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なじみの美容師さんに「これからのビジネスのあり方」を学んだ

ぼくがわざわざ武蔵小杉の美容師さんにお願いする理由

ぼくはもともと、渋谷で髪を切っていました。

でもこのあいだ、担当の美容師さんが独立して、武蔵小杉に行っちゃったんですね。それでもやっぱりその美容師さんに切ってほしいので、電車に乗って武蔵小杉のお店に通っています。

なぜその美容師さんがいいのか? それは、いろいろ説明しなくてもいいからです。

「今日どうしますか?」
「えーと、前髪は残して……」

みたいなやりとりを彼とは何年もしていません。「今日もお任せします」って言うと、勝手にいろいろ考えてくれるんです。

「夏なんでいつもよりちょっとだけ短くしましょうか?」「秋のことを考えると、パーマあてるためにこのへんとか残しておいたほうがいいと思いますよ」みたいに、ぼくよりもぼくの髪のことを「わかってくれてる」から「じゃ、それで!」って言うだけなんです。

最初にこちらのことを伝えれば、その後はなんとなく察してくれて、わかってくれる。その美容師さんは、ぼくにとって「替えのきかない」存在です。すごく遠くに行っちゃわない限りは「絶対にこの人に頼もう」って思っています。

「替えのきかない人」になる

これ「商売の本質」な気もするんですよね。

絶対替えが効かない。それってもう「差別化」とかですらないんです。

しかもその美容師さんがすごいのは、しゃべってくれるときと、しゃべってくれないときがあるんです。ぼくが仕事したくてパソコンかたかたやってるときは一切しゃべらない。「今日はちょっと雑談したいな」って思ってると、話しかけてくれる。さすがプロだし、めっちゃ心地いいんですよね。

その人が前に言ってたんですけど、「カリスマ美容師」のかたちが変わってきてるそうなんです。

昔はカリスマ美容師といえば、卓越したセンスとかすごい技術を持ってる人のことを指していました。でも今はYoutubeとかインスタとかでノウハウが手に入りやすくなったから、若い新人でも髪を切る技術は高くなってきてるらしいんです。

美容師さんは言いました。

「やっぱりいま、ぼくが評価いただいてるところって、コーチングというか、カウンセリングみたいな部分なんですね。常連さんにアンケートで聞いてみると、その部分を評価いただくんで」。

ああ、なるほどなって思いました。

美容室の業界も変化が起こっているそうです。渋谷とか原宿で切ってたお客さんが、コロナであんまり遠出しなくなって、自分が住んでる町で切るようになった。住宅街にあるような美容室がすごい混んでるらしいんです。

住宅街の美容室でも、一度行って「わかってくれる人」がいて、上手であれば、「あれ? もう原宿行かなくてよくない?」ってなる。だから今、武蔵小杉の彼のお店はすごく繁盛しています。

「わかってくれる人」になると、もう替えが効かない。するとお店側もお客さん側も気を張らなくていい。計算しなくてもいい。打算的にならなくてもいい。だから、お互いに心地いい関係になっていく――。

これは商売のカタチとして最強だな、と思うわけです。

「わかってくれる」市場の台頭

結局みんな「わかってくれる人」が好きなんですよね。

Amazonのレコメンドも「わかってんな、こいつ」っていつも思います。「なんでいまこの本勧めてくんの? なんで俺のことわかってるの?」ってついつい買ってしまう。

音楽だとSpotifyも「わかってんな!」っていう曲を流してくれます。「そうそう、こういう曲好きなんだよ!」って。

これまでは、機能だったり、技術だったりが重要視されてきました。お店であれば「いい立地かどうか」とか「三ツ星のシェフがつくってる」みたいなことが大切だった。

でもいま、場所のブランドが薄れていっています。超一等地じゃなくても、「ああ、こいつわかってんな」っていうようなお店のほうが好かれる時代なんです。

知り合いが「不純喫茶ドープ」というお店をやってるのですが、ここがすっごい「わかってる」お店なんですよね。お店の内装とかふくめ、懐かしいんだけど新しい感じのメニューとか。その「世界観」が絶妙で、みんなここにインスタの写真を撮りに来るんです。

同じ系列に「トーキョーギョーザクラブ」ってお店もあります。神田の居酒屋街にひょこっとお店出したんですが、このコロナのなか女子が行列つくってるんです。餃子とメロンソーダを出すお店なんですが、絶妙に「わかってる!」って感じのお店なんですよね。

ネットによって、リアルの立地は関係なくアクセスできるようになった。そこでこういう世界観がすてきな「わかってる」お店が強くなってきているんです。

「わかってる人」になれると強い 

ぼくらも「お客さんにとっての『わかってる人』になろうね」ってよく言っています。

前も書きましたが、ぼくらは「現物主義」という考え方でビジネスをやっています。受注してから現物をお見せするのではなく、まずお客さんのことを理解して先につくってしまう。まず現物をお見せしてから商談を進めていくやりかたです。

このときに「わかってる人」になれると最強です。

相手がどういうことに困ってそうか?
どういうところにボトルネックがあるか?
どうすれば「こういうのが欲しかった!」と言ってもらえるか?

そこを汲みとってから「当てにいく」ことができる人はやっぱり強い。

できる人は、まず現物をお見せして、相手の表情を見ます。もし外していても「ピンときませんか?」「ぶっちゃけ、届きますか、これ?」とヒアリングしていく。すると、どんどん相手の求めているものに近づいていくことができます。

「正直、あんまり求めてるものじゃなかったな……」
「そうですか、別パターンもつくってきたんです。こういうことですか?」
「ああ、そうそう。こういう感じだね」

というように話が進んでいく。

相手にとって「わかってる人」になること、「わかってる人」になろうとすることが、今後のビジネスでもすごく重要だと思うんです。

理解してほしいなら、まず理解すること

「まず相手を理解する」という姿勢は、あらゆる場面で大切です。

前の会社で取締役をやってたとき、チームのメンバーがみんな年上だったことがあります。ぼくが23〜24歳くらいで、メンバーは最年長だと40歳とか。

そんな感じなので、ぼくが何を言っても聞いてもらえないんです。「こうしましょうよ」「こうしたほうがいいですよ」って言っても、なかなか相手にしてもらえない。「なんで、わかってくれないんだろう?」としばらく悩んでいたんですね。

そんなとき、社内の勉強会でたまたま『7つの習慣』を学ぶ機会があったんです。ちょうどぼくは「第5の習慣」について発表することになったんですが、この第5の習慣というのが「理解してから理解される」という教えだったんです。

人は「わかってほしい」と思いがちだけれど、その前に相手をわかろうとしているのか? 理解されるためには、まず相手を理解することが大切である。傾聴することが大切である。そういう教えでした。

そこでぼくはハッとしたんです。

メンバーに「わかってほしい」と思ってたけど、「もともと自分がメンバーのことを理解しようとしていなかった」かもしれないって。

たしかにメンバーの立場で考えれば「こんな若いやつの話なんか聴きたくない」と思うのは普通かもしれません。少しずつ相手を理解しようとする姿勢を持ち始めると、チームでのコミュニケーションはスムーズになっていきました。

プライベートでも、社内のコミュニケーションも、社外のビジネスも、わかってもらおうとする前に相手をわかってあげることが大切。

そしてそこにいますごくマーケットがあるはずです。

みんな、なにも言わなくてもわかってほしい。言わなくてもバッチリのものが来てほしい。そう思ってる。そんななか「わかってくれる人」になれれば「替えのきかない存在」になれるはずです。担当の美容師さんと話していて、あらためてそう思いました。



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