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【山あそび】和賀岳周回、笑って泣いて

岩手県と秋田県の境に鎮座する和賀岳に登ってきた。
まずは今回歩いたルートを。

スタート地点からまずは高下岳、根菅岳へ。
紅葉を眺めながらの稜線歩きは気持ち良い。

根菅岳

根菅岳の少し先から、西への稜線に入る。
ここには40年くらい前まで登山道があったが、今は廃道になって自然の姿に戻っている。
この稜線を歩いて和賀岳まで行けば、ぐるっと周回ができる。
これに気がついてしまったら、あとはもう計画を練るしかなかった。

奥のピークが和賀岳。そこまでの登山道はない

根菅岳の北、根菅分岐から藪に突入。
頻繁にGPSで地図を見て、登山道だった場所の点線を確認する。確かに点線の上を歩いているのだけれど、道だったらしき踏み跡もなく、完全に自然に還っていた。
ひたすら笹をかき分け、灌木をねじ曲げ、ねじ曲げられない灌木に乗って渡り、少しずつ少しずつ進む。

背丈を越える藪


6時間で予定の地点に到着。テントを設営して就寝。
翌朝、天気が良かったのは日の出までで、出発するときにはガスに包まれていた。

テント設営場所


先が見えない中を、再び藪漕ぎ開始。
標高が上がれば背の低い笹藪や草原が出てくると思いきや、この1300〜1400mの標高ではそうはならなかった。

枝から枝への空中戦


時々、膝から腰くらいの高さの笹になる場所もあったけど、すぐに胸から上の高さに戻る。
もうすぐ頂上というところでも、ハイマツ、ミネカエデ、ミネザクラなどの灌木が壁になる。ひとりウォー!と声を出しながら突破すると、ようやく風衝草原。
ラストの標高差30mのみがウイニングロード。
重い足を引きずるように登っていくと、頂上の看板が見えた。

看板が見えた!


その途端、なぜか腹の底から笑いがこみ上げてきて止まらなくなる。
真っ白なガスに包まれた頂上にたどり着き、ひとり高笑い。
祠に柏手を打ち、声に出して「ありがとうございました」と和賀岳の神様に感謝すると、今度は胸にこみ上げるものがあって、涙が溢れてきた。

山頂の祠


こういうチャレンジをするといつもこうなる。
自覚はなくても、それだけの緊張があったのだろう。
たった3.8kmの距離に9時間。時速にして約420m。
やり切った、やり切ったぞと頂上でひとり呟く。
誰が見ているわけでもない、誰かが共感してくれるわけでもない。
比べてしまえば、もっとすごいことをする人たちはたくさんいる。
しかしそれは関係ない。
自分の魂は確実に震えている。
ただそれだけのために、だけどそれ以上のことはあるだろうか。
この感覚をまた得たくて、ひとりで地図と睨めっこしてしまうのだ。

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