渡辺愛×山根明季子×桑原ゆうで語る~その③

※本記事は、2018年8月28日都内で行われた「海外留学フェア (PPP Project)」の一貫として開催された「女性中堅作曲家サミット・グループA」の書き起こしです。パネリストとの合議による加筆修正が含まれます(編集・わたなべゆきこ&森下周子)

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渡辺愛×山根明季子×桑原ゆうで語る~その②

ー(わたなべゆきこ、以下わたなべ)ここ数年、ヨーロッパではジェンダー議論が過熱していて、コンサートやフェスティバルで、女性作曲家と男性作曲家数をイコールにしようという動きがあるんですよ。

ー(森下周子、以下森下)それはもう普通のことだよね、やらないと非難されるレベルの。

ー(わたなべ)たとえばドイツで隔年夏に行われているダルムシュタット夏季現代音楽講習会では、2016年にジェンダーに関する大掛かりな調査プロジェクト(アメリカ人女性作曲家Ashley Fureによる「GRID」)があったんです。特にそこから潮目がぐっと変わった印象があります。

出典:Reflections on Risk: by Ashley Fure

ー(わたなべ)日本は今その辺りどうなんですか?

(一同)そういうことはないですね〜。

ー(森下)桑原さんはどうですか?日本と海外を行き来されていますが、「日本人女性作曲家」として活動する上で、何か思うことありますか?

(桑原ゆう、以下桑原)わたしは長期の留学経験はなくて、定期的に海外のアカデミーに行って、プレゼンをしたり作品を発表をしたりしています。作風もあるけれど、自分の場合はをむしろ「日本人であること」を記号にして使ってしまっています。

プレゼンをするときには大体、私はずっと日本に住んでいて、日本語で考えることが自分の思考にとってとても大事だとアピールして、お坊さんに書いた声明のための作品と、いわゆる西洋的な編成のインストゥルメンタルのための作品をそれぞれ提示するようにしています。そこを土台にして聴いてください、と。そうやって、日本人であることを利用していたりしますね。

ー(わたなべ)「3つのキーワード」はどうですか?

(桑原)さっきから困ってて(笑)強いていうなら、「言葉」と「緊張」と「生きる」ですかね。わたしにとって「作曲する」は「聴く」とイコールなんです。それをどうアウトプットしようか、って考えるわけです。最終的には自分の「思考」を辿ることになって、どういう性質なのか、何者なのか・・・。そういうことを知る作業そのものが作曲なんじゃないかって思います。自分で自分が一番わからないから、それを知りたくて作曲してるというか。自分を知ることは世界を知ることで、そして人間について知ること、という風につながっている気がします。

ー(森下)表現するには、その方法を選ばないといけないじゃないですか。

ー(わたなべ)渡辺愛さんなら電子音響音楽、山根さんならキラキラドローンがキーワードだったり、ってことですよね。

ー(森下)桑原さんの場合はある意味オーセンティックなコンサート型というか、楽譜を書いて 、プレイヤーに渡して、楽器や人の声で演奏してもらう、という手段をとられていますよね。それでも表現のツール選びが必要になると思うんです、スペクトル音楽なのか、ラッヘンマンのようなノイズを含めた音響なのか。そういった具体的な選択というのはどのようにしているんですか?

(桑原)たくさん選択肢があって、その中から選びとるっていう意識はあまりないかもしれないです。私は欲しいものをひたすら書いてきていて・・・。ただお能を勉強した時に、直観的にこういうことがやりたい!って凄くはっきり気付いた瞬間があって、それから日本の音楽に関わるようになりました。そうこうしていくうちに、付随する色々なことがわかってきたっていう感じかな?

ー(森下)お能に出会ったとき「これだ!」って思ったというのは?

(桑原)時間の感覚。ぎゅっと空間が膨らんで縮んでいく感じとか。寒天みたいなものが空間を満たしていているように感じるんです。空間内にある寒天みたいな物質をぐっと押したり、跡をつけたりしながら音楽が生まれていく、そして時間自体が形成されていくイメージがあります。

ー(わたなべ)確かに桑原さんの作品を聴いていると、そういった「圧」のようなものを感じますね。

(桑原)私は、音はいつも抵抗を受けていると思っているんです。例えば一つ音があったら必ずそれに反発する力が働く、そしてその反発をどうやって超えていくかで音楽を作れると思っていて、その部分がお能に出会ったことで、すごくはっきりしたんじゃないかと思います。それが自分の音楽のおそらく核の部分を担っているんじゃないかな。

ー(森下)お能や声明が表現のアウトプットの一つの方法として、自身の内なる声とどこかリンクするところがあったということでしょうか。

(桑原)出会ってみてわかったんですよね、あーこれが欲しかったんだって。

(客席より)桑原さんに質問があるんですが、能の寒天理論はガラパゴス的解釈なのか、それとも桑原さんの解釈なんでしょうか?

(桑原)私の解釈であり表現です。私の感覚として寒天がすごく合うんですよね(笑)私がそういう風に感じたということです。


ー(森下)そうやって感じるものがあったとき、自分の言葉でどうアウトプットするのか、寒天理論みたいなものは、作曲家だけでなく、アーティストとして核になっていくような気がしますね。

(桑原)どう感じるか、自分が何をどう受け止めて言葉にするかだと思います。言葉にすること自体が考えるということだから・・・。

【④につづきます】
渡辺愛×山根明季子×桑原ゆうで語る~その④

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※本記事は、2018年8月28日都内で行われた「海外留学フェア (PPP Project)」の一貫として開催された「女性中堅作曲家サミット」の書き起こしです。6人のパネリスト(渡辺愛、山根明季子、桑原ゆう、小出稚子、牛島安希子、樅山智子)と2人の聞き手(森下周子、わたなべゆ...