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台湾的音楽 政大金旋獎GoldenMelody 大学主催の音楽アワード

台湾のアーティストを紹介するシリーズだけど、今回は番外編。
さまざまな台湾アーティストを調べていると、何組かのアーティストのプロフィールに、「政大金旋獎 GoldenMelody」という言葉が出てきます。何かの賞であることは分かるのですが、台湾で有名な音楽アワードと言えば、金曲奨(Golden Melody Award)と金音奨(Golden Indie Music Awards)の2つです。では、これは一体どういうものなのか?が気になりました。

結論から言うと、「政大金旋獎 GoldenMelody」は台湾の大学、国立政治大学が行っている音楽アワードです。しかも、2021年で38回目を迎えるという歴史あるもので、新人アーティストの登竜門的な役割も担っています。国立政治大学の学生以外にも、参加資格があります。

日本でもファンが多い 盧廣仲 クラウド・ルーも、政大金旋獎GoldenMelodyの受賞者です。他にも、蘇打綠 Sodagreen、Crispy脆樂團、それから noteで記事にした、麋先生 Mixerなど。また、茄子蛋 EggPlantEggも過去には、ファイナリストと名を連ねていました。

Crispy脆樂團 「黑暗的盡頭」
やはりMVは、映画仕立てというか、社会的なメッセージ性が強いです。

私自身、最初にこの賞の存在を知って、HPを読んでみても、賞の意味がよく分りませんでした。なぜ音大でもない学校が、音楽アワードを開催しているのか?あまりにも理解できなかったので、台湾人の友人に連絡をして賞のことを教えてもらいました。
すると、台湾インディーズが成立した歴史とも関連がありそうなことが、少しですが分かりました。

台湾では1970年から、大学キャンパスで学生が歌を歌う、「校園民歌(ジャオエンミングー)」というムーブメントがありました。ちなみに校園は、キャンパス。民歌は、フォークソングの意味です。
以前にnoteでも少し紹介したように、これは80年代のインディーレーベル設立にも繋がってくるムーブメントであり、大学のキャンパスでライブが企画されるのも、おそらく校園民歌の影響はあるでしょう。また、戒厳令解除前の台湾では、多くの人が郷土意識を持つようになっているので、大学生は歌を歌ったのだと思います。

こういったムーブメントの影響で、多くの大学で「校園民歌(ジャオエンミングー)」のコンクールが開催されていたようです。国立政治大学の「政大金旋獎 GoldenMelody」は、学内だけではなく台湾の学生なら参加できるものとして1983年にスタート。
38年間で、たくさんのアーティストを輩出し、音楽関係者も注目する賞になったということです。

盧廣仲 Crowd Lu 「Life Box」
台湾だけではく、アジア圏のスターでもあるクラウド・ルー。政大金旋獎 GoldenMelody出身の彼は、日本語のサイトもあります。

政大金旋獎 GoldenMelodyは、ソロアーティスト部門、デュオ部門、クリエイティブ部門(バンドとかはここに入るのか?)に分かれていて、各部門で大賞の他にも作詞や編曲などの賞も用意されているようです。
これだけ細かく賞があることで、この賞の本気度が伝わってきます。パフォーマンスだけではなく、ソングライティングでの評価を受けることもできるわけですし。

蘇打綠 sodagreen 「小宇宙」
台湾人の友人が、"あ!彼らも受賞者なんだ!"と言うくらい、台湾ではかなり有名で人気のバンド、蘇打綠 sodagreen。MVは10年前のものですが、再生回数が600万回を越えています。

2021年の第38回政大金旋獎は、5月2日に予選が終了しファイナリストが決まったようです。ちなみに、予選も2日がかりとのこと。審査員には、9m88を始め、人気実力を兼ね備えたアーティストが名を連ねています。
決勝は、新しく出来た、Zepp New Taipei で、6月6日に行うようです。公式サイトでは、審査員の講評も出ています。

政大金旋獎主題曲
テーマ曲があるようです。また毎年、賞のテーマが設けられているのも面白い。

政大金旋獎、ちょっと調べただけでも、受賞者の活躍ぶりや規模感の大きさに驚いています。
政大金旋獎を入り口にして、金音奨(Golden Indie Music Awards)もしくは、金曲奨(Golden Melody Award)を受賞していく、というような音楽キャリアのロードマップのようなものがあるのではないか?と感じます。

また台湾のアーティストは、大学を卒業している人が多いなと思っていたのですが、校園民歌のムーブメントや政大金旋獎なども関係しているようにも感じました。

日本でも、70年代には大学生がフォークソングを歌ったり、有名ミュージシャンを輩出するような大学の音楽サークルがあったりと、大学生と音楽は関係が深いところがありますが、大学主催でコンクールがあったということは、あまりないかなと。
それこそ、かつてヤマハが開催していたポプコンと呼ばれていた、ポピュラーソングコンテストがありましたが。ポプコンには、大学生でないといけないとか、そういった制限はありませんでしたし。

音楽賞ひとつ取ってみても、国民性や歴史などにも関係しているものがあり、興味深いです。

とはいえ、政大金旋獎は、国民的に知名度がある賞というわけではないようです。台湾人の友人に質問をした時には、随分とマニアックなものを知っているのね、という感じで笑っていました。音楽ファンが注目しているそんな賞のように感じます。

まだまだ知らないことがたくさんあります。
少しずつ知っていきたいなと思っています。

政大金旋獎は、公式HPもあります。

台湾と歴史と音楽のことを書いてみた記事も書いています。

最近の台湾シティポップに関する考察は、こちらです。


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