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伝統と新しく出会い再構築する必要があると考えます

いわゆる伝統工芸品や、伝統文化で素晴らしいとされている物事の多くは、それは伝統文化だから云々、これはこういう伝統技術だから云々、という「ありがたみ」を取り去り、現代社会で広く楽しまれ役立っている、いろいろなものと同じ土俵に乗せてしまうと、魅力に劣るもの、洗練の無いものが殆どではないでしょうか。

それでいながら上から目線でお客さまに有料で勉強させて、さらに高額な買い物までさせる伝統工芸系業界は、お客さまや、お客さま未満の方々から距離を置かれるのは当然だと私は考えます。

伝統的な物事は、どうしても「いろいろな前提を知っているのが当然」ということになり勝ちで、知っている人が知らない人を排除したり蔑んだりする傾向がありますし、実際他人より心理的に上の立場でいたいというタイプの人は、そのために伝統文化を学び利用する人もいますから、構造的に新しい人が寄って来なくなる傾向があるのは仕方がない部分はあります。

が、それが良い方に出る場合もあります。

そのような「高度な文脈の理解とそれを元にした行動が前提な世界」は、そこに参加し、所属し続けること自体にある種の緊張感があり、良くも悪くも選民意識や優越感を持てます。それにより独自の世界観が醸成され、その文化を劣化させることなく維持伝承出来ることがあります。また趣味性の高いものだと、そういう流れの方が結果として伝統文化の伝承上、良い場合も多いようです。

そのように、伝統文化の維持には「閉じることによって維持する方法」もあるわけですが、しかし、それをメインの方向性にする場合は「拡張」は諦めることになります。それでは「産業」にはなりません。

日本の伝統文化系を、日本国内で拡張するためには最早日本人の、とか、日本人ならではの、という切り口で紹介してもダメなのではないかと個人的には思っています。

現実的に、現代日本人はいわゆる伝統的な日本食、和服、日本建築で生活していません。それも長いこと、そうなのです。

もう三世代ぐらい、そういう生活では無いと思います。現状は一見、日本の伝統文化の形式に観えても、実際には名残りがある程度でしょう。そういう現実を認めましょう。と思うのです。

私は今年で(2019年)54歳ですが、私の両親の世代ですら、青年期からはいわゆる日本的な生活はしていませんでした。

だから、現代日本人にとって、伝統的日本文化は、新しく出会うものであり、新しい魅力的な文化だと思った方が実情に即していると思います。

日本の伝統文化という、広大で深い文化を楽しく探求しようぜ!という感じのものが良いと思うのです。

そもそも、伝統的日本文化の形式そのままでは、現代社会では不便過ぎて使えないものが殆どでしょう。だから、何にしても再検証と現実とのすり合わせは必要です。

こんなことを言うと、私は日本の伝統文化を軽く扱っているかのように思われるかも知れませんが、伝統なんてオワコン、もういらないもの、という風には全く思っておりません。

むしろ、現状の停滞から抜け出すために、そう考えるのです。魅力的なものとして「再発見する」ということですね。それだけの魔力と、未来への推進力があるのが日本の伝統文化と私は確信しております。

が、問題は、そういう切り口用の商品で適切なものが無い。

途中までは良くても「完成・洗練された仕組み」が無いんですね。

だから、今までのように「これは伝統だから云々、これはこういう伝統技術だから云々」を取ってしまったら魅力がないものが殆どということになってしまうのだと思います。

日本人が、日本の伝統文化に対して具体的に把握出来ているのは、そこしか無いのだと思います。(実際にはそれすら危うい)

だから、工夫していろいろやっても、的外れなもの、ダサいもの、NHKの番組が民放的なくだけた番組をつくったようなイタさ、みたいな感じになってしまう。笑

もっと多角的な視点と広い視野、具体的なデータが必要なのだと思います。

人が、自分自身のことを正確に把握出来ないし、自分の良さを活かしきれないことが殆どなのと同じように「日本人だから日本の伝統文化を一番理解しているというわけではない」のです。

しかし、日本の伝統に関わっている人=日本の伝統を一般に適切に広められる人と思っているフシがあります。

しかし、実際にいわゆる伝統文化系の「中の人」にそのような能力のある人は殆どいません。

かといって、無闇にプロデューサーさんやコンサルタントさんにお願いすると、助成金だけ持っていかれて残骸しか残らない、なんてこともありますし。

何はともあれ、伝統へ対する新しい姿勢が必要なのだと思います。

私の場合は、私個人の回答を持ち、自分で出来る範囲のことを現実に他者へ「手渡し」する、小さいことしか出来ませんが、それぞれの環境で

「現実的な伝統の把握と、伝統が現代社会に機能するための仕組みの構築」

の意識を持つ人が増えると良いと考えます。

(ヘッダー写真・NYのコレクター宅 浮世絵と仁平幸春作「三つの地下水脈」紙・天然染料・ロウ)


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