歴書を渡す真希子。
★とくに説明もなく履歴書を渡すことから、2人の間柄が垣間見える。おそらく「この人を調べろ」という意味。この時、市原さんは真希子の味方に見える。(つまり、杏子の敵)

■第一ターニングポイント(11:00〜)

11:00
杏子、御手洗家のハウスキーパーとして採用される。
★真希子は杏子に口頭で指示しなかったが、白のマフラーのシミが綺麗になっていた。おそらくこれは、静かなる「真希子からのテスト」だった。

11:50
ホッとした様子で御手洗家を出る杏子。
N。杏子が「山内しずか」ではなく、「村田杏子」だということが分かる。
★N「私の本当の名前は村田杏子。〜〜〜私たちはこの女にたくさんのものを奪われてきた。〜〜〜私が全てを取り戻す」  

■きっかけ(12:00)

12:00 回想
13年前の御手洗家。御手洗家が炎で燃え上がる様子を見て、微笑む真希子。
★通常の構成は、「きっかけ」→「第一ターニングポイント」の順番だが、こういう構成もあるだなぁ。うまく組み込むと効果的。

13:00
オープニング(ゾクゾクしていいよね。私、好き)

14:00
村田家。柚子と杏子の会話の中で、杏子の真の目的(この物語のゴールライン)が分かる。
★あの火事はお母さんのせいではない、真希子の放火が原因だと思っている杏子。その証拠を見つけ出して、母に「火事はあなたのせいではない」と伝えたい。

■サブプロット(15:00)

★皐月の現在と、杏子と希一の物語が始まる。
(メインは引き続き杏子VS真希子の構図。料理で真希子の心も掴む作戦へと出る杏子)

19:00
病院の診察室。皐月が「全生活史健忘症」で娘たちとの思い出も忘れていると分かる。
★医者から病名を伝えられた杏子は、病名を復唱。台詞は基本オウム返しは良しとされていないが、一回聞いただけでは頭に入ってこない単語や難しいものは、復唱させるテクニックなのかと思った。

24:35
2階に上がる杏子。汚部屋を見つける。

25:32
男性が登場し、汚部屋から追い出される杏子。

26:20
クレアの家。杏子の味方、クレア登場。
クレアはこの事件の真相を暴く、杏子の味方。
★ちなみに山内しずかは、クレアの本名。

・杏子は、御手洗家の2階で遭遇した男性が真希子の次男の真ニでは?と予想。帝明大の赤本や散乱したゲーム機の様子からそう思った。
火事発生前の御手洗家のシーンで杏子が帰宅した際に、御手洗家に遊びに来ていた真二がゲームをしているシーンがやたら強調されているなと思ったらこれは伏線だった。
・事件の証拠となりそうなニットカーディガンが2階の真希子の衣装部屋にあるのでは?と、話す2人。

■お楽しみ(26:20〜)

26:20
真二(本当は希一)を飼い慣らすと決めた杏子。
杏子がどのような手を使って、真二を飼い慣らすのか?が見どころ。
実際には唐揚げ、親子丼などの夕飯でまずは胃袋を掴む作戦。
親子丼を真二が完食したタイミングで、杏子は雑談を挟む。
サッカーの話、天窓を見つけて閃いた星座の話。
星座の名前を失念した杏子にそれは「ペテルギウス。赤色超巨星」だという真二。この発言で杏子はハッとする。部屋の中に閉じこもっていたのは、真二ではなく希一だったと。
「ペテルギウス。赤色超巨星」。杏子が小学生の頃、希一と星座を見た際に発していたことと全く一緒だった。
変わり果ててしまった希一にショックを受ける杏子。

34:56
帝明大・外観〜校内。仲間から誘われた飲み会を断る真二の姿。
★ここで真二がようやく初登場。真面目な性格になった真二と、父親の病院を継ぐようなニュアンスの会話が繰り広げられ、杏子が以前この兄弟に抱いたていた印象が真逆になっていたとわかる。

■迫り来る悪い奴ら(37:00、41:00頃)

37:00、41:00頃
希一、PCで「山内しずか」と検索。全くヒットしないことに疑問を抱く。

■ミッドポイント(42:00頃)

42:00頃
今日も希一の部屋の前にご飯を置いていた杏子。
杏子が立ち去ろうと思ったところ、希一にエプロンを掴んで引き止められる杏子。そしてついに杏子は希一から「ごちそうさま」という一言をもらう。
杏子は希一を「飼い慣らすことができた」と錯覚する。
(と、確信するが……これも見せかけの「絶好調」)

■迫り来る悪い奴ら・全てを失って(47:30)

47:30
衣装部屋で何かを見つめて不気味に微笑む真希子。

杏子、真希子からハウスキーパーのクビ宣告を受ける。
2階に杏子が着用していたエプロンのボタンが落ちていたのだ。
それは、希一が杏子を捕まえて「ごちそうさま」と言った際に、わざとボタンを掴んで落としたもの。
検索しても杏子の情報がヒットしないこと、サッカー好きなどなぜか自分に詳しいことを疑問に思った希一は、杏子をはめたのだ。

ベッドに寝転ぶ希一、杏子がクビになって微笑んでいる。

<つづく>

エピソード1から学んだテクニック

1.登場人物の紹介について

テレビドラマでは大体冒頭から10分程の間に主要人物が登場、
または存在を匂わせるケースが多いが、今回もほぼ当てはまっていた。
ただ真希子の息子2人に関しては、ミスリードを使っていたため、
希一、そして弟の真二の登場は例外。

2.セリフで「オウム返し」が必ずしもダメではない

よく脚本スクールで「セリフのおうむ返しは避けた方がいい」という話を聞くが、効果的な場面であればむしろ使った方がいいのかもしれないと感じた。

今回のケース
医者「全生活史健忘症ですね」
杏子「全生活史健忘症……?」
ちなみに診察室で母の容態について医者から病名を告げられたシーンだが、
医者のセリフは病院の外観の映像が映し出されているから、余計にくどくない。

あと「ペテルギウス。赤色超巨星。〜〜〜」も繰り返し使われる。確かに1回だけだと何を言っているのか、全然分からなかった。

3.意味のあるミスリードか?

よくドラマや小説ではテクニックとしてミスリードが使われる。視聴者としては期待を裏切られた、超えられたといった感覚になり、ドラマがより一層面白いと感じるようになるが、ミスリードの役目はそれだけではないと感じた。

今回は主人公が昔懇意にしていた希一が落ちぶれていたと知って、より精神的なダメージを受けるという意味が含まれていた。実際、昔希一からもらった方位磁石を大切に保管していた。

4.小道具

白いマフラー
杏子が御手洗家の家事代行として採用されるかどうかの初日。
真希子は白いマフラーに付いていたシミについて
杏子に指示を出さなくても彼女が対応するか?というテストを課していた。

杏子のエプロンのボタン
引きこもりの希一が急に真希子と話し始めるのは変なので、
静かに親に「山内しずか」を首にさせるための策。
ボタントリックはよく韓ドラでも使われる印象。

ニットカーディガン
このアイテムは真希子が御手洗家を放火をしたかどうかの証拠にもなるアイテムなので、特にエピソード1だけに登場するものではないが念の為記しておく。

書いていて思ったけど「火事」「家事」(もしかしたら「舵」も?)と、言葉をかけたのかな。以上。

大好物のパイナップルの詰め合わせを 食べて幸せに浸りたい。