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「非正規・単身・アラフォー女性 『失われた世代』の絶望と希望」(雨宮処凛)を書評っぽく書いて_002

雨宮処凛さんの本が実はちょっと苦手である。
ときどき文章の情緒が一定でないからだ。良く言えば、ノッている時の文章は非常にドライブ感があり、疾走感を感じる。悪く言えば、筆者の気持ちのアップダウンが文章に反映されていて読みづらい。
また自信のある項目に関してはやたらと強めの言葉を置く傾向があり、自信のない項目は本人が調べて書いたはずなのに伝聞の体裁を取っていたりするので、書いている内容に対してやや信用性に欠けるところがある。一言で言えば「ツッコミどころ満載」だ。

本書は、単身アラフォーのフリーランスである筆者が賃貸マンションの審査に落ちたことを契機に書かれている。保証人である雨宮さんの父は現役の勤め人であったが、年齡65歳以上であったことがネックで審査に落ちた。
頼りにすべき親世代は順調に老いており、「非正規雇用」「アラフォー女性」「メンヘラ、引きこもりなどの生きづらさを抱える」人は、どのように生きていけばいいかをショーケースの体で紹介している。

筆者は取材対象者とは長い人だと10年以上の付き合いで、情が湧いている。そのためか、全員の背中を希望の路に向かって、押してあげたくて仕方がない。
よく使われる言葉が「わかる」。共感である。この本は8割共感で占められている。サブタイトルの「『失われた世代』の希望」の部分である。
しかし、インタビュー中におそらく取材対象者に対して「なぜ?」と問うところが少なかったのであろう。インタビューイーの不都合な事実が書かれていないことが気になった。
物事は必ず良い面もあれば悪い面もあるからだ。サブタイトルの「絶望」については、ほとんど描かれていない。

本書の良いところは、学歴がなくても、就労相談等に乗りながら実地で生きる知恵をつけた取材対象者を複数紹介したところだ。見ず知らずの他人を助けることで、いずれは自分が窮地に陥った時に助けてもらえるような人脈を培うことこそが、本当のセーフティーネットではないかと問うているのだ。

最後に、第四章の「親の介護、その時どうする?」の章は必要だったであろうか。この章だけ筆者が共感できていないため、取材対象者の話に異論をほぼ挟むことなく聞き書きしたであろう様子が伺える。
個人的に親の介護を経験し、介護本を読み漁った経験のある者としては、書いていて体重の乗らない原稿は載せるべきでなかったのではないか。
また、他の章の紹介ケースが2人以上であるのに対して、この章だけ1人のケースしか載せておらず、取って付けた印象が拭えない。

#アラフォー #生きづらさ #非正規雇用 #シングル #シングル女性の介護 #雨宮処凛  

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