蒸しについて

染めには大きく分けて二種類の方法があります。

一つは「浸染」(しんぜん)です。
これは染料液に生地を浸けて染める方法です。

熱を加えるもの、室温のままのもの、染料に浸してから薬液で発色させるもの、色々ありますが、この方法では染料液や薬液から引き上げた状態で生地に色が染まり、定着しています。

もう一つは「引染」(ひきぞめ)です。

こちらは、生地を張った状態で刷毛で染料を染めます。

「糸目友禅」などで、染料を使って文様部分を色挿しをした場合も、染める原理は「引染」と同じで、生地を張った状態で染料を刷毛や筆で文様部分を染めます。(酸性染料や直接染料を使う事が多い)

この際、染めるといっても、ただ染料を生地に塗り付けただけの状態なので「定着/発色」していません。洗うと落ちてしまいます。

その状態の染料を定着(さらに完全に発色)させる為に「蒸し」という工程が必要になります。水蒸気と熱によって、生地に染料を定着/発色させるのです。

(色糊を使った”しごき染”などでも蒸しが必要です)

(染まった状態というのは、生地の糸の繊維の一本一本の「内部」に染料が入り込んで、定着している状態です。例えばその繊維が赤色なら繊維の芯まで赤くなり、赤い繊維になり、それが定着して洗っても落ちない状態のことです。)

一般的に「蒸し」は、多くは業者さんに外注します。

ボイラーの蒸気を使って専用の小部屋で蒸します。

しかし、当工房ではロウの具合を観ながら作業を進めるため、複数回”蒸し”の工程をする事があるので、また、草木染の引染をする事もあるため、自工房で蒸しをすることが殆どです。大きめのガスコンロがあれば使えるコンパクトな「簡易蒸し器」という器具を使います。

簡易蒸し器といっても蒸気はしっかりと生地に当たり、業者さんへ外注するよりも「蒸し」が甘くなるということはありません。

「蒸し」の作業は、文様の色挿しに染料を使った場合の定着/発色と、引き染めの染料の定着/発色に行います。

なので、文様色挿しに染料を使った場合は、制作工程の中に最低2回の”蒸し”を行う事になります。

蒸す時間は大体45~90分です。

染料の種類や濃度によってもっと時間をかける場合や二回蒸す場合もあります。

一度、色を染めて、蒸し、水元(水洗)、乾燥までして、もう一度(数度)染める事もあります。

その際は地色を染める度に蒸しをかける必要があります。

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*簡易蒸し器を使った蒸し方*

生地を不織布と一緒に巻きます。

不織布を生地の間に挟む事によって生地に均等に蒸気を当て蒸しムラを少なくする事が出来ます。

1)巻き始めに不織布の芯を作ります。

巻き始めの中心の部分に厚めの不織布と紙を入れるのは簡易蒸し器の中で蒸気が当たりにくい中心部に蒸気が回る様にする為と「打ち合い」を防ぐためです。

(「打ち合い」=巻いた生地の、文様や染め分けの部分が接した場所に、その文様が薄く写ってしまう事)

2)生地の無地場にも不織布を入れます。

不織布は1枚の事が多いですが、色によっては2枚にします。

文様の部分は「打ち合い」を防ぐ為、使った染料やロウや糊の種類によって違いますが、多くの場合は不織布を2枚にし、わら半紙を間に一枚か二枚挟み込んで巻きます。

この際、裏に回り込む部分も同じく「打ち合い」を防ぐ為に不織布と、わら半紙を増やす様にします。

3)生地の終わりにも紙を二枚挟みます。

引き染めをした生地の始めと終わりの部分は「染め分け」してあるのと同じ状態なので「打ち合い」を防ぐために不織布とわら半紙を厚くします。

4)巻き終わったら外側を二枚~三枚の不織布で巻いて、さらに大きな不織布で包みます。

(水蒸気が外気に触れると水に戻ってしまいますが、水が生地に付くと「蒸しだれ」といってその部分の色が流れ落ちてしまうため、多少の水が着いても大丈夫なように外側は厚く巻きます)

(「蒸し」の工程では「水蒸気」が必要ですが「水(お湯)」は染料が落ちてしまうため絶対に着いてはいけないのです)

5)生地を不織布で巻き終わったら、完全に沸騰した状態の簡易蒸し器に素早く入れます。

蓋を取り、素早く筒の内側面に付着した水蒸気をタオルで拭いて、不織布で巻いた生地を入れます。湯気が出ている蒸し器の蓋を取ると、内部の温度は下がってしまうので、素早く生地を中に入れて蓋を閉める事が大切です。

6)その後、約40~50分蒸します。時に二度蒸す事もあります。

(染料の種類や染め方、生地によって時間は変わります)

7)蒸し終わったら、手早く蒸し器から不織布で包んだ生地を取り出します。

素早くしかし生地を痛めないように生地を不織布から取り出し、蒸気を飛ばす様にして冷まします。

この時、床にキレイな畳紙などを敷くと安全です。

「簡易蒸し器」で「蒸し」を行う際には・ 全体に均等に蒸気が回るように気をつけること・「蒸しだれ」が出来ないように気をつけること・「打ち合い」が出ないように気をつけることこの三点を特に注意する必要があります。

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仁平 幸春

フォリア工房での染色の技法

工房で行っている、染、文様染の技法を解説しております
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