見出し画像

A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー

今年初の映画は「A GHOST STORY」。

突然の交通事故で亡くなった夫Cがシーツおばけになって、我が家に残された妻Mを見守るお話。年月が経つほどにシーツおばけのシーツが汚れ、だんだんくたびれていくのが余計切なくなる。

映画の前半。喋れないシーツおばけは、じーっと妻を見つめ続ける。

苦しみながらパイをやけ食いする妻をじーっと見つめ続ける。ベッドから剥がしたシーツを抱きしめて夫の存在を確かめる妻をじーっと見つめ続ける。これからの人生を生きるため前向きな決断を下した妻をじーっと見つめ続ける。これにはちょっと抗ったけど。

そして映画の後半、シーツおばけの物語は思わぬ方向へと進んでいく。

最初、シーツおばけは妻への未練で残っているんだと思っていた。けれど妻が去っても家に残っていた。じゃあ家に未練があるのかと思ったら、家が無くなっても残っていた。それなら、いったい何に未練があったのか。

予告にもあった二人の会話で
「この家の何がそんなにいいの?」
「歴史かな」
というシーンがあって、映画ではその続きのシーンもあって、
そこに答えがあるのかなと思った。

死者にはこれからの人生がない。だからせめて、「あのとき自分は確かにここで生きていた」という証があったらきっと救われるのかもね。

妻が残した紙片のメモ書きを求めてシーツおばけが必死に家の柱をほじほじする。これが何気にかわいくてとくに印象に残っている。(たとえシーツの中身がケイシー・アフレックだったとしても)

人間同士の会話も少なく、全編通してほとんど静かだったせいか、発せられる音や言葉がやけに心に響く映画だった。劇中歌、Dark Roomsの「I Get Overwhelmed」が個人的にものすごく好き。ものすごく好きすぎてヘビロテ中。

人によっては退屈な映画に感じるだろうけど、私は好きだったな。映画のテクニカルな部分を知っていればもっともっと楽しめそうだし、謎な部分も残っているし、ほかにも確かめたいこともいくつかあるし。何度か観ることで気づきを得られる映画だと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?