山岡雄己/どぶ板経営塾

1965年松山市生まれ。年商10~100億円企業の経営参謀,戦略コンサルタント,中小企…

山岡雄己/どぶ板経営塾

1965年松山市生まれ。年商10~100億円企業の経営参謀,戦略コンサルタント,中小企業診断士。京都大学文学部卒,同経営管理大学院修了(MBA)。サントリー宣伝部を経て,2002年独立。趣味は水泳,ロードバイク,ジョギング,瞑想,下手な短歌詠み。法政大学経営大学院 兼任講師。

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  • 赤裸々系,回顧録

    若かりし頃の蹉跌の記録,独白,つぶやき…。経営者時代の私的回顧録です。

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    noteクリエイターのみなさまの記事の中から,個人的趣味で気に入ったものを掲載させていただいています。

  • 起業家精神:Entrepreneurship

    起業におけるコーゼーションからエフェクチュエーションへのトランジッションについて,12回シリーズでまとめています。

最近の記事

#90 哲学で未来を構想する

自分自身の倫理観に耳を傾ける 第二次世界大戦下のドイツで,兵站部門の責任者がユダヤ人の強制収容所への輸送効率を最優先した結果ホロコーストに拍車がかかった,という戦争犯罪がおこりました。この犯罪はアイヒマン裁判として世界の注目を浴びることとなり,政治だけでなく心理学などの学術分野でも物議をかもしました。このように組織の論理だけを追求する姿勢は,深刻な倫理的問題を引き起こしかねない危険性を孕んでいます。 モノ余りと言われる現代社会の消費者は,自分の価値観に合致しかつ社会的な

    • #89 モノ余りの時代の経営戦略

      モノ余りの時代,何が求められているのか 現代社会は人間生活が豊かになり「モノ余りの時代」に突入しています。世界的なベストセラーになったH.ロスリングの「ファクトフルネス」では,飲む水にも苦労するような極貧国が減少し,アジアを中心にある程度モノに恵まれた中間層の国が増加していることが示されています。かつての消費社会は物質的な欠乏を解消することに重点が置かれていましたが,現代では物質的な充足に伴って,モノではない新たな価値を求める生活スタイルへと変化しています。欠乏から引き起

      • #88 経営戦略で「自分探し」に陥らない

        自分探しの旅 自己啓発の文脈で「自分探し」の旅が取り上げられることがあります。自分の本当にやりたいことは何だろう,自分の人生にはどんな意味があるのだろう,と自問自答するのは青年期にありがちな悩みです。また最近では,会社という組織から離れた中高年においても,自分の人生の意味を見失って鬱々と「自分探し」を始める,というようなこともあるようです。 それとは逆に過去に向かって,自分の幼少期を過ごした場所や自分の祖先やルーツを探す旅もあります。これは運命や宿命を信じる傾向の強い人が

        • #87 思い煩うより行動を:センスメイキング理論

          私たちに求められる知恵 冒頭の引用は「変えられないものを受け入れる平静と,変えることができるものを変える勇気と,その違いを見分ける知恵を与えたまえ」という有名な祈りの言葉です。まさしく私たちは,思い煩わなくてもよいものに振り回されて,どれだけ幸福感を失っているのでしょうか。極端な例で言えば,地球に小惑星が衝突したらどうしようと考えるのは,天が落ちてきたらどうしようと考えるのと同じで,まさに杞憂に他なりません。 それでは,第3次世界大戦が勃発して核兵器が使われたらどうなるだ

        #90 哲学で未来を構想する

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          12本
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        記事

          #86 忙しさにかまけてはいけない

          ~忙しい人達が,やめても問題ないことをいかに多くしているかは驚くほどである~(P. ドラッカー) 心を亡くすと書いて「忙しい」と読む,とはよく言われることです。ポジティブ心理学者であるミハイ・チクセントミハイ博士が定義する「フロー体験」とは,時が経つのも忘れてしまうほど,目の前のチャレンジングな作業に没頭している状態のことを言います。このように集中力の高まった精神状態において,人間は高い創造性を発揮し幸福感を得ることができます。 そうであるならば,忙しければいいのかという

          #86 忙しさにかまけてはいけない

          #85 資金調達は第一関門? Entrepreneurship #5

          Twitterまんがの「社長と魔法のランプ」とのコラボ企画の第5弾,今回は経営者なら一度は経験する「お金の苦労」について,思うところを書いておきたいと思います。 カネで苦労してこそ一人前? 私が独立した時にお世話になった経営者の方に言われたことは,「金のことで血のションベンが出るくらいの経験をせんと一人前にはなれない」ということでした。血尿が出るということは腎不全だから死んでしまうのでは,と話半分に聞いていたところ,実際に自分もこれを経験することになりました。それは資金繰

          #85 資金調達は第一関門? Entrepreneurship #5

          #84 経営にシナリオを取り入れる Entrepreneurship #4

          Twitterまんがの「社長と魔法のランプ」とのコラボ企画の第4弾,今回は起業時点でも役に立つ「シナリオ・プランニング」の考え方について,簡単に書いておきたいと思います。 ビジネスはギャンブルではない ビジネスシーンでは,幸運の女神は前髪しかない,というメタファーをよく耳にします。これは,チャンスをつかむ機会は一瞬のことであり機を見て敏に行動しなければならない,という戒めです。とは言うものの,考えもなしに美味しい話に飛びついて痛い目にあった経営者の話などは,枚挙にいとまが

