見出し画像

互い違いのYシャツ。

ボタンをかけ間違えることを「互い違い」と言う。小さい頃に親からよく注意されたものだ。ボタンの方から見ると本来通らない隙間を通ることになるし、隙間の方から見ても本来通ることのないボタンがくぐっていく。まさにお互いに違う状態。

おおらかな国民性のせいか、この国ではボタンが互い違いになったYシャツに袖を通いている人をよく見かける。自分が小さい頃に注意されていたからか、身だしなみを気にする人間だったはずが、海をまたいだ途端に不思議と気にならなくなった。むしろ熱帯地域のために上半身が裸の人が多いことから「あ!今日は洋服を着ている!」と驚くくらいだ。

Yシャツにサイズがあるならおそらく全員Lサイズ。ユルッとしたシルエットに嬉しそうに腕を通して、乱雑に路上に机を並べて朝食を取り始めるのをボンヤリ眺めた。

「何を勉強するの?」とか「帰ってきたときのビジョンはあるの?」とか、出発前に、みんなが口を揃えて質問してきたことを思い出す。興味と憧れと嘲笑に満ちた表情で。

いつも回答に悩んだ。

英語をマスターするとか。伝説の秘宝を探すとか。用がない奴は海をまたいではいけないんだ…とクヨクヨしていた頃の自分。

もしかしたら、企業で戦うビジネスマン達とは「互い違い」だったのかもしれない。風通しがよさそうで、不格好で、理由なんかなく袖を通されるYシャツが愛おしくてたまらなくなった。


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

35

さいごんすりむ(@SSTfromCTC)

大きな理由なく異国で暮らしだした。お金もコネも語学力もないからか、トラブル続きもいいところだ。野生の牛から逃げたり、ジュース1本買えずに苦労したり、突然シャワーが止まったり。同じように儚くて、質素で、安上りで、それでも前向きにコムタムを頬張る仲間たちに多くの幸がありますように。

フトシタ想イトエトセトラ

ふと窓の外を眺めるながら、浮かんでは消える想いを何となく形にしていきます。お付き合いください。
1つ のマガジンに含まれています

コメント2件

貴方の空が、毎日青空でありますように。
素敵なフレーズありがとうございます。西崎さんの心がいつも晴れ渡っていますように。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。