暑くて雨が降っていて、湯気の中で暮らしているよう。風の強い夜が続いて戸袋の雨戸が鳴っている。うるさいので古い靴下を挟んだ。

仕事の区切りがついた先週、日記を書いてから気力が途切れてしまった。

奈良へ。
ホテルでインディジョーンズを観た。
子供の頃何度も観た作品。ずっと面白い、お祭りのような映画で大好きだ。
翌日は旅行支援でもらったクーポン8000円分を握って鹿と遊び、鹿の形の鹿サブレを買った。

翌日はスパイダーバース

一般的な漫画や実写映画のアニメ化、とは全く違う。漫画がそのままアニメになっている、印刷のザラザラしたテクスチャーのままカラフルな世界を飛び回る。悲しい時は青、幸せな時はピンクの分かりやすい世界。実写やレゴのコマ撮りなども挟まれる。様々な宇宙のスパイダーマンは人生の転機を共有する。悲しい出来事も起こるべくして起こるので、避けられる悲劇でも傍観し受け入れなければスパイダーマン達は消滅してしまう。実写より好きだ。90分程度の上映時間だろうと思っていたら問題は大きく膨らむ一方で、2時間半後何も解決せず終わった。スパイダーマンの全身タイツを着た3歳くらいの男の子は「アニメーションを作るのは大変なの？」と母親に訊いていた。

月曜は毎週忙しすぎてあまり覚えていない。膨大な量のブランド品を発送した。シャネルの山。今の会社で働いてもうすぐ３年になるだろうか。毎日ブランド品を撮影し発送していたら飽きると思っていたが、シャネルがかわいいのは変わらない。

火曜、また目を傷めてしまい会社を休んだ。1日18時間くらい眠った。目が開けられなくなるほど画面を見ていたということは、それだけ働いて疲れていたということだろう。

水曜は遠くの友人と長電話をした。用事があったわけではない。煙のように頭に浮かぶ触れそうで触れないような感情や思考のようなものを、取り留めの無い話をしながら輪郭をつかみ吐き出していくような作業。換気される感じ。そこから何が見えるのと聞いたら「GU」と言っていて嬉しい。同じ月を見ている、とか、同じ海で繋がっている、の令和バージョンではないだろうか。離れて暮らしていても私たちは等しくGUの恩恵の下に暮らしているね。

木曜は何もなく仕事。夜は漫才劇場の、金属バット・黒帯・三遊間・軍艦のイベントを観に行った。病み上がりの友人に具合をきいたら「南港で自転車に乗った妖怪ひょうすべに出会い、呪われて発熱した」と言っていた。調べたら九州の妖怪で、風呂に現れて菌をまき散らし、人間に病気を流行させるらしい。嫌な妖怪だ。画像を見せてもらったが、私もミナミや新世界で何度も出会っていると思う。京都の鴨川デルタにもいた。
　三遊間がとても良いネタをしていた。以前から男性が”俺”と”僕”と”私”を使い分ける基準について気になっていたので納得してしまった。黒帯はテレビで見かけることも無いままNGKで単独完売し、これからどうなっていくんだろう。金属バットは何だかスターの風格で、本人たちのラフさとのギャップが大きすぎて感激した。

金曜は担当コンサルのミスで広告をひとつふいにしてしまったので大いにゴネ、詰め、復活させてもらった。私がどれだけ犠牲を払ってこの案件に取り組んできたのか分かりますか？他の業務を進めていたら、いくら売り上げがあったのか想像できますか？何が悪かったのか分かりますか？とか、私が言われたら絶対に嫌な文句がどんどん出てきて、腹が立つのとアドリブで文句の止まらない私自身が怖くて手が震えた。怒るのは疲れる。

今朝はシネリーブルでホンサンスの新作。

とても良い。喋って、食べて、歩いて、を繰り返すだけで物語とも言えないのだが、人生に物語なんて必要ないし。タイトルもミニマムというか、うまいこと言おうとしていなくてとても良い。ホンサンスはキムミニのことを本当に愛しているんだな、と分かる、それだけで胸がいっぱいになってしまう。最後のカラーになってからのキムミニはこれまでのどの作品よりキュートで二人の関係の深さが分かる。パンフレットを買ったら二人のインタビューが収録されていた。現在の日本にも、不倫関係を明らかにしながら、協力して作品を制作し発表し続けるクリエイターはいるだろうか。私が知らないだけでいるんだろうな。作中の冴えない詩人に、キムミニに出会う以前のホンサンス自身を投影している気がした。私は監督の新しい作品にも期待しているが、監督の妻は３年間の訴訟の上「きっと家に帰ってきてくれる」と離婚を拒否している。この情報あったうえでの作品なのか、ノイズなのか、分からない。

夜、友人にすすめられた同監督の見逃していた作品を観る。

仲の良いカップルの話をしたら、この映画をすすめてくれた友人は「愛が煮詰まってしまうよ」と言っていた。そうなのだ。愛は煮詰まる。長い間小さいコミュニティで深い関係を維持すると、価値観や習慣が社会から少しずつずれていく。依存せず、丁度良い距離感を探して保ち、色々な人の話を聞いて調整する必要がある。

今日から夫が夜勤になり、静かな夜をどう使おうか考えている。
明日は久しぶりに晴れるそうだ。