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先生も、人間だから

診察に行った。
毎回のように話すことをノートに書きだし、今日は何だけは最低限話そうと準備をして、週に一度の通院に向かった。
病院に着いて保険証を受付に出すと、「すみません、今日は先生は不在なんです」と言われた。

日程を間違えてしまったのかと、診察券に書かれた予約日時に目を落としてみたものの、やっぱり間違えていなかった。
「お薬だけならもう一人の医師が出せますので」と言われ、言われるがままに別の医師の診察を受けた。
簡単に心を開けないままかけられた言葉に二言くらい言葉を返して、数秒のうちに私の診察は終了した。

本当に薬だけになってしまったと思いながらそのまま薬局に向かうと、同じく薬だけと言われて診察を受けたお爺さんがいて、「今日は不発だったなぁ」と声を掛けられた。
「そうですねぇ」と静かに笑って、やりきれない思いに蓋をした。
週に一度の診察を足がかりになんとか歩ける自分を保つつもりでいたせいで、その期待が突如外れてしまったことのショックは大きかった。

だけど考えてみれば、先生も"医師"という仕事をしている人間で、人である以上突発的に何かが起こることだってある。
会社勤めをしていた頃の私が担当業務を誰かに託して有給休暇を取得するのとそんなに、変わらない。
仕事を誰かにお願いして不在にすることは、誰にだってある。
私のそんな軽い気持ちで休んでいた頃とは違っても、身内の不幸だとか自身の体調不良だとか、突発的にどうしても外せない急用だとか、人である以上そういったものは必ず存在する。

誰かの背景を理解することは、優しさに繋がる重要なことだ。
自分に余裕がないとそこへの理解がおざなりになるけれど、思い通りに進まなくても、一度立ち止まってそこに目を向けられる自分でありたい。

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