          #84 経営にシナリオを取り入れる Entrepreneurship #4

          #83 顧客は誰? Entrepreneurship #3

          Twitterまんがの「社長と魔法のランプ」とのコラボ企画の第3弾,今回は「顧客は誰なのか?」について書きたいと思います。 シーズ発想とニーズ発想 マーケティング計画を立案する際によく言われるのが,シーズ発想とニーズ発想の違いです。シーズとは種のことで売り手側の売りたいものから発想するのに対して,ニーズ発想は顧客の望むものを察して適時的確に提供するということです。近代が始まる前のモノの無かった時代から,産業革命を出発点としてマーケティング・コンセプトはプロダクト・アウト(

          #83 顧客は誰? Entrepreneurship #3

          #82 Logos, Ethos, Pathos 周囲を巻き込めるか:Entrepreneurship #2

          Twitterまんがの「社長と魔法のランプ」とのコラボ企画の第2弾ということで,今回は「周囲を巻き込めるか」ということについて,思うところを書き留めておきます。 自分の描いた絵を現実にできるか 経営者は創業時から自分の夢を語ります。ソフトバンクの孫正義氏は,創業のころ「私は豆腐屋になりたい,一兆(丁)二兆(丁)と数えるような」というようなことを言って周囲を驚かせたと言います。自分の mission を明確にして実現させたい絵を描く,つまりできるかどうかを考える前に,やりた

          #82 Logos, Ethos, Pathos 周囲を巻き込めるか:Entrepreneurship #2

          #81 Wannabeでは起業できないということ:Entrepreneurship #1

          ワナビーでは起業できない Twitterまんがの「社長と魔法のランプ」とのコラボ企画ということで,これから12回に亘って起業家精神=Entrepreneurship について,思うところを書いて行こうと思います。今回は第1回「ワナビーでは起業できない」です。 ワナビーというのは米語俗語で wannabe=want to be ,つまり何かになりたい,という気持ちのことです。でもこのワナビーは曲者で,ワナビーでは決して望むものになれない,とよく言われています。例として「小説

          #81 Wannabeでは起業できないということ:Entrepreneurship #1

          #80 朝令暮改は果たして悪なのか?

          ~人は常に2年以内に起こる変化を過大評価し,10年間で起こる変化を過小評価する(ビル・ゲイツ)~経営者が優柔不断で方針が定まらず常に意見が変わる,いわゆる「朝令暮改」では組織としてのベクトルが定まらず,経営は混沌の渦に巻き込まれてしまいます。しかしながら,先行きを見通すことが困難でVUCAの時代ともいわれる昨今,果たして方針や戦略を変えることは良くないことなのでしょうか。このような状況下では,柔難に戦略を変更することも重要な経営マネジメントとなってくるでしょう。 それでは,

          #80 朝令暮改は果たして悪なのか?

          #79 心理的安全性は流行なのか

          ~心理的安全性は,規模,仮想性,複雑性などのチームの文脈的特徴に基づいて変化する可能性がある(AC. エドモンドソン 2004)~最近,facebook広告やシンクタンク系メールマガジンで心理的安全性に関するセミナーや研修の告知を目にすることが増えました。ところでこの心理的安全性という言葉はいつごろからHRM(Human Resource Management)で語られるようになったきたのでしょうか。 心理的安全性という言葉は,Google社が2012年に行った「プロジェク

          #79 心理的安全性は流行なのか

          #78 戦略とは何か

          ~戦略とは持続的競争優位性を達成するためのポジショニングを構築することである P.ドラッカー~ 筆者はコンサルティング実習にあたっては,最初の授業で必ず戦略ピラミッドを説明するようにしています。戦略ピラミッドとは,上部の抽象度の高い方から企業戦略,2番目が事業戦略,1番下が個別戦略という3層構造になっています。別の言い方をするならば,1番目は成長戦略,真ん中は競争戦略,1番下は機能別戦略という風になっています。 それでなぜこの話を最初の授業でするのかというと,目の前の経営者

          #77 パズルとコンサルティング

          ~コンサルタントとしての私の最大の強みは,無知になりいくつかの質問をすることである P.ドラッカー~最近,コンサルタント志望の若者が多いと聞きますが,コンサルタントとはいったいどんな職業なのでしょうか。ひとつには,コンサルタントは経営者の意思決定の判断材料を提供する職業,と定義することができるでしょう。 経営者は何をやらないといけないかという個々のタスクは分かっているものの,日々の業務に追われてどこから手を付ければよいか分からなくなる,という状況に陥りがちです。そこでのコン

          #77 パズルとコンサルティング

          #76 経営とセレンディピティ

          ~この世に起こることは全て必然で必要,そしてベストのタイミングで起こる (松下幸之助)~セレンディピティとは,セレンディップ(現在のセイロン島)の王子たちが偶然の発見で難題を解決して幸せになる物語から派生した言葉で,「偶然によって思ってもみなかった幸運に出会う事」とされています。セレンディピティは共時性,シンクロニシティとともに,スピリチュアリズムの文脈で語られることも多いものです。 「人や物事との出会いにいは何か意味がある」と考えるのは運命論的ではありますが,過去多くの著

          #76 経営とセレンディピティ

          #75 お金に色はあるのか

          ~財多ければ,身を守るに貧し,害を買ひ,累ひを招く媒なり~ (徒然草 第38段)日本では昔から「悪銭身に付かず」と言われています。また「清貧の思想」という本がベストセラーになりましたが,「金儲けは汚いこと」というような風潮が無きにしもあらずです。これは「判官びいき」の勧善懲悪と合わせて,日本人の国民性なのでしょう。 お金に色があるかないかについては,筆者は個人的には「お金自体に色はない」と考えています。お金自体に色はありませんが,その出どころや使い途は様々です。その違いであ

          #75 お金に色はあるのか