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【日記】ジャンキーまっしぐら

(1138文字)
咳が止まらない。
そこで龍角散のど飴。これが効くのよ。
舐めている間は劇的に咳が止まる。
舐めている間だけ。
舐め終わって少しすると、思い出したように咳がぶり返してくる。
ぶり返してくれば再びのど飴を口に放り込む。
劇的に咳が止まる。
舐め終わってまた咳が出始める。
再びのど飴投入。

糖尿病になるわ!

まさに龍角散ジャンキー。
糖尿病になる前に咳が治って欲しい。

仕事の合間に、1時間ほど松島を見ながら軽くウォーキング。
日本三景を眺めながら歩けるって、よく考えてみると贅沢。
ボクは埼玉県の関東平野が終わって東京が始まる手前の街で生まれ育ったので、未だにこうした風景に感動する。
今住んでいる松島からも、天気が良ければ雪化粧の蔵王連峰が見える場所もある。
雪が降ればワクワクしてしまう。
宮城県に住み始めてもうすぐ30年でもそんな感じ。
子供の頃の感覚はあまり変わらないようだ。

逆に、東京にはなんの憧れもなかった。
24歳の時に実家を離れて仙台に引っ越したが、「故郷を捨てた」というような感覚は全くなく、今でも車で5時間弱、新幹線なら2時間ちょっとで実家に帰ることができる。
しかし、帰っても同級生にばったり会うことはない。
おそらく、ほとんどの同級生があの街を離れ、別の場所にマンションを買ったり、もう少し東京から遠い場所に家を建てたりしたはずだ。

だから、田舎に生まれたかったなーとか思ったりする。
思いを寄せている同級生の女の子がいるけど、高校を卒業したら東京に行くから、思いを伝えるか悩んじゃったりしてね。
田舎町の外れには小さな山城の跡があって、観光地にもなっていないんだけど、街が一望できるその風景が好きで、時々ひとりで登ったりする。
そして、この小さな町から早く出て行きたいという気持ちを高めてきた。
ある日、いつも通り城跡に登ってみると、その女の子がいたりするわけですよね。
そしてベンチの端と端に座って話をする。
「卒業したら東京の大学に行くの?」
「うん」
「私は地元の信用金庫」
「就職決まったのか」
「うん」
「おめでとう」
「本当は私も東京に行きたいなぁとは思うけど・・・」
「思うけど?」
「怖いし、父が行って欲しくないって思っているのもわかるから」
「そうか」
「うん」
少しの沈黙が流れる。
「遊びにこいよ。案内してやるよ」
軽く言ったように見せて、実は内心ドキドキしている。
「本当?」
嬉しそうな彼女の顔に、緊張が解けて饒舌になる。
「もうアパートも決めてきたんだけど、渋谷にも新宿にも行きやすい場所だしさ、行きたいところ言ってくれれば調べておくよ」
「ありがとう。じゃ、連絡する」
とかなんとか、そういう会話がしてみたかったなー。

なんてバカなことを考えていたら龍角散のど飴が最後のひとつになってた。
立派な龍角散ジャンキーだな。

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