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私が出版社の面接を受けたワケ

出版社をたずねたのは何年ぶりだろう……。

フリーになってから、メインはほぼウェブか企業関連のお仕事。
そんな私が、もう一度紙の世界と関わりたいと思ったのは、あの言葉がずっと心に引っかかっていたからかもしれない。

校正に好みが出るのは仕方がない??

ウェブ関係の人にはまだ記憶に新しい、WELQ問題。
あの騒動が起こる前、依頼されるお仕事の内容がとにかくどんどん、たくさん、早くコンテンツをつくりたいみたいになってきて、なんだかおかしなことになっているなと感じていた。

そんななか、いつもお世話になっている方から、人手が足りないので手伝ってほしいとの連絡を受けて参加したある案件。
たくさんのライターさんがいて、校正さんも何人か入っておられて、それを編集さんがまとめるという体制で。
私が書いた原稿を校正さんが見て、編集さん経由で戻しが来たのだけれど、「意味がわかりません」「まわりくどい」など、なかなかパンチのきいた赤字が入っておる。

「まわりくどい」の指摘には、こういうふうに直すようにとの例文も書かれていたのだけれど、どう考えてもその指示に従うと余計にまわりくどく、意味がわからなくなってしまう。

これはさすがにスルーできないなと思い、自分の意見を編集さんに伝えたところ、「校正は好みが出るから仕方がない。いいんじゃないですか、そのように書き直したら」と言われて言葉を失う私。

好みが全面に出る校正って……。

あんまり文句を言わないほうなんだけれど、なんてことを言うんだと思って久しぶりに抗議した。
もちろん、できるだけ感情はおさえつつ。
でも伝わらなかった。
人が関わる以上、校正にはどうしてもそのときの気分やその人の好みが出てしまうのだと。

何が正しいのか、間違っているのか、わからない……

あの量産体制のなか、みんな疲れていたんだと思う。
妙な熱気みたいなものがあって、何度か「大丈夫ですか?」「いまの感じ、なんか変じゃないですか??」と信頼できるディレクターさんに聞いてみたこともある。
WELQ問題が起きなかったら、あの調子がずっと続いていたのかもしれない……そう思うと、ゾッとする。

結局、いろんな理由で案件の方向性を見直すことになり、私の手から離れたのだけれど。
ずーっと、ずーっと、「校正には好みが出るから仕方がない」という言葉が私のなかに残っている。

これがウェブでの校正なのだろうか?
紙とは違うの?
そもそも編集ってなんだっけ? あれ? ディレクターさんとの違いは??
頭のなかはハテナでいっぱいに。

時々お仕事をお願いするライターさんが、「なんか変な赤字を入れる編集さんがいて。自分の文章がどんどんおかしくなる」とか愚痴っているし。
なかには、私が原稿を編集した後に校正が入る案件もあって。
原稿を見たクライアントさんから「ここ変だから直して」と指示が出たので見てみると、校正さんがおかしな修正を入れていて文意が全く変わっていて、ひっくり返りそうになった。

そもそも編集後に校正が入るってどういうことなの?? 
なんでこんなおかしな日本語にしちゃうの~!!

とか。
私が合っているのか間違っているのかわからなくなってしまう出来事が、たくさんあったのだ。

書き手へのリスペクトがない赤字は苦手だ

少なくとも、私はその日の気分や好みで赤字を入れることはない。
いつも言うけれど、書くことはときにしんどい。
書き終えるのは楽しい。
でも、書くことは楽しいばかりじゃない。
好きじゃないとやってられないお仕事だ。

私が知っているライターさんはみんな、そうやってときに苦しみながら言葉を紡いでいる。
そういう書き手に対するリスペクトがない赤字は、誰のためにもならないと私は思う。そんなの、ただの自己満足だ~!

私がそんなふうに思うのは、もしかすると最初に勤めたのが医学書の出版社だったからかもしれない。

医学書では、執筆してくださるのはほとんどが医師の方々。
こちらが好みで校正を入れるなど、考えられなくて。
そもそも私は駆け出しの頃、出しゃばった赤入れをして死ぬほど怒られたので、もう二度としないとあの日の夜空に誓っている。

ウェブだけでなく紙のお仕事の割合を増やしたい

いまは紙よりウェブ。
それは私もよくわかっている。
でもこのままだと、私はまた何か言われるたびに迷い、答えを見失うかもしれない。
伝えたいことがある人を文章を通して支えたいとか、なんだかえらそうなことを言っているけれど、迷っているうちは無理じゃないのと思いはじめて。

あと、私で完結してしまう案件が多くなってきて、スキルを磨くことが難しくなってきたのもある。

だから、もう一度、紙のお仕事になんらかのかたちで携わって、限られたスペース、簡単に修正がきかない場所で、力をつけたいと。
それで、そのまず第一歩として、医学図書を扱う出版社の外部スタッフに応募することにしたのだった。

希望どおりの出版社が……見つかった!

私が希望していたのは
・すぐ行ける場所にある
・いまのお仕事に生かせる
・一緒にお仕事したいと思う人がいる
こと。

血眼になっていろいろ探したところ、まさに最近になって外部スタッフを募集しはじめた出版社を発見!
思いついたら即行動。職務経歴書を送ってひたすらお返事を待った。

やっぱり無理だったかな……と諦めかけた頃、編集長からメールが。
一度お話をしましょうとのことだったので、ドキドキしながら面接を受けたのが昨日。
まだドキドキはおさまっていない。

結局、1時間半にわたっていろんな話をした。
これまで私がしてきたこと、いま悩んでいること、これからしたいこと。
編集長からは、実際のゲラを手に、いまどんな本をどういうふうにつくっているか、これからどんなふうに展開していくか、外部スタッフとして関われる範囲はどれくらいか、などなど。
「みんなウェブに行っちゃうので人手不足」だそうで、出版社での勤務経験がある知り合いがいたら紹介してほしいとのことだった。

もうなんだろう、ゲラを見ているだけでワクワクしてしまって、私本当に医学書とか医療関係のものが好きなんだなと思った。
資格がないので関われる範囲は狭いのだけれど、私が役に立てる場所があるのならやっぱりこれからもつながりを持っていたいなあと。
企業、医療、美容、健康。
私がテーマとするものは、どれもどこかでつながっている。

薬事法管理者以外に何か資格をとったほうがいいのだろうか……そう思った時期もあったのだけれど、そうじゃなくて編集・ライティングに関する力を磨くほうがいいのではないかなといまは思っている。あと、英語だな。

編集長さんもとってもいい方で、話し方が丁寧でやわらかくて。
こんなところでお仕事がしたいなあと、まさに私がイメージしていたとおりで、だからこそまだドキドキしている。

内勤できる人も探しているとのことだったけれど、フィーリングも大事だろうし、そのあたりは業務委託の外部スタッフとして関わりながら考えてもらってもいいとのお話で。
まずは外部スタッフでの登録をお願いしようと思っている。

とはいえ、いつお仕事のご依頼をいただけるかはわからないので、まだまだ営業活動は続けるつもり。
いろんな人に会って話をしてみたい。
また追ってご報告します……!



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