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フォリアの金銀加工について

当工房では、金銀彩専門職人さんのような高度な加工は出来ませんが、仕上げで、文様の輪郭線に金や銀の粉に糊を混ぜたものを細い筒で置く、金銀線仕上げをする加工は良く行います。

(フォリアでは本金・本銀・プラチナなどは使っておりません)

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(上写真・文様の糸目の線に金線を引いているところ)

金線や銀線の加工は、文様に色や絹の光沢以上の物質感を与え、コントラストを高める効果があります。

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上の帯は、文様の色味は渋く抑えて、金線で輪郭や細部を起こし、文様にコントラストをつけた仕事です。

時に、更紗などに良く用いられる「印金加工」に似た加工もします。「印金」とは、文様に対して金銀加工の効果を強く、かつ文様から少しズレたような加工がされたものです。

このような場合は「元の文様を後押しする効果」よりは「金銀と文様が同じ強さ」になります。金銀が出しゃばった加工です。

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さらに強く金銀を強く使うこともします。

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上写真のような「金銀箔をべったりと生地に貼り付けた加工」です。

このような大胆な加工の狙いは、

1)生地の質感と、金属の質感の「かけ離れた素材感同士が同居する、質感同士のコントラスト」を作るため

2)両極端の素材感が出会うことによって、布はより布の質感を感じ、金属は金属の質感を感じやすくなるのを狙うため

3)布と金属という両極端の性質が同居していて、かつバランスが取れている帯=布の柔らかさと、金属の冷たい質感の間の素材感の振り幅が広いため、いろいろな質感の生地の着物を受け入れる懐の深さを持つ帯になる

この(1)〜(3)の効果を狙ったものです。

上写真のグレー地の満月と三日月の帯は、銀と金の箔を重ね、フォリアのロウの仕事のような重層感とメタリック感を出した仕事です。(こちらは専門職の人に外注)

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上写真の日月文のほうは、光悦の謡本などに使われている、木版でムラになるように押した装飾画のような感じに、木版を使い金銀粉と糊で日月を表したものです。生地はどちらも紬の触感がつよい「赤城紬」です。

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(上写真・光悦の謡本、東京国立博物館のサイトより)

工房構成員の凡が「日月文」の方を着用している画像です。

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上写真のような、大島紬の着物のツルッとした素材であっても合いますし、

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上写真のような、生地の素材感の強い紬の着物であっても、どちらも全く問題なく合わせられる帯です。

着物にこの帯を合わせたことによって、着物の素材感がより明瞭になります。

この取り合わせでは、帯生地が「赤城紬」で一番素材感が荒々しいです。

大島紬の着物のつるっとした風合い、織りの紬の着物、節糸の強さのある帯生地の赤城紬、そして金属である「箔や金銀粉」のそれぞれの素材感がお互いを活かし合って「増幅」され、美しさを産み出しているのです。

もちろん、着た人が良く見えるようになることが一番の目的です!

このような「特性がかなり違うもの同士の取り合わせにより起こる増幅=常に新鮮な緊張感のある感覚」は、とても日本的だとフォリアでは考えています。数寄屋建築のようなものですね。

フォリアでは、金や銀を今まで通りに使うのではなく「美意識や技法は古典に則りながら、新しい解釈で現代的にし、深化・拡張させる」ことを考えます。

それは金銀使いに限らず、あらゆることにおいてそう考え「再構築」します。

全ては「現代の人の装い」にふさわしいものを制作するためです。


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