渡辺愛×山根明季子×桑原ゆうで語る~その⑦

※本記事は、2018年8月28日都内で行われた「海外留学フェア (PPP Project)」の一貫として開催された「女性中堅作曲家サミット・グループA」の書き起こしです。パネリストとの合議による加筆修正が含まれます。(編集・わたなべゆきこ&森下周子)

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渡辺愛×山根明季子×桑原ゆうで語る~その⑥

(客席)マスキュリン(男性的)な作風という発言が前半で出ましたが、僕はあまり考えたことがなくて、どちらかと言うと違和感のある形で解釈しました。男性社会、マッチョな社会の中でマイノリティに当たるみなさんとしては、そういう意識があるんでしょうか。

ー(森下周子、以下森下)まずマスキュリンとフェミニンという「音楽的印象」と、「作曲家の性別」は別だと思うんです。

ー(わたなべゆきこ、以下わたなべ)男性作曲家でも、女性的な作品をつくる方はいますし。

ー(森下)そうそう。しかも個人によって定義は違うと思います。

(客席)でも作曲の世界ってずっと権威主義的だったということはありませんか?それに反した作曲活動の領域をつくるということは、脈々と続いてきた伝統からパラダイムシフトを起こしたい(!)っていうことなんですか、みなさんの意識的には?

(渡辺愛、以下渡辺)事前に集計した山根さんからの質問と関連しているかもしれませんね。

《山根の質問を読み上げる》
「男性作曲家の系譜が続く時代と比べ、今のジェンダーをめぐる作曲家の状況は何か異なると考えますか?異なると思われる場合どう異なると考えますか?」

「男性作曲家とは言われないのに女性作曲家と言われることについて、そのように括られることについて何か感じられることはありますか?」

(渡辺)・・・という質問でしたが、「今活躍している」というのと「歴史に名が残っている」って、また別問題ですよね。それは完全にイデオロギーの問題で、社会の要請があって残ってきた。いい曲だから、悪い曲だからではない、関係ないです。

ー(森下)言い切った!(笑)

(渡辺)でもそうじゃないですか(笑)

(山根明季子、以下山根)そもそも人によって違いますもんね、感性は。

(渡辺)みんなが知っているような有名作曲家が今でも残ってるっていうのは、曲が卓越していたという以外に理由がたくさんあるわけです。社会的・政治的な理由が。ただその対抗軸で、じゃあ別の権威を女性側からムーブメントとして立ち上げるというのは、いまのところ個人的にはイメージしづらいです。別のイデオロギー戦略を立てるってことにはなりませんか、そのパラダイムシフトは。

ー(森下)男性=権威で、わたしたちは女性だから、それに対抗するっていうこと?

(渡辺)たぶん、これからも権威主義はあると思うし、残っていくと思います。後世の人が、この時代の作曲家のことを調べたら、「〇〇大学の学長をやってた人」とかが筆頭に出てくるっていうことですよ。その結果男性の名前が多いということは・・・あるでしょうね。

ー(森下)あのプロフィールの感じか〜。

(渡辺)まぁ、音楽の本質とは関係ないことだから。

※芥川作曲賞審査員男女比

(山根)でも質問者さんの意図としては、対抗軸を作るのかどうかということより、もっとその本質的な意味でパラダイムシフトを起こそうとしているのか、そうじゃないのかってことですよね?

(客席)そうなのかもしれません。例えばコンペ以外のものはあるのか考えてしまって。権威主義が男性的で、そうじゃないものが女性的っていう軸の作り方は、あんまりクレバーな方法じゃないと思います。

ー(森下)対抗軸の話ではないのですね。

(客席)それこそ10年前からコンペの中で、山根さんとか小出さんとか女性作曲家の名前が出てきて、そういった多少アファーマティブな動きがあったりするのはとても良いと思うんですよ、個人的には。ただそれはコンペティションだったり、そういった形じゃないととなかなか難しくて。逆に全部掬い上げていこうってなると、フィールド自体が厳しい状況になるんじゃないかなっていう風に自分は考えました。

ー(森下)コンペの良さってすごくいっぱいあると思うし、いま前に座っている人たちは、大なり小なりそのアドバンテージを受けてきたんじゃないですかね。だから無くなれば良いのにとか、これまでに賞を取ってきた作品が面白くないという意識とは違うと思います。ただ、色んな価値観や軸があるといいなっていう。オルタナティブではなくダイバーシティだと思います、この話題は。もっと複雑で内包されているものじゃないですか、本来は人も社会も音楽も。パラダイムシフトにしても、瞬間的に切り替わるものではなく、実際はゆっくりと徐々に移行するんだと思うんですよ。

特にこの時代、やり方は様々ですよね。例えば桑原さんも日本に住みつつ海外にどんどん出かけていってる。


(桑原ゆう)作曲家にとっては、音にするとか演奏してもらえるっていう機会を作ることがまず大事で。コンペも作品を演奏してもらえる機会として認識して参加してます。だから、演奏機会を作れるんだったら、コンペじゃなくてもいいと思いますよ。

ー(わたなべ)わたしは、インターネットが普及して、メインストリームだけではなく雑多なものがパラレルで存在しているイメージを持っていて。ただ日本の若い作曲家は、音楽良いな、どんな人なんだろう?って検索しても、なかなかヒットしないんですよね、それがとっても残念だし勿体無い。日本の若い世代はもっと発信してもいいんじゃないかなあ?

(山根)やるといいと思いますよ。わたしもネットを通して連絡をもらったり、逆に自分で検索して、ここに仲間がいた!っていうこともあります。世界中のどこかに理解者や仲間がいるかもしれないから(HPなどは)開いておくといいと思いますよ。

ー(森下)人それぞれですよね、選べば良いことで。わたしは最低限しかやらないです、苦手だから。やることが苦痛じゃない人はどんどんやった方が良いと思う。いずれにせよ、語学は絶対やるべき。

(山根)語学は世界を別の角度で見せてくれますよね。最近日本語でわざわざ連絡くださる方がいて、楽譜も日本語のまま送ったら、ちゃんと翻訳してくれたことがあって。そこにはきゅんとしたんです、だけどそれって自分が今まであまりにも英語ありき、英語が当たり前だと思い込んでいたんだなあってことに気付いたり。

ー(わたなべ)なるほど、意識もツールも時代と共に変化しているんですね。

ー(森下)スカイプも自動翻訳ついたんでしょう?

ー(わたなべ)国境や語学の壁はもうなくなりつつあるのかもしれないですね。

【グループA終了、グループB(小出稚子さん、牛島安希子さん、樅山智子さん)につづきます。】

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オンナ作曲家の部屋

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